アルミコアのシャフトで作る時

 世の中の矢を大雑把に分けると、カーボンでできた「カーボンアロー」とアルミニュームでできた「アルミアロー」に分かれます。そのカーボンアローを大雑把に分けると、カーボン(CFRP)だけでできた「オールカーボンアロー」と、アルミニュームのチューブのうえにカーボンを巻きつけた「アルミ/カーボンアロー」に分かれます。
 そして実際には、アルミにカーボンを巻き付ける製法でシャフトを作っているのはEASTON社だけなので、「アルミ/カーボン」「アルミコア」シャフトといえば、EASTONの矢ということになります。
 そしてもうひとつ、EASTON社が作るアルミコアシャフトの中でも、特に我々が使うFITAの競技用アロー「X10」と「ACE」というシャフトは、他の例えば「ACC」や「NAVIGATOR」等とは異なり、「たる型」形状をした特殊(?)なシャフトです。(「X10 PROTOUR」はまたちょっと異なります。)
 そこで今回は、このアルミコアのたる型シャフトで矢を作ってみました。
 とはいっても、基本的な作り方はこれまでに書いてきたものと同じなので、必ず最初から参照してください。
 オールカーボンでもアルミコアでも、あるいはどんなシャフトでも必ず両端はカットします。メーカーで作られたこれらのシャフトは、通常使う長さより長めに作られています。しかしそれらは1本1本丁寧に切られるのではなく、大量生産で自動的に両端をカットするため、切り口が真っ直ぐでなかったり、バリなどが残っているのが通常です。
 そのため、必ずアローカッターで両端をキレイに切り直す必要があります。特にカーボンアローの場合は、ノック側も必ず切り直さないと、使っている間にクラック(ヒビ)が入ってくることがあります。カットした切り口は、これも必ず細かいサンドペーパーでバリ取りと面取りを行います。特にアルミシャフトやアルミコアシャフトの場合は、アルミのバリが中に残っていることがあるので、シャフトの内側も面取りを行います。
 では、両端をどれだけ切り落とせばいいのかです。当然、自分が作りたい矢の長さ(ポイントとノックを取り付けた)に合わせて両方を切れば普通は問題ありません。なぜなら、普通のシャフトは均一なチューブ状であり、どこを使っても同じ太さ、厚さ、スパインであるはずだからです。
 ところが厄介なのは、たる型のシャフトです。これには経緯があるので、こちらを参照してください。結論的には、自分が使うシャフトのどの部分が太いかで、同じサイズであっても硬さ(スパイン)が変わってしまうのです。しかし最近では、そんなことを言うショップもほとんどないでしょう。ややこしい(売りにくい)だけですから。ということで、ショップも含めて一般的には、たる型のシャフトであっても、クラックを防ぎ切り口を揃える意味から「数ミリ」ノック側を切るのが普通です。
 なにが普通かは、お任せします。これも経験則と授業料の世界です。
 例えば経験則で言えば、身長175センチ前後、矢の長さ28インチ半くらい、弓の表示ポンドが40から42ポンドくらいのクリッカーを使う中級以上の技術を持つアーチャーなら、アルミ矢なら「X7 2014」がオススメです。しかし、好みを含めて、重めの矢を使いたいなら、外径をワンサイズ落として肉厚を上げて「XX75 1916」を使っても同じくらいのスパインが得られ、どちらもキレイに飛びます。これに見合ったオールカーボンの矢なら「プロセレクト210」です。では、アルミコアの「ACE」なら「520」でしょう。ここまで来て、では「X10」はとなると、ACEと同じサイズ展開ではないので、ワンサイズ硬めで「500」と言うことになります。。。。↑これらは、ポイントの重さも技術も加味しない話です。
 そこで今回、少し硬くしてみたい思いがあり、最初からノック側を「1インチ」切ってみました。普通では、そんなに切らないでしょう。ここでも参考までですが、アルミコアのシャフトには「X10 PROTOUR」なるシャフトもあります。最近勘違いされているアーチャーもいるようですが、EASTON社はこのシャフトをコンパウンドアーチャー向けに生産しています。リカーブアーチャー(フィンガーリリース)には使わないようにインフォーメーションされています。このシャフトは、リリーサーで発射する、ほとんどパラドックスが起こらないことを前提として、たる型とは言ってもポイント側は先細りになっていますが、最も太い部分からノック側にかけては細くなっていないのです。これはACEやX10のノック側を長く切り落とすのと同じような(そんな極端ではありませんが)ことです。パラドックスに対して、後ろ側が硬すぎることでのレスト部分でのトラブルなどを回避する目的もあるのでしょう。
 ということで、ともかくはシャフトのノック側をカットして、バリ取りと面取りをして、ノックを付けます。
 が、これは今回シャフトの長さが分からなかったからであり、切るシャフトの長さが分かっている場合は、必ずノック側から始める必要はありません。ノックを先に取り付けると、中の空気が抜けないのでポイントを取り付けた際に浮いて(抜けて)きたりするため、ホットメルトが硬化しだすまで注意が必要という手間が掛かったりもします。ポイントから先に固定して、最後にノックを付ける方法もあります。
 そこでノックの固定ですが、最近は試合になって同じような矢が同的にあるために急遽ノックを変えるアーチャーがいます。(感謝) 個人的にはそんなことはしたくないのと、ノックが簡単に動くのはキライです。そんなアーチャーはノックにも接着剤(?)を使うようですが、特にアルミコアでインナータイプのノックの場合、ノック固定にもホットメルトを使うのは大げさですし、フレッチタイトでもホットメルト同様シャフトに挿入した時に接着剤が削がれてあまり効果がありません。といって、瞬間接着剤だと、ノックが外せなくなります。
 そこで今回は、↑ホームセンターでプラモデルなどに使う液体のこんな接着剤を買ってきました。ほんの少し(本当にほんの少しです)ノックに付けて、ノック取り付けを完了です。(別に接着剤なしでいい人は、いいんですよ。)
 あとは、完成矢の長さに合わせてポイント側をカットして、ポイントを取り付ければ完成です。余談ですが、中級者以上のアーチャーであれば、矢の長さやシャフトの長さは「○○インチ」や「○○ 1/4インチ」というように、切れの良い数字になっているのではありません(多分)。長さありきではなく、経験則の中から自分の長さを持っているものです。だから、矢の長さを聞かれたら、クイーバーから矢を出して「これ」としか言いようがありません。正確な自分の矢の長さを知るアーチャーは少ないでしょう。
 最後の注意です。よくポイントが畳に取られるアーチャーを見かけます。そんな時、必ずといってよいほど、ポイントの取り付け方が悪いのです。ホットメルトがピン部分全体に伸びていないのと、溶けていない状態でシャフト内に挿入しているのです。
 ポイント取り付け時は、ちゃんと準備して、ピン部分を過熱し、その後ホットメルトを加熱して少し流れ出した状態で回転させながら挿入、固定してください。
 ちなみに「ホットメルト」(ポイント用接着剤)ですが、EASTON社は自社のホットメルトを指定しているようですが、これは車メーカーがオイルを自社製品で推奨するのと同じようなものです。柔らかいタイプのホットメルトはシャフトを傷めにくいということがあるのでしょうが、経験則からはハードタイプの方が好きです。
 後は、はみ出したホットメルトを取って、ハネを貼ればできあがりです。
 ご参考まで。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery