「スタビライザーのネジが折れたのですが・・・」という相談を受けました。
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そこでいろいろ聞いてみると、折れたのはセンターロッドのオスネジで、折れた部分に「ワッシャ」を挟んでいたとのことです。
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確かにロッドやウエイトの間に「ワッシャ」を取り付けているアーチャーがいることは知っています。しかし個人的な経験則とたくさんの授業料を払ったノウハウとして言わせてもらうなら、少なくともセンタースタビライザーにおいては根本にワッシャを使用するべきではありません。短いロッドやダンパーの付いたスタビライザー、そしてウエイトなどには、たぶんワッシャをそこに付けた目的である「ネジの緩み」の解決には寄与するでしょうがセンタースタビライザーの、それも高剛性を目的としたロッドには適切ではありません。ある意味、ネジを折れ易くしているからです。(まったく逆に、「ネジを外し易い」ようにとの目的でワッシャを使用しているアーチャーがいることも知ってはいますが、結果は同じことです。)
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「ワッシャ」というと、なぜかアーチャーは「ナイロンワッシャ」を思い浮かべるようですが(それは昔からロッドにはナイロンワッシャがお決まりのように付いていたからでしょう。)、ワッシャにも多くの種類や目的があります。ナイロンをはじめとして、テフロン、セラミック、シリコンやファイバー、金属系ではアルミにステンレスにチタンなどさまざまな素材があります。また形状も単にドーナツ型のものだけでなく、本当の緩み止めとしてのスプリングワッシャや歯が付いたものや、皿状になった曲げワッシャ等など、使用目的によっていろいろなワッシャがあるのです。ところが、アーチャーはネジが緩むと何でも単純にナイロンワッシャを挟みます。確かに昔の柔らかいアルミロッドやカーボンであってもテーパーのかかった時代はそれで用は足りました。しかし弓の反発力が高まり、矢が軽くなって弓が受けるショックが大きくなり、ロッドに高剛性の性能を求めだすとそうはいきません。あえて柔らかいロッドを使う場合や高剛性を謳いながらその性能を持たない陳腐なロッドなら問題はないのでしょうが、そうでなければ「ワッシャ」、それもナイロンのような柔らかい材質のものは、ネジが緩んだ時と同じ状況をロッドに与えているのです。(一見硬い素材のように思えても、そこに掛かる力に比べれば柔らか過ぎると言わざるを得ません。) ネジへの応力集中は長さ×重さのモーメントで掛かってきます。センターロッドがその最たるものであるだけでなく、ワッシャによるネジの緩み状態はテコの原理でネジの根元を支点とします。だから少なくとも、センタースタビライザーおよびそこに配するエクステンションロッドには「ワッシャ」を使用するべきではありません。
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しかし、ワッシャなしでも折れることはあります。先日、同じアーチャーが交換した同じロッドを2度続けて折ってしまうというトラブルがありました。ロッドの強度や設計上の問題も考えられますが、他に同様のトラブルが起こっていないことを考えると「使い方」ということも考えられます。しかしそう単純でもありません。なぜなら緩んだ状態で使い続けるならともかく、そうでないならそのアーチャー固有の条件が考えられるからです。ロッドに限らないのですが、折れるアーチャーは折れるし、折れないアーチャーはなにをしても折れない的状況が世の中にはあります。
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例えば稀ですが、ロッドとハンドルとの相性が考えられます。ロッドのオスネジを取り付けるハンドルのセンターブッシュとの勘合がしっくり行っていないこともあります。それは精度の問題もありますが、そうでなかったとしても、組み合わせの相性がともかく悪い場合です。
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もう一つは、使い勝手です。こんな経験をしたことはありませんか。最近のサイトはロック機構が付いているので分からないかもしれませんが、それでも距離によってサイトが緩み易い位置がありませんか。例えばなぜか30mのサイトだけがネジが緩むとか、70mだけビビリ音が出るとか。これはロッドの宣伝文句によくある「共振」です。その位置に限って揺れの振幅が大きく発生するわけです。それによってまったく問題のない場所とそうでない場所が生まれます。ロッドでもサイトでもハンドルでも同じことです。そしてそれが不幸にしてセンターロッドの根本に集中することもあるのです。揺れの原因がアーチャーの技術的問題からか、弓の基本性能の悪さからか、それともスタビライザーを含めた弓のセッティングの結果からかはわかりませんが、ともかくはよくトラブルが起こるアーチャーとそうでないアーチャーが世の中には存在するのです。
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ということで、原因はわかりませんが、ともかくセンターロッドにナイロンワッシャを使用するのはやめませんか?!
確かにネジが噛むこともありますが。。。
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