TP の交換

 「TP」が割れてしまいました。TPとはThermo Plastics(熱可塑性強化プラスチック)の頭文字を取ったもので、ヤマハForgedハンドルのリム接合部分に取り付けられている樹脂板のことです。ここにヒビが入ったのです。今回で2度目。最初はForged1の発売当初に取り付けられていたものでした。TPの初期モデルは外観的にはカーボンクロス風の模様が入っているもので、金型成型品で裏側のリブ形状に問題があり、割れ易くなっていました。それを改良したのが、現行のメタリック風ツブツブ模様塗装が施されたモデルです。これは成型後に後加工で裏を削り込んであります。しかし強度はアップしたものの、やはりこうやってたまにクラックが入る場合があるようです。ただしハンドルのクラックとは異なり、TPが割れたからといってすぐに使用不能になったり危険ということはありません。TPを固定するために直径4ミリのステンレスピンが2本ハンドル本体に通してあるからです。そのため今回もそうだったのですが、ハンドルにリムを付けてストリングを張った状態でないとクラックの発見は難しいでしょう。力が掛かってはじめてヒビが開く程度です。
 とはいえ、交換するにこしたことはありません。当然ヤマハも保証してくれます。そこで一回目は送り返したのですが、今回は時間的なこともあってTPとピンをヤマハから取り寄せて、自分で交換することにしました。作業としては簡単です。ステンレスピンを2本抜いて、TPを交換してピンを挿入するだけのことです。時間としては10分もあればできるでしょう。ただし問題は、一応ピンが接着剤でハンドルに固定されているので、どうやって外すかだけのことです。TPとハンドル間、ピンとTP間に接着剤は付いていません。接着剤は普通に市販されている2液混合タイプのエポキシ系接着剤です。
 普通エポキシ系接着剤を外す(接着されたものを剥がす)には「加熱」が一般的です。エポキシ系接着剤は多くの場合、金属と何かを接着するのに使うことが多いのですが(例えば、スタビライザーのネジ部分とカーボンシャフト。あるいは金属同士を完全に固定するなど。)、金属なら跡が多少汚くなっても削り落としたり、シンナーで洗うこともできます。そこで加熱にはガスバーナーやアルコールランプの「火(炎)」が使われます。しかし今回のようなハンドルや樹脂が相手となると、変形や塗膜の傷みが問題になります。ではどうやって接着を外すのか。ハンダごてがあれば、その高温の先端をハンドルから見えるピン部分に当てて加熱するのも方法です。しかしそういった道具がない場合や高温になりすぎることへの配慮も必要です。
 そこでちょっとしたノウハウがあるので、今回は「作ってみよう」コーナーに載せました。
どうするのか。意外と気付きませんが、「熱湯」を使うのです。これは実際にヤマハの工場でも、同じ方法でピンを外しています。温度も100℃を超えることもなければ、実際には沸騰していないお湯でも十分効果があります。
 ピンを叩き出す道具は釘やポンチでもいいのですが、今回はしっかりしたステンレスピンがあるのでこれを利用します。最初、加熱する前に叩くとびくともしなかったのですが、ほんの数秒蛇口から出るお湯をピン部分に掛けてやるだけで、簡単に接着は外れました。塗膜もTPも溶けることはありません。(ハンドルを触ると分りますが、予想以上に早く、思った以上に高温になります。掛けすぎと火傷に注意しましょう。) 後は逆の手順でTPを交換して、ピンのハンドルと接する部分にエポキシ系接着剤を塗布して叩き込めば完了です。
 ということで、今回のような例やカーボンシャフトからポイントを抜く時のように、あまり加熱しすぎると良くない場合にはお薦めの方法です。ご参考までに。

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