リムはどれくらい使えるの

 リムはどれくらいもつのでしょうか。
 ということで、リムの寿命と品質については以前にも書きましたが、実際にリムが折れたり剥がれたりしないで一応弓の形を留めている場合、リムはどのくらい使えるのでしょうか。あるいは使ってもいいものなのでしょうか。
 この判断は実はそんなに難しくはありません。答えは、ストリングが張れて、引っ張れて、射てるのであればいつまで使っても問題はありません。そういうとまたどこかから文句が出るのかもしれませんが、実際問題として使えるならなんら問題はないのです。ただデザインが古いとか、昔のモデルであるとかの外観からの引け目があるなら別です。しかし弓の場合、自動車やパソコンのように新しければ必ず性能や使い勝手が良いとは決して限りません。はっきりいえば、新しくて高価なのに、性能や品質が従来より劣るものが結構存在するのです。特に近年はです。
 例えば、古いリムを使っていて「ポンドが落ちてきた」とか「奥が硬くなった」とか「飛ばない」というアーチャーがいます。しかし本当なのでしょうか。古いからそう感じるという主観的感覚は別にして、客観的事実としてポンド(引っ張り強さ)が同じで飛ばなくなったり、柔らかくなったり硬くなったりするものでしょうか。あるいはリム内部での剥離や折損が起こっていない状況で極端にポンドが落ちるものでしょうか。個人的にはいろいろな弓をテストも含め何10本も使ってきた経験から、よほど品質や仕様、そして性能に問題のある弓でない限り、使える状態でポンドが落ちたり、硬くなったり、柔らかくなったことはありません。ましてや「当たらない」リムに突然変身することもありません。折れる前兆としてのこれらの変化は別にしてです。
 ただ最近になって昔はあまり聞かなかった表現として、「腰がない」とか「へたる」といった感覚の言葉を耳にするようにはなりました。これはリムの芯材に発砲材などの化学素材が使われるようになってからのように感じます。このことについては今さら平等院とコンビニ弁当を比べる気もないので省略します。ただし、日々たくさんの方からいただくメイルの中にこれに関連して、特に北海道や東北といった寒冷地で何シーズンか過ごしたこの種のリムにこのような症状があるといった報告をよく聞くこと。あるいはこの種のリムを最初に商品化した1996年アトランタオリンピックでは、その生産国であるアメリカチームが他国に最新素材を供給しながら自らは全員が木芯のリムで出場していたとも聞きます。たぶん現在もそうでしょうが、極端な高温や低温、あるいは温度変化にはまだまだ未完成な素材なのでしょう。そしてここでも繰り返しになりますが、世界のトップ選手があなたと同じデザインの弓具を使っていたとしても、中身までがあなたと同じであるなどとは間違っても考えないことです。
 とはいっても、初心者にオリンピック選手と同じデザインの道具を平気で薦める人がたくさんいるこの世界です。最新、最高(性能や品質でなく、価格が)の、チャンピオンと同じ弓具を使いたいのも人情です。
 そこで、ではどれくらいで新しいリムに買い替えるのが賢い消費者でしょうか。
 昔、今のようにテイクダウンボウがない時代はリム部分だけを交換するというわけにはいきませんでした。弓を交換するならハンドルもリムも弓まるごとを替えたわけです。個人的にはそんな時代、1969年にアーチェリーを始め親のスネをかじりながら最初のテイクダウンボウ(HOYTのT/D2でした)を手に入れる1973年までの4年間に、覚えている限りでは1本のBlack Widow(TF)と11本のHOYT(4PMから5PMまで)を使い替えました。これは当時も今もいくら好きとはいえ少ない数ではありません。その理由は今と違って弓の完成度が求められたのです。グリップの形状のあう、あわないとか、ポンドやティラーが気に入るかなどです。数ヶ月で売って、買い替えたのもあります。そしてそれに加えて、1日300射をコンスタントに消化することでの傷み(主観的感覚での)もそうなのですが、実は他にも理由がありました。これは当時も今も同じでしょうが、外観がキレイな方が高くで売れるのです。使えなくなるまで使い切るより、こまめに交換する方が損がなかったのです。下取り価格が良いというわけです。しかし自動車なら走行距離のメーターがあるわけですが、リムはどうして実射本数がわかるのか。
 いくらキレイに扱ったリムでも、唯一使用頻度(実射本数)がわかるメーターがあるのです。それはリム表面の塗膜(塗装)に現れるヒビです。
 昔、一時期リムの塗装にエポキシ系塗料が使われていたこともあるのですが、現在ではほとんどすべてがウレタン系の塗料です。そして品質管理や仕様、塗膜の厚さによってのバラツキはあるのですが、大体2万〜3万射でリムの上下を問わずバックサイド(的側)にヒビが出てきます。カーボン繊維やグラスファイバーにではありません。一番上の塗装の表面にです。最初はヒビとは言っても線ではなくほんの小さなキラキラ光る点です。そしてこれが徐々に線になり増えてきます。表面にクロスの繊維を配しているリムでは、斜めにその繊維が浮き出てくる場合もあります。しかし先に書いたように、これが出たからといって決して使えなくなったり、折れる前兆ではありません。使用にはまったく問題はありません。ただ古そうに見えて、見てくれが悪くなるというだけのことです。そしてたとえ数千射でこれが現れたからといってクレーム扱いするより、それはその程度のリムだったと納得する方がよいでしょう。なぜなら、リムは自動車や他のスポーツ用品とは異なり、この部分に想像以上の伸縮と疲労を強いているのです。必ずこの部分の塗装が傷んできます。それに普通の社会人が年間2万射しようとすればこれは大変なことであり、サンデーアーチャーがマイボウにヒビを発見するには数年はかかるでしょう。
 ということで、愛着あるリムでもなく単にあまり損をせずに新しいリムを手に入れたいなら、このヒビが発見されない前に売るのが賢いかもしれません。新品同様、このあたりが替え時といえばそうなのかもしれません。
 ただし、長年の経験で言うなら、点数を出すのは最新の道具を使うのもそうでしょうが、それ以上に大切なのは使っている道具に愛着と愛情を持って接し、使い切ってやる態度です。
 ちなみに、大切なリムの手入れにはこれまた自動車のカーワックスがお勧めです。カーワックスはリムもハンドルもキレイにしてくれるだけでなく、水弾きも良くなり雨の試合でも快適に過ごせます。新品同様にです。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery