プラクティスとトレーニングの違い

 プラクティス(Practice)とトレーニング(Training)の違いを知ってますか?
 クラブに行く時、レンジに行く時、「どこに行くの?」と聞かれると、多分「ちょっと練習!」と答えるのではありませんか。ところが日本語の場合、「練習」という言葉にはプラクティスとトレーニングの両方のニュアンスが含まれているのです。しかし、このふたつはまったく別のものであり、それを分かっていないと大きな過ちを犯してしまいます。今一度、言葉の意味を整理してみましょう。
 本を調べてみると、『運動の技能や協応性の面に「永久的(不可逆的)な効果」を生み出す運動が Practice で、筋・腱・心臓等に「可逆的な効果」を生み出す運動が Training である。』とあります。可逆的とは元の状態に戻ることで、不可逆的とは元にはもう戻らないことです。こう書くとちょっと難しそうですが、自転車に乗ることと、ジョギングを考えれば分かり易いと思います。自転車に小学校の時に乗れるようになった人は、たとえ大学生になるまで一度も自転車に乗ることがなかったとしても多分乗ろうと思えば簡単に乗れるはずです。これが不可逆的な効果です。それに対してジョギングは毎日毎日走っていても一ヶ月走らないと、再開しても息が切れて辛い思いをするはずです。これが可逆的効果です。自転車を乗る練習は「プラクティス」にかかわる分野であり、それはとりも直さず中枢神経に効果を定着させるという「技術」=「情報系」の訓練です。それに対するジョギングやウエイトトレーニングなどは「体力」=「エネルギー系」の訓練であり、まったく別であることが理解できるはずです。そして一見これらは矛盾するようにも思えるのですが、実は技術は体力をコントロールし、技術は力の中にあり、双方が協力し合っているのです。
 選手(アーチャー)は技能を向上させるべく「練習」をしっかり行い、またこれとは別に筋力やスタミナ、柔軟性などを高めるべく「トレーニング」を行うことが大切なのです。弓を射ちに行くのも走りに行くのも練習ではないのです。

 

 では、クラブ(Club)とチーム(Team)の違いは知っていますか?
 これも辞書を引いてみると、「クラブ:共通の趣味、職業などを持つ人々の社交、親睦団体」、「チーム:同じ仕事、競技などを行う一団、一組」となります。ということは、チームは「目的意識」に強く裏打ちされた「生産性の向上」を目指す集団であり、それに対してクラブはチームそのものを内在しながら、他や外部との社会的関係を含んでいることになります。「チームプレー」「チームワーク」という言葉はあっても、「クラブプレー」「クラブワーク」という言い方をしないのは、チームは「勝つ」ことこそが目的であり、それが達成されれば良いのです。そのために役割分担やポジションが明確に決められ、完璧な任務遂行が求められるのです。
 チームが「競争のための協同」であるのに対して、クラブは「競争のため」という前提のない「共存のための協同関係」なのです。ユニフォームの背中に Archery Team と書かれていることは Club よりカッコイイのは分かります。しかし、今一度あなたの属している団体の性格とあなたの位置付けを考えてみるのもいいでしょう。それを間違うと、せっかくアーチェリーを中心に集まった連中でも息苦しくなることもありますよ。
 最後に、監督とコーチの違いを知っていますか?
 そんなことぐらい知っている、と言うでしょう。しかし、本当に知っていますか? 監督とはチームやクラブの代表でありリーダーです。それに対してコーチはレンジ(練習場)の中における指導者、代表者なのです。ということは、皆さんのクラブはどうかは分かりませんが、コーチは指導における能力や技能を備えていればそのクラブのOBや関係者である必要はまったくないのです。逆に外部の人間であることの方が適する状況もあるのです。しかし監督は違います。レンジ外での指導者であり、チーム・クラブを代表する人間です。外部との接点であり、求められるのは選手への指導能力よりも外部との折衝能力や政治力、あるいは資金力などなのです。
 よく監督とコーチはどちらが上、的な話を聞きますが、この関係を理解する時には「雇用」関係を考えると分かり易いでしょう。監督がコーチを雇っているのです。監督は外部との、そしてコーチは内部の指導者です。雇用関係の中でそれぞれの役割があるのです。雇うという立場では監督が上かもしれませんが、指導においてはコーチが絶対的権限を持つのです。しかし、悲しいかな日本のアーチェリーの現状は間違っています。もう一度、見識と勇気と決断、そして実行力を発揮する時期ではないでしょうか・・・・・。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery