アルミとステンとマグネ

 比重:ある物質の重さと、同体積の4℃の純粋の水の重さとの比。
 
 純粋な「鉄」の比重は「7.85」。これより重い金属で思い浮かぶのが、「鉛」で「11.36」。安くていいのですが、毒性の問題以上に、柔らかいのでアーチェリーには向きません。昔はハンドルにビニールテープで巻きつけて、重りにした時代もありました。近年重りは鉛に替わって「タングステン」の時代です。「19.3」、さすがに重くて硬いのですが、加工性の悪さと値段の高さがネックです。戦争でも始まれば、一気にポイントは値上がりです。劣化ウランポイントもいいのかも・・・。(-_-;)
 となれば最も一般的なものは、「ステンレス」。ステンレスは合金のため、いろいろな種類がありますが比重は「7.9」くらいで鉄とほぼ同じ。ところが鉄に比べて、名前のとおり錆びにくく硬い金属です。そのため素材的にも高価ですが、加工が難しいので結果的には一層値段が高くなります。しかし強く粘りがあるため、強度が求められるものには最適です。
 ところがハンドル然り。軽量化が求められるものには、鉄と同じ重さのステンレスは重過ぎます。では軽い金属の代表は、「アルミニューム」です。純粋なアルミニュームの比重は、「2.7」。しかし純粋な(純度99%以上)アルミニュームは柔らかく、削りやすいのですが、強度は劣ります。
 そこでアルミ合金です。「ジュラルミン」はアルミ合金の一種です。7000番(系)台のアルミがジュラルミンのことです。ともかく強く、硬く、高価な素材です。航空機などに使われます。しかし、一時弓のハンドルにも7000番台を使用と謳ったものがありましたが、実は硬すぎて脆いという欠点も併せ持つのです。ハンドルには5000か6000番台が適するという結論でしょうか。硬さとともに、柔軟性やしなりも不可欠なのです。
 ところでアルミニュームのNCハンドルが主流の現在。しかしこれはメーカーの都合とコンパウンドハンドルの技術転用から生まれたもので、どんなアルミニュームであったとしても、リカーブハンドルに最適とは考えていません。なぜなら、アルミNCハンドルの前はマグネシュームダイキャストハンドルでした。では、「マグネシューム」はといえば、この合金の比重は「1.8」。アルミニュームの2/3。実用金属の中で最も軽量と言われています。比強度、比剛性でもアルミニュームを上回ります。そして何よりも実用金属中で、最大の振動吸収性(減衰率)を誇るのです。アルミNCは決してマグネダイキャストの進歩形、発達形、完成形ではありません。メーカーの都合以外の何ものでもないのです。
 しかしそれはさておき。ノウハウも技術も情熱もない場合、軽量化を求められそれに最も簡単に答える方法が、材質変更です。ましてやコストを抑えたい場合、ステンレスをアルミニュームに変えるのは、材料費だけでなく加工費も抑えられ、アルマイト加工でも施せば見た目もきれいで差別化を謳えます。素人を騙すにはいいやり方です。ハンドル本体を軽く出来なくても、軽量化したことには変わりありません。ところがアルミニュームは破断強度が圧倒的に劣るだけでなく、金属疲労を蓄積させやすい欠点を持ちます。
 いくら合金とはいえ、こんな場所にアルミニュームを使うとは、、、、、、1円玉を手で曲げる人もいるのですよ。1円玉は1000番台の純アルミですが。
 ちなみに金に糸目を付けないなら、「チタン」でしょう。純チタンは比重「4.51」でアルミニュームより1.7倍ほど重くはなりますが、ステンレスより60%程度軽くなります。そして錆びずにお肌に優しいだけでなく、強度がすべてにおいて圧倒的に強い素材です。ただし硬いために加工は難しく、素材も高価です。多分、ハンドル本体より遥かに高いネジになるでしょう。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery