靴と安定

  最近、靴に注意を払わないアーチャーが多いように思うのですが気のせいでしょうか。あなたはアーチェリーをする時に、靴にどの程度のこだわりを持っていますか?
 例えば車と地面の設置面がタイヤであるように、実際に立位で競技し、そこに安定を求めるアーチェリー競技において「靴」は思っている以上に重要な役目を果たしているのです。

 足の裏には実際に体重を支えている「有効支持表面」と、実際に地面と接していても体重を支える仕事には参加していない「総体支持表面」というものがあります。そして重要なことは、靴を履いた時、素足の時のそれと比べて有効支持表面が著しく増大する点です。
 そんな難しいことを言わなくても、この写真を見てどちらが安定していると思いますか。一目瞭然のはずです。
 
 
 ジョギングシューズやクロスカントリーシューズのように、つま先やかかとがまくれ上がったり、底の面積が小さい靴は立位での安定性に欠けるばかりか、不安定になった時に踏ん張りが効かないのです。
 実際アーチェリー専用シューズはあったのですが(今では在庫を除いて市販品ではないからです)、ちょうどアシックス社と美津濃がこれらを発売した1976年当時にアドバイスをしました。その時お願いしたのは 1)接地面をフラットに広くとる 2)足底のアーチ(土踏まず)のホールド性を高める 3)足首の保持 4)雨対策 などでした。これらはどの靴を選ぶにしても、アーチェリー用とするには重要なポイントなのです。しかし、お分かりのようにここには相反する条件があります。接地面の拡大や足首の固定は歩く動作においては不都合であり、疲労しやすくなります。歩き難いのです。また、雨に強くすれば晴天下では蒸れてしまいます。

 これはライフル射撃に使われる競技用の靴です。先の条件そのままに、立位での安定度を追及したものです。しかしライフル射撃やピストル射撃競技においては矢取りもなければ雨天下でのシューティングもありません。
 そう考えれば少なくともトップを目指すアーチャーなら、試合には晴れ用と雨用の靴を持参するのが当然の努力といえるでしょう。とはいっても、悲しいかな貴族のスポーツアーチェリーにおいて、大雨に重宝するのはあのゴム長ことゴム長靴が見てくれはともかく一番いいのです(大雨においては安定度より濡れないことが最善の対策です)。ただしせっかくアーチェリー用として購入するなら黒はご遠慮願いたいところですが、もしフィールド競技にも使うことが予想されるなら、釣具店に売っている磯釣り用の裏にスパイクピンを打ったものをオススメします。また、安定度とファッション性を考慮するならヨットなどで履くマリン用の長靴がオススメでしょう。
 そして晴れた時用の靴は、ともかくは足が疲れず可能な限り接地面の大きい靴を選ぶべきです。どちらかといえばバスケットボールシューズやテニスシューズのクレーコート用などがアーチェリー向きです。ただしあまり安い靴は重たかったり、足底のアーチを支える形状が不完全で疲れ易いという欠点もあるので注意が必要です。
 この機会にちょっと足元を見直してみてはいかがですか。

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