20万円 の弓 と 5万円 の矢 を使うあなたに贈ります。
今は亡き 開高 健 の代表作 「オーパ!」。目からコンタクト、の実話です。
これを機会にアーチェリーを考え直してもいいかもしれませんね。

 

(前略)カメは卵もとられるけれど親もとられる。そのとりかたが非凡な手法で、弓に矢をつがえ、カメではなく空を狙ってよっぴいてヒョウと放つのである。矢は空へあがってから抛物線を描いて落下するが、その落下した点にカメがいて、鋼鉄の鏃がグサリ、甲羅に刺さる。これが百発百中だというのだ。ふつうに矢を水平にかまえて放つと甲羅にあたってツルリとすべるから、万有引力に手伝ってもらって上から落下させるんだ。カメの甲羅は水中にあるときは柔らかいんだ。そこで鏃が甲羅をやぶって突き刺さるとギュッと甲羅や肉が収縮して矢は抜けなくなるんだという。あちらこちら膨張と展開のさなかをさまよって歩くうちにときどきカノアで釣りをしている漁師に出会ったが、小舟のなかにはきっとピラルクーを突くための銛とカメを射るための弓がのせてある。そこでモンテ・カルメロ号からこわれたネジまわしの柄、これが亀頭にそっくりだというので河へ投げ、ためしに矢を射てもらったら、何発射ても、もし甲羅があればと思える地点はズバリ、ズバリと入った。お礼にポラロイドで写真をとってあげたら、漁師はカノアに突立った自身の勇姿に見とれ、ヒ、ヒ、ヒと声をたてて笑いながらどこえともなく消えた。(後略)
集英社文庫 オーパ! 開高 健 152ページから153ページ

 

copyright (c) 2002 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery