左射ちアーチャー

 近年、左射ちのアーチャ―が多くなりました。必ずクラブに一人とは言いませんが、クラブ内に二人以上の左射ちアーチャ―がいてもめずらしくない状況が見受けられます。

 その最大の理由は、左射ちアーチャ―がオリンピックゴールドメダリストに、それも二人続いてなったのですから影響力は多大でしょう。
1988年ソウルオリンピック 1992年バルセロナオリンピック
ジェイ・バーズ セバスチャン・フルート
 そこでこれからアーチェリーを始める新人を含め、右射ちにするか左射ちにするかの判断なのですが・・・・。
 最初から左射ちでアーチェリーの指導を受けたアーチャーに話を聞くと、「マスターアイ」が左であったためという答えが多く返ってきました。確かに左目が利き目であれば右射ちをすることは不自然ではあります。しかしそれを絶対的基準とすることはどうなのでしょうか。現に後天的にマスターアイを変更することは可能ですし、左目がマスターアイであっても右射ちをしているアーチャーも多くいます。
 では他の基準は、と言うと。左利き(例えば左手で字を書くとか箸を持つなど)だから左射ちをする、ということがあってもいいのではないでしょうか。ただしこれも考え方次第なのですが、技巧に優れた手が、力も備えているとは限りません。サッカーボールは右足で扱うが、幅跳びの踏み切り足は左足ということはよくあることです。そう思えば、引き手に要求されるのは技巧性なのか力なのか・・・・。
 と考えてくると、マスターアイは重要ではあってもすべての身体的特徴は決定的な要因にはならないような気がします。最初の指導次第で右射ちでも左射ちでも同じようにマスターできるはずです。そう考えると、身体的特徴以外に問題があることが分かります。
 道具です。左用は通常の右用に比べて値段が高くなります。特に弓のハンドルは高価なうえに一層割高となります。しかし自分で買うものですから、これは納得がいくかもしれません。それ以上に問題となるのは、初心者段階での道具不足です。素引きから始まる基本をマスターする段階で、左用の弓を十分に取り揃えているクラブはほとんどないでしょう。これは基礎、そしてレベルアップの段階で大きなマイナス要因となります。
 そしてそれ以上のマイナス要因は「イメージ」なのです。
 ちょっと腕組みをしてみてください。そしてそれとは逆に腕を組み替えるとどうでしょう。自分の身体であるにもかかわらず、すごい違和感があるはずです。では右射ちのアーチャーなら、上の左射ちアーチャーの写真をもう一度見てください。今でこそ見慣れたチャンピオンではあっても、やはり違和感があるはずです。この種の違和感はイメージを組み立てるにあたって、大きなマイナス要因となります。特に白紙の状態にある初心者にとっては、自分の周りに同じ射ち方をするコピーの対象がないことは手本がないのと同じことです。
 もしこれから初心者指導をするのであれば、まずは右射ちから入ってはどうでしょうか。そのレベルアップの途中で、マスターアイの変更ができないなどの決定的な問題が発生したのなら、その段階で左射ちにしても決して遅くはないでしょう。
 最近は何年もアーチェリーをやっていて、限界を感じて左射ちに転向するアーチャーも多いのですから・・・・・。

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