弾弓(だんきゅう)  [中倉] 1張 長171.0

 矢のかわりに丸玉を弾いて飛ばす弓で、弦の中央部を幅広にして丸座を設け、ここに玉を受ける。弓身は木製で、近年の調査では材はアズキナシ、アセビ、ウラジロノキ、ツゲ、ニシキギ、マサキ、マユミなどに該当する特徴をもつことが判明した。ただし樹種の特定には至っていない。弓身は弦に対する面を赤漆の技法で塗り、反対側を黒漆塗とする。末弭(うらはず:上端部)・本弭(もとはず:下端部)および弣(ゆずか)の上下の部分が素木で、素木部と漆塗部の境界に葉文が表現されている。葉文は黒漆の部分を削り取って施されたらしく、輪郭線に刀痕があり、傾斜がついている。弣には黄革、紫革、紫の組紐が巻かれ、弦は蘇芳染の皮(一方は後補)で弓身に取り付けられる。末弭の16センチメートルほどが後補、また弦(サクラ類)も後補だが、末弭のところに長さ23.5センチメートルほど旧物が残存する。「明治卅七年十月補之」の金泥書があり、補修の年次が判明する。
 古代中世の中国では「弾」の一字で「はじき弓」を指す(弦の用材として竹を指定する文献もある)のが通例だが、成語としての「弾弓」の語はわが国平安時代の『和名抄』(わみょうしょう)にもみえ、本品も当初から現在の名称で呼ばれた可能性は十分ある。なお宝庫には本品のほかにもう一張、竹製の弦をもち、弓身にみごとな散楽図(さんがくのず)を墨絵で描いた弾弓が伝存する。弾弓は元来は兵器だが、宝庫の二張はともに実戦に耐えるものではなく、遊戯具として製作されたと考えられる。

平成14年
第54回 正倉院展 目録 (奈良国立博物館)

 

 

 今年は東大寺大仏の開眼より数えて1250年目に当たります。大仏は聖武天皇によって発願、造像され、天皇の崩御後には光明皇太后によって天皇の遺愛品が大仏に奉納されました。これが正倉院宝物のはじまりとなったように、大仏と正倉院宝物は深いつながりを持っています。 (中略)
 今回の出陳宝物は北倉13件、中倉21件、南倉34件、聖語蔵3件の合わせて71件で、そのうち初出陳は14件あります。正倉院展は54回目を迎えても、なお初出陳品が多数含まれており、正倉院宝物の奥深さが感じられます。

奈良国立博物館長 鷲塚泰光 氏 あいさつより抜粋

 

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery