グッドアイデアとバッドアイデア

 先日、インドアの試合でグッドアイデアのハンドルを見つけました。
 冬になってインドアの季節になると、物置から鳥羽根のアルミアローを毎年出してくるのですが、、、これはみんながみんな、必ずではありませんが、長距離のサイトが低めでエクステンションバーの先にあるサイトバーを下目にセット(取り付け)していると、そのままでは18mのサイト位置が確保できないことがあります。特にカーボンアローで18mを射つとサイト位置が高すぎて、バーを上に動かさないと使えないのです。
 使っているサイトバーの長さ(10数センチ)の中で18mから90mまでのサイトが取れればいいのですが、このようにアーチャーによっては動かさなければならない状況が生まれることがあります。そんな時は、六角レンチでサイトバーをエクステンションから一旦外して、移動させればいいだけのこと、と言えばそれだけのことなのですが・・・。
 それを思うと、このアイデアはなかなかだと思いませんか?! サイトバーを動かすのでなく、サイト自体(全体)を動かせるのです。それもネジ穴の位置に制約されることなく、任意にサイトバーを自分の希望の位置にセットできます。
 ちょっとマニアックなハンドルですが、イタリアBernardini Archery社の「Aladin」というモデルです。NC加工と軽量化を活かし、エクステンションブロック自体でハンドルを挟み込んでいます。そこには上下スライドできる溝が彫ってあります。これはサイトだけではなく、クリッカーの取り付け位置にも同じアイデアが彫ってあるのです。グッドアイデアでしょ。
 
 そこで、余談です。今でこそ一般的なこの「エクステンション(バー)」が登場したのは、1970年代初めです。当時はまだ木製のワンピースボウが主流であり、サイトはサイトバーだけを木のハンドル部分のフェイス側かターゲット側に直接木ネジで固定していました。そこに登場したエクステンションバーですから、今のように最初からハンドルにネジが切ってあるのではなく、アーチャーは自分で木のハンドルに穴を開けてエクステンションベースを木ネジで取り付けるようになりました。それこそ今回のアイデアのように後で動かすことはできませんが、アーチャーの希望する「任意」の位置に取り付けることができました。
 そこで質問です。サイト(エクステンションベース)を取り付ける上下位置は、当然90mから30mあるいは18mまでサイトが取れる(使える)位置でいいでしょう。では、前後位置はどこでしょうか?
 答えは、「弓の中心線上」です。昔の弓はすべてと言っていいほど、そこにネジ位置がありました。これはクッションプランジャーの取り付け位置の常識と同じです。

 この原則(常識)は1970年代にテイクダウンの金属ハンドルが出現した当初は守られていたのですが、特に21世紀のデザイン優先のアーチェリーになってからは、適当です。取り付けられれば、どこでもいいという感じですが、、、、
 弓は中心線を軸に動きます。弓の中心線とは、グリップの一番深い位置(ピボットポイント)を通る線です。ここにネジがあればショックを最小限にできます。確かに金属のハンドルにネジが切ってある現在は、サイトは留まりさえすれば先のグッドアイデアを含め、位置にこだわる必要はないでしょう。
 しかし、クッションプランジャーは違います。知ってか知らずか新興メーカーの多い、デザインだけが優先される近年。クッションプランジャーまでもが、適当な位置に取り付けられている上級モデルが結構あります。これはバッドアイデアであると同時に、メーカーの在り方として間違っています。プランジャーチップが弓の中心線上にあることは、今でも一般常識であり理論です。これによって、弓の不良な動きが矢に伝わることを最小限に抑えることがでるのです。

 理論を無視して今も残る余分なクッションプランジャーのもう1個の穴(なぜか使わないのにクッションプランジャーの穴がもう1個あるでしょう。)は、昔新興メーカーが老舗ブランドの名前を買い取ってノウハウもなく犯した過ちの名残です。しかし、それすら今も意味なく引き継がれているのです、さも意味があるかのようにすべてのハンドルにおいて、、、
 弓はデザインで当てるのではなく、性能で当てるのです。デザインを求めるのはいいでしょうが、それは性能の次です。目先の見てくれや奇抜性をグッドとするかバッドとするかは、アーチャーの見識や常識の問題かもしれませんが・・・。

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