無礼者!

 いつからこうも容易く他人の矢に触ったり、抜いたりするようになったのですか? そしてそうさせるようになったのですか?
 もし試合中に置いてあるあなたの弓を誰かが勝手に持ち上げたらどうしますか。そして毎回サイトやプランジャーを触られても平気ですか。あるいはあなたはそんなことを他人に対してできますか。そんなことはマナーであり、ルールであり、暗黙の了解であり、オキテであり、常識です。決してあってはならない、してはならないことなのです。
 にもかかわらず、どうして的前に行って毎回他人の矢を触れるのですか? 触らすのですか? 「抜いていいですか?」と聞くのではなく、抜いてもらいたいなら持ち主自らが「抜いていただけますか?」とお願いすることからすべてがはじまるのです。それもそれ相応の理由があってのことです。
 たしかFITAのジャッジマニュアルには、弓具検査の時をはじめとしていかなる時でも選手の弓を持つ時は手袋をするなり、素手で持つ場合は特に決してグリップ部分は持たず、ハンドル上部を丁寧にしっかりと保持するよう定めた記述があったように思います。そういえば、世界大会の弓具検査で審判にグリップを持たれた記憶はあまりありません。それはその選手が神経質かそうでないかは関係なく、選手に対する心遣いであり、敬意であり、尊敬であり、常識なのです。矢に対しても同じです。無造作につかんだり、ハネを触るようなことは決してありません。もし世界選手権に行って、あなたに矢を抜かすような選手がいたなら、それはよほど大したことのない選手でしょうし、その前に他人の矢を抜く選手自体いないはずです。もし仮にその選手があなたの親しい友人であり、快くそれを了解するであろうとわかっていたとしても、その行為の持つ意味を少なくともあなたは知ったうえでその友人にお願いするべきです。そしてもし断られたとしても、それが普通と理解しなければなりません。
 最近のドーピングで言われる他人が勧めた飲み物を飲まない常識より遥か昔から、アーチェリーでは他人の矢には触らないものなのです。なぜならあなたが抜こうとする、触ろうとする矢は70mを飛び、唯一得点となるアーチャーにとってはある意味弓以上に大切な道具だからです。それをあなたは曲げずに抜けるのですが。仮にそれが出来るとしても、次にその矢が10点を外れた時に責任を取れるのですか。
 他人の矢を、「抜いていいですか?」などと軽はずみに言うべきではありません。それは親切でも、謙虚でも、物知りでも何でもないのです。そんなに矢を抜く力もない年寄りに見えるのですか。もしそう見えたとしても、あなたの行為はアーチャーとしてのマナーを逸脱した、単に矢取りと試合を早く終わらせたいという我侭でしかないのです。他人の矢を抜くのは、ウエイティングラインで参考に誰かの弓を引かしてもらう行動とは、根本的、本質的に異なります。
 なにか間違っていませんか?!

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