ひらめき

 アーチェリーが上手くなる時(瞬間)ってどんな時ですか?
 昔、「1日100射じゃ駄目、200射で現状維持、300射 射って少しうまくなる・・・」って話がありましたが、確かに練習量に比例して上手くなる時期はあります。初心者の時がそうです。そりゃ当然基本を身に付ける時期なんですから、一本でも多く引き射つ方が上達が早いのは当然です。初心者なら、ともかく射ちましょう。練習しましょう!!
 しかし、その時期を過ぎると「練習の中身」が問題になってきます。よく「量より質」という言葉で表わされる、あれです。そりゃ当たり前で、ヘタになる練習をいくらしてもヘタにしかならないんで、「いかに上手くなる練習を、どれだけたくさん」するかが重要なポイントになってきます。とは言っても、実際にはアーチェリーの世界の現状を考えれば、よほど下手な練習をしない限り「いっぱい射った奴が勝ち」ます。だから、ともかく射ちましょ!!!1日、200射でも300射でも。射つだけ射って、当たらなくなった時に真剣に考えたらいいんです。
 ところが、初心者や中級者の一時期を除いてはアーチェリーという競技では「練習量と得点(スコア)の上昇が比例しない」ことを実際に多くのアーチャーは知っているのも事実です。1日150射の550点アーチャーが200射に練習量を増やしたら600点が出るようになり、300射にしたら650点が出るようになる・・・400射で700点 ってもんではないはずです。いくら練習しても点数が伸びない時は伸びないし、逆になぜかぜんぜん練習していなくても突然 当たり出す瞬間があるのも事実です。
 では、どんな時にアーチェリーが当たり出すのか?!! 結論から言うと、それは「ひらめき!」なんです。突然アーチャーの頭の中にひらめきが起こって、世界が変わってしまうのです。
 じゃ、どうしたら ひらめき が来るのか? 少なくとも何にも考えずに漠然と射っていたんじゃ、いつまでたっても当たらないし上手くなることもないでしょう。突然のようにやってくるひらめきでも、そこには「求める」姿勢が必要なのです。
 どのように求めるのか? 求める方法は個人個人によって千差万別です。しかし基本は「試行錯誤」しかありません。それも心と身体における試行錯誤です。
 例えば、「世界チャンピオン」と呼ばれる人種が居ます。「日本チャンピオン」ではなく「世界」です。では、「世界チャンピオン」と呼ばれる人種が一般の凡人と比べて何が違うのか。当然、身体・精神・努力・環境・・・違いはいっぱいあるでしょう。しかし、それらをすべて突き詰めて、最後のこの1本で表彰台のてっぺんに立ち 世界一になれるかという場面を想像した時、そこにあるのは「自分を信じる力」と「自分の身体をコントロールする能力」の存在と強さです。ここには「資質」や、そこに至るための「素質」が存在します。しかし、凡人のレベルでのレベルアップにおいてはこんな持って生まれた才能はほとんど不要です。必要なのはもっとささやかな意識の積み重ねなのです。
 多くのアーチャーは自分をコントロールするものは「力」であり、それを支えるのは「根性」のようなものと考えています。これは大きな間違いです。自分をコントロールするのは「イメージ(想像力)」であり、それを支えるのは「あこがれ」であり、「情熱」です。そして、そこに「勇気」があれば言うことはないでしょう。
 例えばあなたがエイミング中。「外れる・・・」と思った時にはまず外れるでしょう。上手くいくことはほとんどないはずです。「外れる」「取られる」「上手くいかない」・・・といったイメージがあなたの身体をそのように動かすのです。一番大事なことは、頭で想ったこと、頭に描かれたことが身体をコントロールするし、頭にないことを身体ができるはずがないって事実です。じゃ、なぜ多くのアーチャーは外れると思ったら外れるんなら、どうして「当たること」をイメージしないのか???
 このことなんかも「ひらめき」のひとつです。そうなんだ、と思ってこんなささやかな意識の実行をシューティングラインの上で始めた時に、突然世界が変わったりするのです。でもこんな簡単で当たり前のことでも、いろんなことを考えてないと(意識の試行錯誤)思い付かないんです。
 あるいは試合でリリースが取られだすことがあります。これを直す方法はそれぞれのアーチャーによって違うでしょう。肘を思い切って鋭く抜くアーチャーもいれば、力こぶを作るように腕を締めるアーチャーもいるでしょう。しかし考えてみれば、リリースは外へは限りなく弾かれますが、内側に弾かれるぶんには全部首に当たって同じところを通るのです。このことに気付けば(意識の試行錯誤)、「喉を引っ掻くように」リリースするのもひとつの方法です(身体の試行錯誤)。しかし、こんなささやかな意識の積み重ねでも、練習でしたこともないことを突然試合でやるのはすごく難しいことです。まずは練習で繰り返しいろんなことをやってみるのです。とはいっても、練習で出来たからといって試合で出来るとは限りません。試合ではちょっとしたことでも、それを実行に移すには勇気がいるのです。練習でもやったこともないことには勇気も涌きませんが・・・・。
 ニュートンが万有引力の法則を発見した時もそうだったように、そのことを一生懸命考えていてこそリンゴが落ちたのを見てひらめいたんです。何にも考えずにただ射っているだけでは筋力は付いても、ただそれだけのことです。一生懸命「当てること」「勝つこと」を考えるのです。そしていろんなことをまず練習でやってみるのです。いろんなことを勇気を持ってやっているほど本番ではどんな状況にも臨機応変に対応できます。勇気が涌いてきます。頭を使って射つ、身体使って射つところからアーチェリーの練習は始まります。

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