冬のエポキシ

 アーチェリーの世界では、「アラルダイト」(これは登録商標です)や「エポキシ」と呼んでいる接着剤があります。
 これらは正式には(?)、「エポキシ樹脂系」接着剤と呼ばれる、「2液混合タイプ」の接着剤で、金属やガラス(FRP)、硬質プラスチックなどの硬いもの同士の接着に非常に強力な接着力を発揮します。(2液混合でないエポキシ系接着剤もあるらしいのですが、これは一般的ではなくホームセンターなどでは売っていません。) ということで、例えばカーボンロッドやアルミロッドにネジ部分のブッシング(金属)を取り付けたり、あまりしませんがリムのグラスやカーボンがささくれた時の修理に使用する接着剤です。基本的には、完全硬化すると外すには加熱しかなく、その時にはカーボンなどならその素材自体を傷めるので、取り外しを前提としないものの強力な接着に適します。
 使用方法は「2液混合」というくらいですから、「主剤」と「硬化剤」からなる2つの液剤(それぞれのチューブに入っています)を混合して使用します。主剤はエポキシ樹脂、硬化剤はポリアミド樹脂やポリチオール樹脂などが主に使用されているようですが、ともかくはこれらを「同量」チューブから出して、よく混ぜ合わせて使用します。量の違いが著しかったり、混ぜ合わせがしっかり行われていないと、本来の接着力が発揮できません。
 しかし取り扱いさえ間違わなければ、強力な接着力に加えて、2液の化学反応による硬化のため接着剤自体の収縮がほとんどなく、雨などの濡れに対しても非常に強い耐水性を発揮します。
 「アロン」(「アロンアルフア」も登録商標です)や「瞬間」と呼んでいる「瞬間接着剤」が衝撃に弱く、長期間の接着に向かないことから考えれば、「エポキシ樹脂系接着剤」が一般には完璧にも思えるのですが、問題(短所)もあります。
 接着(硬化)に時間が掛かります。昔は1日(24時間)や2日といっていましたが、最近は1時間(60分)や30分だけでなく、5分などという速乾(?)タイプの製品も登場しています。
 ところが、ところがです。この「5分」というのは、化学反応で硬化が始まりだすのが5分であって、実用強度になるには30分以上、完全硬化には12時間以上も掛かるのです。実際使用して、残った接着剤の様子を見ているとわかります。スタビライザーのネジを止めても、使う自信があるのは2日目くらいからです。
 それだけではありません。↑この時間は「常温」においての場合です。常温は接着剤メーカーによって異なるようですが、「20℃〜25℃」とされています。これが非常に問題です。夏ならいいのですが、冬場ならいくら室内に置いても、2日経っても完全硬化しないことが普通にあります。このような状況下では、完全硬化後にも強度が劣ることがあるようです。このことは逆にいうと、温度を上げてやれば化学反応が進行し、「24時間タイプ」を「5分タイプ」より早く完全硬化させることも可能になります。
 そのためメーカーであれば、乾燥炉を含め厳格な温度管理がなされるのですが、個人の家ではそうはいきません。ではどうすればいいのか。ともかくは「20℃」程度の温度なり室温を作り出すしかありません。冬場、2液混合を混ぜ合わす時に分かりますが、ドライヤーで温度を上げれば液剤は流れ出し、混ぜやすくなります。そうするしかありません。ただし、接着する素材が金属ならいいのですが、リムのようなすでに接着されている素材や高温にさらせない物であれば、注意を要します。
 であれば、ストーブで部屋の温度を上げるしかありません。夜中もずっと、20℃です。
 だから、夏はいいのですが、、、、冬のエポキシ、大変です。それともうひとつ、温度を上げると接着剤自体が流れ出したり、ロッドのような密閉された部品では、空気が膨張してブッシングを押し出したりします。実用強度に達するまではテープや重り、ゴム輪などで接着部分をしっかり押さえてください。
 ともかくは、「冬のエポキシ」ご注意ください。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery