アーチェリーのフォームをマスターする時、その動作によってフォーム全体をいくつかの部分に分割して組み立てていきます。スタンス−ノッキング−セット−セットアップ−ドローイング−アンカーリング−フルドロー−エイミング−リリース−フォロースルー・・・・分け方は人によってそれぞれですが、大体こんなところでしょう。そしてこれらの部分部分がアーチャーが注意して積み上げていかなければならない積み木の一個一個であり、「チェックポイント」なのです。 |
よく練習を見ているとアーチャーが引き戻しをする場面に遭遇します。現にまったく引き戻しをしたことのないアーチャーはいないでしょう。では、あなたが引き戻した時、それは何が起こった結果、そうなったのでしょうか?
エイミングが長くなりすぎた−クリッカーが鳴らない−引き手が緩んできた−震えてサイトピンがゴールドに付いていない−風が強い・・・・「アレッ!何かおかしい?」
「アレッ!何かが違う?!」
「アレッ!いつもと違う!!」という意識が生まれたのではありませんか。理由はそれぞれですが、問題はこの「アレッ!」という意識です。同じ原因、例えばクリッカーが鳴らないとしても、あるアーチャーは5秒を過ぎて「アレッ!」っと思うでしょうし、あるアーチャーでは2秒でも「アレッ!」と感じるでしょう。これはアーチャーそれぞれの意識やレベル、技術や経験によって「アレッ!」にも「許容範囲」が存在するということです。 |
あるアーチャーはサイトピンが9点にあるだけで「アレッ!」っと思うし、初心者は8点でも気にもしないでエイミングを続け、射てるわけです。このようにアーチャーが射てない、あるいは不安が頭をよぎる時にはシューティングフォームのどこかが自分の許せる範囲(許容範囲)から外れた時なのです。逆に言えば、うまいアーチャーはヘタなアーチャーよりこの許容範囲と意識が狭く、なおかつその範囲内で自分のアーチェリーができるということです。 |
言葉を替えれば、ひとつひとつの「チェックポイント」で、いかに正しくかつ正確に積み木を置くことができるかでアーチャーの努力と技術が培われていくわけです。だからこそレベルアップを目指すアーチャーは、それを確実に実行する必要があります。 |
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「動作の自動化」−−−アーチャーが練習に求める最大のポイントはここにあります。その結果としてアーチャーは試合において、何も考えることなく身体が完璧なシューティングフォームを求めるままに寸分の違いもなく自然に繰り返すことを欲しているはずです。そのために練習場へと足を運び、多くの時間をつぎ込むのです。 |
初心者の時を思い出してください。基本を教わった時、最初にスタンスでは爪先を結んだ線の延長上に的がくるように立てと指導されたはずです。それからはアーチャーはシューティングラインをまたぐたびに、そのことを意識して、歩幅は肩幅と同じ・・・と考えながらスタンスをとり、次の動作へと進んだはずです。これこそが「チェックポイントの確認」であり、積み木を一個一個正確に置くステップです。ところが、そんなアーチャーであっても中級者になるとどうでしょう。多分、フォームをオープンスタンスに替えていたとしてもシューティングラインをまたいでも、何の意識もすることなく自分のスタンスを毎回同じようにとるはずです。爪先を結んだ線が的に対して何度開く、などとは考えもしないはずです。あるいは、矢をクイーバーから取り出してストリングにノッキングする時、一枚のハネが自分側にくるようにと考えて矢をつがえる中級者以上のアーチャーはいないはずです。しかし、そんなアーチャーでも初心者の時は色の違う1枚のハネをレストに当たらないように、と自分側に向けて意識してつがえていたはずです。「動作の自動化」とは言葉を替えれば、「意識を無意識に変える」ことなのです。これは非常に重要なことです。 |
なぜなら、アーチャーが求める(求めなければならない)自動化は無意識であっても、それは最初から無意識として存在するものではないのです。すべては意識の延長線上に無意識が存在するのです。意識を繰り返すことによって始めて無意識が生まれます。このことを多くのアーチャーは錯覚しています。例えば初心者に初めてリリースという動作を教えた時、あなたも含めて最初から引き手が矢の延長線をなぞって真っ直ぐに後ろに解き放された人が何人いたでしょう?
そんな完璧を目指さなくとも、少なくとも手が後ろに飛んだアーチャーは何人ですか?
皆無とは言わないまでも、ほとんどがデッドリリースと呼ばれるあごの下に手を残したままの射ち方か、和弓のようなバンザイ放れではなかったでしょうか。このことは我々の目指すリリース(理想のとは言わないまでも)という動作が人間が生まれながらには備わっていない動きであることの証明です。もしこのような動作を人間が先天的に身に付けているのなら、最初であってももう少しマシな動きをしたはずです。ということは、目指すリリースは意識することから始めなければ決して獲得できる動作ではないのです。「意識が無意識を作り出す」のです。このことはシューティングフォームすべてについて言えることです。 |
「テーマを持つ」とはこの「意識を持つ」ことに他なりません。すべては意識から始まり、無意識を目指すのです。そして最初のテーマが無意識に変わった(自動化した)時、次のテーマに取り掛かります。だからこそ優先順位が必要であり、積み木を一個一個積み上げていかなければならないのです。 |
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