ポイントの作り方

 プロセレクトアロー用2ピースポイントを作ってみました。これまでアメリカで生産したものを輸入していたのですが、価格はともかくとして精度にバラツキがあり、また納期もあてにならない状況が続いたので国産化に踏み切りました。
 製法は当然NCです。NC製法については「ハンドルの作り方」等に詳しいので、ここでは省略します。そこで国産化ですが、問題はどこで作るかです。これまでにもちょっとした部品なら近辺の金属加工屋さんにお願いしていたのですが、今回はともかく「精度」が最重要課題でした。
 そこで結論から言うと、新潟市の南に位置する燕市の金属加工屋さんにお願いしました。JRの駅なら燕三条、インターチェンジなら三条燕となるのですが、今は合併話が進んでいるようですが最初は燕三条市という町があるのかと思っていました。燕市と三条市は隣り合った別の町です。そこでこの燕三条という地域、一般には岐阜県の関市同様に刃物の町、あるいは洋食器の町として有名なのですが、たしかにどちらも金物の町ではあるのですが実は三条はもともと刃物の町で、燕はステンレスの町なのです。三条の包丁の生産高は関市に次いで日本第二位。燕のスプーンやフォーク、そして鍋などのステンレス製品の生産高は日本一です。家庭で使われるステンレス製品のほとんどが燕市で作られています。
 と言ってもこの世の中、いつまでも包丁やナイフだけを作っていればいいという状況ではなく、当然地場産業の育成と発展は急務です。そこで燕三条ではこれまでの長年の伝統やノウハウ、そして最新の設備を生かして今では全国有数の金属加工産地に生まれ変わっているのです。ステンレス製の高精度ポイントを生産するには、もうここしかありません。
 そんな背景を踏まえてNCですが、当然これらを生産するNCマシン本体も日本製です。日本製だからこその高性能、高品質の製造機なわけですが、ハンドルの作り方を見てもわかると思うのですが、この機械があれば別に日本や燕でなくても、簡単に高精度、高品質の加工品ができるではないかとの疑問をお持ちの方もあるかもしれません。確かにそうなのです。入力されるデータが間違ってさえいなければ、まっすぐなハンドルでもポイントでも同じように作れるはずなのです。ところがハンドルなどはわかり易いと思いますが、製造途中でハンドルになる金属の塊を何度かセットし直します。この時もしほんの少しボルトの締め付け方が異なりでもすれば、製品のセンターは完全に狂います。このように機械の精度は完璧でも、それを管理しコントロールするには高度な熟練とそれに精通した職人の技が不可欠なのです。これらが一体となって、はじめて世界に通用する製品が生み出されます。
 そんなわけで、ポイントもデータを入れれば数分単位で精度の高い完成品が出来あがるようにも見えるのですが、それらは途中抜き取られ精度や品質のチェックが繰り返されます。単純にスイッチを入れればコロコロとできるというものではないのです。だからこそ日本製の、それも燕市を選びました。

 ポイントの製造には「NC旋盤」を使うのですが、NC旋盤と言っても多種多様で作る物や形状、素材によって使い分けられます。
 2ピースポイントの場合、先端部分(ポイント)と軸部分(ピン)をそれぞれ別に作るのですが、外観や精度だけでなくこれらを組み合わせた時の精度が非常に重要になります。ネジ式になっているポイントとピンが真っ直ぐに取り付けられることが必要です。そこでNC旋盤を使う工程としては、大きくふたつに分けられます。真鍮製のピンやステンレス製のポイントの外形を削り出す加工と、ポイントの中に穴を開けネジ山を切る工程です。
 そこで外側を削るには、櫛刃型NC旋盤と呼ばれる機械が使われます。これはすでに棒状に加工した長い金属を、ポイントの形状に削ったり、ピンの溝を掘ったりして同じ長さに切っていきます。これでポイントやピンの形が出来あがります。
 次にこの無垢のポイントをタレット型NC旋盤にセットします。これらも自動的に機械がポイントを挟み込み、穴あけやネジ切りを行ってくれます。
 ← これは右側の列に無垢のポイントが並べられ、それが加工されて左側に完成品として出来あがってくるところです。
 これで一応完成ですが、実際にはこのあとブレストという磨きを掛ける工程や油や削りカスを取り除く洗浄が行われ、全品ポイントとピンをセットしながら職人の目によって検査が行われて完成です。
 ということで、これからは国内分を除いた、この日本製高精度ポイントが逆輸出されアメリカから世界に向けてが出荷されます。本当に日本の底力は、世界一です!

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