ハンドルはどれくらい使えるの

 折れるまで使える。と言えば、それはそうです。
 しかしその前に、最近のハンドルはウインドウがなくなってきたことに気づいていますか?
 
 ウインドウといってもその深さは昔に比べれば、不要なくらいに深くなっています。カーボンシャフトを使う状況でいえば、センターショットからなおシャフトの直径分以上に深くなっています。昔のレストならそのままではツメが届かないくらいにです。これはアロークリアランスを大きく確保しようとする現われでしょうが、実際には正しいチューニングなり、正しいスパインの選択が行われるなら、ここまで深くはいらないだろうとも思うくらいにです。(正しくない使い方であっても、ハネがウインドウに当たらないようにとの配慮と、エイミングスペースも広く確保されるということもあります。)
 それはともかくとして、その結果でもあるのですがウインドウがないというのは、その深いウインドウへのリムの付け根側からのアール(曲面)が昔の弓に比べて非常になだらかなカーブになってきています。昔はもう少しL字型に切れ込んでいたものです。これは悪いと言っているのではありませんが、その理由は折損対策(というか折損への配慮)のひとつなのです。現実問題としてこの部分から折損を起こしたNC(アルミ)製ハンドルもあり、ここからの折損はグリップ下方からの折損とは異なり、大事故につながる可能性を持っています。そのためリムポケットの形状と構造にもよるのですが(特に鋭角な削り込みのあるハンドル)、どこのメーカーも細心の注意を払う結果の表れではあるのです。
 
 
 しかし、折損対策は形状だけでは当然ありません。素材そのものの特性も大きく関与します。同じNCで使用するアルミニューム素材といってもいくつもの種類があります。XX00系アルミなどといって硬いアルミを使えば解決するのかというと、そうでもありません。逆に硬いものには粘りがないので応力集中などの予想を超える力が掛かると、一気に折損に至る場合もあります。高価な素材だから良いというものでは決してないのです。
 では、ともかくは折れなければいいのかと言うと、事情は少し複雑です。突然の折損もあれば、曲がってきた結果の折損もあります。あるいは折れはしないが曲がってくる場合もあります。ただこの耐久性については、使用条件が大きく影響するので一概には言えません。女子が使うように30数ポンドで26インチしか引かなければ、年3万射しても多分半永久的といえるくらいに大丈夫でしょう。しかし45ポンドで28インチ、そして年間2万射を超える使用なら数年続ければ何かが起こるかもしれません。
 この何かが折損なら最初に言ったように諦めがつくか納得がいくかは別にして、使えなくなるので分かりやすいのです。問題は曲がってきた時です。ハンドルの曲がりは一方向に真っ直ぐ曲がることは稀であり、ねじれたり歪んだりと複雑で、専用の装置がないと測定できません。例えばなぜコンパウンドボウのハンドルはあそこまで頑丈に作られるのか。それはリカーブボウ以上の大きな力がハンドルに瞬時に掛かることや、ケーブルガードと呼ばれる部品によって大きなてこの原理がハンドルに加わるからです。「金属疲労」という言葉が一般化したお陰でカタチあるものはいつかは壊れることは分かるようになりました。リムは曲がってもハンドルは曲がらない、折れないと断言することはできないのです。
 しかし何をクレームと呼ぶかは別にして、思い出してもらいたいのです。最初にNCハンドルが登場した時、どのメーカーも今では当たり前になった「センター調整機構」を搭載していませんでした。にもかかわらず、実際には曲がりを感じる問題も特に起こらず、逆にだからこそハンドルが悪いのかリムがねじれているのかの判断も素人ですることができました。ところが現在、リカーブボウにおいてはハンドルあるいはリムにセンター調整機構が組み込まれることで、見かけ上の問題(ストリングをハンドルのセンターに通すことなど)は回避できるのです。そこが問題です。調整ができることと曲がってもいいこととは別問題です。
 にもかかわらず、ウインドウがなくなってきたことでも分かるように、曲がらないハンドルがある一方で、最初から曲がっているハンドルや曲がりを一定の範囲で許容しているハンドル、あるいはいとも簡単に曲がってくるハンドルまであるのです。しかしほとんどの場合、チューニングの不十分さやリムの悪さや相性の問題に話が置き換えられます。
 確かに昔以上の高ポンドや軽い矢によってハンドルへの負担が増したのも事実です。しかし、ウインドウのあった昔のマグネシュームダイキャストハンドルを思い出せば、最新と言われるアルミNCハンドルが最も重要な強度においても最善の選択ではないことを知るべきです。(重量においても、耐久においても、コストにおいてもそうなのかもしれませんが。)
 
 ・・・・ここまで書いていて、あまりにも回りくどい言いまわしなので、、、、はっきり言います。
 確かに折れない、曲がらない、非常に精度の高い素晴らしいハンドルがあります。しかし、その一方で非常に高価であったり、信頼のブランドであるにもかかわらず、曲がっていたり簡単に曲がってくるハンドルがこの世の中にはあるのです。使用条件や使用頻度によって、リカーブハンドルであっても永遠はありません。しかしだからといって粗悪品を作るメーカーを擁護したり、精度や品質の低下を容認するべきではありません。難しい問題ですが、やはり使用者であるアーチャーが、しっかりした知識なりモノを見分ける目を持つことが非常に重要です。新しいから、高いから良いということは、残念ながら最近のこの世界では通用しないように思います。

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