グルーピングの法則

 初心者の時期が過ぎて、ちょっとアーチェリーが出来るようになってくると、ほとんどすべてのアーチャーが「勘違い」や「錯覚」、そして「思い込み」に陥ってしまうものです。
 例えば30mが射てるようになると、ある時期から黄色(ゴールド)が「当たり」で、それ以外は「ハズレ」だと感じるようになります。あるいはもっと前の初心者の時でも、10mで的を射って青や黒に矢が飛ぶと、それも「ハズレ」だと言ってサイトを動かしたりします。しかしそれは本当に正しいやり方なのでしょうか。
 
 シューティングマシン(機械)で射てば、矢はすべて同じ所に的中するはずです。ところが実際にはアーチャーの技術的問題を無視したとしても、矢は風や気温、湿度といった外的条件だけでなく、矢をはじめとした弓具の精度や性能上の問題によって、それぞれ異なった弾道を描いて的面に到達します。そして現実問題としては、このようなすべての条件をクリアして、同一点に矢を集めることは不可能なのです。そんな状況の中で作り出されたものが「グルーピング」と呼ばれるひとつの集まりです。そこで、これらの集まりをよく見てみると、そこにある法則に気付くはずです。
 まず、グルーピングには「大きさ」があるということ。
 初心者が80cmの的面いっぱいに矢を散らばらせて当てる時は、グルーピングの直径は80cmであり、トップアーチャーが全部ゴールドに矢を入れる時には、16cmのグルーピングの大きさということになります。これは重要なことです。80cmのグルーピングを作り出せるアーチャーにとっては、黄色に当たろうが青や白に当たろうが、それらはすべて自分の技術で作り出せるグルーピングの大きさの中であって、ミスでもなんでもなく許容できる結果なのです。それはゴールドが自分の技術の結果であるアーチャーにおける10点と9点の違いと同じことです。ここで勘違いがあるから、技術的進歩に遅れが出てしまいます。
 次に大切なことは、どんなグルーピングにも必ず「中心」があるということ。
 先の80cmのアーチャーも18cmのアーチャーも、どちらも的の中心を狙って10点に当てようとした結果、矢を散らばらせたのです。技術や弓具からくる結果として自分が作り出した大きさがそれだということです。しかし18cmのアーチャーはその中心が10点であることは分かっても、80cmのアーチャーのグルーピングの中心が18cmのアーチャーと同じ10点であると認識することは少ないのです。
 では、グルーピングの中心とはどんな位置でしょうか。
@ 多数の矢はグルーピングの中に均等に分布せず、中心的中点に近いほど濃密になる。
A そのように分布した無数の矢は、上下左右すべての方向に中心的中点を中心として対称になる。
 これが「グルーピングの法則」です。しかしアーチェリーの場合は、もう少し複雑です。まず、これによって作り出される輪の形は、完全な「円形」ではなく、重力の影響によって、特に長距離になればなるほど「縦長の楕円形」を呈します。そしてもうひとつ。この縦長に加えて、アーチャーの技術的問題によって左右に広がった底の大きな「タマゴ型」になります。リリースの技術や矢の選択によって矢は左右に蛇行を起こすのと、その結果として失速により矢は飛距離を短くするのです。しかし、どんな場合でも必ずそこには中心があることを忘れてはいけません。
 アーチェリーの練習とは、まず自分が作れる(矢を飛ばせる)輪(的中)の大きさを知ることから始まります。そして練習の過程(目標)とは、この自分が作り出せる大きさを小さくする何かを始めることです。それが分かれば、黒に矢が行ってもミスではなく、逆に9点でもミスはミスなのです。
 そしてもうひとつ。運悪くリリースの瞬間に風が吹くこともあれば、正確なエイミングができなかったりコンセントレーションが続かずにうまく射てないことは初心者でもトップアーチャーでもあるものです。そんな時、本来自分が作り出せる輪の外に矢が飛んで行くことがあります。しかしこれは単なる「ミス」なのです。ミスは忘れればいいのです。それが技術的あるいは弓具の致命的な問題や何かの始まりでないのなら、次も同じように自分のシューティングを目指せば良いのです。

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