上リム下リム

 同じ表示ポンドのリムであれば、違うメーカーのリムを上下に取り付けて使えると思いますか? あるいは、バランス(ティラーハイト)が狂ったリムの場合、上下逆に取り付けて使っても平気ですか? こんな場合でなくても、例えば初心者用に古いリムを寄せ集めたら、上下が違うものになってしまうようなことがあるはずです。
 こんな時、まず理解しておいてもらいたいのは、リムを作るのはそう簡単ではないということです。同じカーボンや木、あるいは化学素材でできているといってもスキーやテニスラケットは出来上がった形そのままで使われます。リムのようにあれほどの曲げの後に、復元を炎天下から雨の中まで過酷な状況で繰り返すことはありません。弓の持つ耐久性とは最先端の技術の賜物ともいえます。しかし、それだけではなく、品質管理には職人技的要素が含まれているのです。
 例えば、リムは上(うわ)リムより下(した)リムを強く作るわけですが、40ポンドの強さであれば26インチなりを引っ張った状態で上下がバランスをとり、戻したときにはティラーハイトの差が下リムが数ミリ強くならなければならないわけです。これは結構至難の技です。リムは40ミリから45ミリ幅のものを一本ずつばらばらに作るのですが、仮にスキー板のように倍の幅でリムを作り、出来上がったものを半分に切り分ければ同じ強さで同じ形状、バランスのリムが1ペアできあがるかというと、これができないのです。(この製法で作っているリムもあります) 結局はできた単品のリムを、測定器と職人技によって「ペア組み」して製品が出来上がります。
 「ペア組み」の最終見極めは職人技ですが、やり方は平らな机の上で簡単に行えます。ペアになるリムを、机の端に根元のリムの平らな部分を同じように当ててリム全体、特に先端のリカーブ部分のカーブの形状が類似しているかを見て、組み合わせを決めていきます。
 リムには上下に同じ製造番号が記されています。これは上下の強さに加えて、このような点検の結果、同じ長さ、形状であることを示すものです。
 そのため原則的には、同じポンド数のリムであっても異なる製造番号のものをペア組みすることは良くありません。(リム形状が大きく異ならなければ問題はありません。) 同じ理由で製造番号の同じペア組みされたリムであっても、上下を逆に使用したりすることは、バランスが逆転していないなら避けなければなりません。ただし初心者の練習弓であれば、この限りではありません。

 実は最近、ハンドルにポンド調整機構が付くようになってから、全体にリムの品質やその管理基準が低下しているのが気になります。例えば、リムバランス(ティラーハイト)なども厳格に行われたペア組みの結果、下リムが強く作られていなければならないのに、この微妙なバランスを調整機構に依存している場合があるのです。(これが極端な場合には、バランスを合わせた結果、上下ネジの締め込み量が大きく異なるため、上下リムがまったく異なるのと同じことになります。) あるいはペア組み自体に疑問があるようなリムもあります。
 このような場合は、上記のようなリム単体でのチェックだけでなく、ストリングを張った状態でも上下の形状が不自然であったりすることが分かることがあります。リムのネジレだけではなく、ちょっとこんなことにも注意を払ってみましょう。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery