「経験則」という言葉があります。辞書で引くと、「理論の裏付けは乏しいが、経験を通して自然につかんだ法則。」とあります。アーチェリーの世界でも、特にこれを要することがらがいくつかあります。クッションプランジャーの調整などもそうでしょうし、今回のハンドルとリムの調整にも経験則は不可欠です。 |
世の中には悪いハンドルもリムも山ほどあるのですが、良いリムもハンドルもあります。これらが無限の組み合わせによって、無限の状況を作り出すので話はややこしくなります。良いモノと悪いモノが組み合わさって悪くなる時もあれば、悪いモノ同士の組み合わせでも、それが効を奏して見てくれは良くなってしまうという場合があります。また、すべてが良いのに、調整を間違って最悪を作り出すこともよくあることです。 |
では「悪い」ハンドルやリムとはどんなモノなのか。ここでは仕様と価格、そして性能は無視して、「ネジレ」について考えてみます。ネジレには「曲がり」も含めます。例えば30cmのプラスチック定規を考えてみてください。両端を持って弓形にたわませるのが曲がりです。では次に両端を持ってひねってみてください。これがネジレです。ということはネジレながら曲がるという状態も世の中には存在するわけです。定規も弓も本来は真っ直ぐであるべきモノです。ところが最初から全部がネジレているモノもあれば、たまたま個体差やなにかの間違いでネジレたモノもあります。あるいは最初は真っ直ぐだったけれど、使っていくうちに段々ネジレてくるモノもあります。この場合でも、すべてがネジレるモノもあれば、偶然不幸にしてネジレてしまったモノもあります。だから現実は複雑怪奇なのです。 |
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アーチャーが弓のネジレを確認する、あるいは実感するもっとも一般的な場面を思い浮かべてください。それはストリングを張った弓を立てかけて目視でストリングをハンドルの左右中心位置(ほとんどの場合、そこにはハンドルに開けられたネジやピンがあるのですが。)に上下とも合わせます。「センターを通す」とか「センターどおりを見る」などと言う、あれです。この時ストリングが上下の目印の中心を完璧に通過したなら、ハンドルもリムも真っ直ぐだと考えるでしょう。しかし、もし通過しなかったとしても、多くの錯覚するアーチャーはハンドルではなく、リムがネジレていると考えるのが普通です。確かにそれが正解の時もあります。しかし近年、ハンドルもリム同様にネジレているのではないかと疑うべき状況にあります。それくらいにハンドルのネジレが増えています。あるいはハンドルとリムの接合部に不具合があり、本来の精度がでない場合もあります。これは価格や上位モデルであるということにかかわらず、逆にそのような高価格、高性能を謳ったモデルに限って多かったりするのも現状です。そこで「センターが通らなかった」場合、ハンドルかリム、あるいはその両方がネジレていることを疑わなければなりません。(実際センターどおりを見る場合は、地面にチップを押し当てたり、斜めに立て掛けるのではなく、ハンドルを支えるボウスタンドなどを使用する方が良いでしょう。)
それでは不幸にしてあなたの弓が、センターを通らなかったとしたなら。昔なら諦めるか、ショップやメーカーに文句を言ったのでしょうが、今はアーチャーの責任として弓の「センター出し調整機能」を使って、可能な限り良い状態を自らが作り出すしかありません。しかしこれが理論どおりにいかないから、経験則が必要なのです。
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