個人的には「スピンウイング」は嫌いです。が、世間はなぜかこのハネが好きなようです。その大きな理由のひとつに、ハネの貼り易さがあるのでしょう。これはメンテナンスの簡単さとも共通する部分でもあります。(しかしこのことが性能を上回るものとは、決して個人的には思えません・・・。) そんな簡単に貼れるハネに説明はいらないのですが、注意するポイントだけを書いてみましょう。 |
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スピンウイングに代表されるこの種の「フィルム製」のハネは、ほとんどが「両面テープ」で取り付けられます。これが簡単さの最大の理由です。接着剤が乾くのを待つこともなく、また競技場などでもフレッチャーなどの特別の道具を使うこともなく、その場で貼ってすぐに射つことができるのです。 |
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■ 接着面の脱脂と表面の荒らし |
しかし、だからといって貼ればよいと言うものではありません。両面テープであっても、その接着力を強化し維持するためには、接着剤で貼るハネ同様に接着面をきれいにする必要があります。指で触って脂が付いた状態では、接着力は低下します。 |
両面テープを貼る前に、シャフト表面はアルコールなどを使ってきれいに脱脂します。(アセトンやシンナーなどの有機溶剤をカーボンシャフトに使用してはいけません。) また、プロセレクトやアルミシャフトは#1000〜#2000の細かいサンドペーパー(紙やすり)で表面に傷を付けた方が良いでしょう。(ACEなどのシャフトは表面が研磨してあるのでこの必要はありませんが、逆に表面に細かいカーボンの粉が残っています。この粉をアルコールで拭き取る必要があります。) |
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ハネを貼ることの簡単さのもうひとつの理由に、両面テープを貼る位置が最初に印さえ付けておけば、後はその同じ位置に貼ればよいということもあります。テープ(ハネ)の位置に事前に線を引いておくわけです。この線を何で引くかで、先の脱脂と多少矛盾してしまうのですが・・・・。 |
多くのアーチャーはもっとも簡単な方法として、「エンピツ」でこの線を引きます。それはそれで簡単なのですが、線が見難いのと、貼り替えの時には脱脂をすると線が消えてしまいます。そこでエンピツに比べるとちょっと値段が高いのですが、こんな方法もあります。 |
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■ 「Rotring
isograph」 + 「Drawing ink」 |
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製図か画材の専門店でないと入手は困難かもしれませんが、細い線が引けて耐水性があるとなると「ロットリングペン イソグラフ」(ドイツ製)がオススメです。太さは0.1ミリからあるのですが、あまり細すぎるのも見難いので、今回は「0.4ミリ」(¥2600)とそれに入れる「白インク」(¥550)を使ってみます。油性ではありませんが、乾くと耐水性はあります。ハネ貼り以外に、シャフトの名前書きやスピンウイングでなくとも、ノックの取り付け位置にも最初に線を引いておくとノック交換も簡単でハネ貼りの位置もずれません。 |
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では次に、このペンを使って何で線を引くか。シャフトの円周に対して120°で3本の線を引くとなると、それなりの道具が必要です。最近はスピンウイングを前提とした専用の「線引き器(?)」がいくつかのメーカーから発売されています。たしかにこれらの道具は持ち運びにコンパクトでどこでも簡単に線を引くことはできるのですが、ここではあえて「フレッチャー」をオススメします(購入するなら)。 |
これは次に話しますが、「線引き器」が発売されだした背景にはスピンウイングの普及もさることながら、最近はこの種のハネは「ノーピッチ」(傾きを付けない)で貼る傾向があるからです。このノーピッチが一般化したのは、ハネのサイズが小さくなってきたのと同じで、スピンウイングが異常とも言える(?)回転を矢に起こさせることが原因しています。その説明はここでは避けますが、せっかく自前のハネ貼り器を購入するのであれば、普通のハネも貼ることのできる「フレッチャー」を持っていた方が後々便利でしょうし、望むならスピンウイングにピッチを付けて貼ることもできます。 |
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両面テープは線の↑、それとも↓ |
線が引けたら、まずはシャフトにテープを3本貼って、その後でハネを引いた線に沿って貼り付けます。テープはハネより多少長めに切って(貼って)おいて、ハネを貼った後で不要な部分は爪で削げばいいでしょう。 |
問題は引いた線をテープの上側に合わせるか、下側に合わせるかなのです。これは線が引かれた位置(線引き器やフレッチャーのセッティングの状態)にも大きく関係する重要な問題なのですが、ほとんどのアーチャーは多分線をテープの下側に合わせて、、、それ以外のことは考えていません。
(^^ゞ |
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この重要な問題は線引きの位置とも関係するので、結論だけを言います。 |
スピンウイングはその特徴から、矢に大きな回転力を生み出します。(これが良いとは言いません。)
その結果、矢の発射の瞬間ノックがストリングから離れてハネ部分がレスト位置を通過するまでの20cm程度の間に回転が起こるのです。これは普通の3枚バネの矢にはないことです。そのため一般論が通用しないアーチャーが多くいます。 |
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スピンウイングの袋には絵入りで説明書が付いているので、誰でも一応はハネが貼れるのですが、その中に↑こんな絵もあります。矢をストリングにつがえた時に、ノックに対してこのように3枚のハネを配しろというわけです。これが一般論で、普通の3枚バネならこのことは重要です。しかし、スピンウイングに限って言えば、そうでもありません。実際問題として上側にくる赤色のハネばかりが傷んだり、取れてしまうアーチャーが少なくありません。スパインが合っていなかったり、チューニングが適切でないことに加えて、カーボンアローはアーチャーズパラドックスのストロークが短く、矢がウインドウぎりぎりに飛び出して行く傾向があります。そんな時、3枚バネ以上に回転が起こるスピンウイングは多くの場合、ハネがレストを通過する時には赤いハネが90°近く右に移動(回転)し、レストでのトラブルが起こってしまうのです。そのため、この種のトラブルを持つ可能性のあるアーチャーはそれを予測した(前提とした)ハネ(あるいはノック)の取り付けを行わなければなりません。 |
最初の線を引く位置やハネ貼りをテープの上側か下側にするかは、このつがえた時のために重要だったのです。そこでもし絵のようにハネを貼ることができて、なおかつ赤いハネが傷むようであれば、完成した矢を逆につがえて使うことを考えるべきです。(バイターノックの場合は、つがえる方向が決まっているので、逆につがえるのではなく完成した矢のノックを180°回転させる必要があります。) |
これはアーチャーによって180°とは限りません。90°の場合もあるでしょう。ともかく特定のハネが傷んだりするようであれば、ちょっとこのことを考えて最初のハネの位置(つがえ方)を変えてみることが必要です。 |
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あとは説明書のとおりで、最後にハネの両端をテープかフレッチタイトで止めれば完成です。 |
しかし繰り返しますが、製作やメンテナンスが簡単なことと的中精度が高いこととは比例も反比例もしません。また値段の高い矢が当たるとも限りません。何を求めるのかをよく考えて、ハネの種類やサイズを選び、自分に合った矢を使うことがもっとも重要なのです。 |