初心者指導マニュアル 1st End

 ここでは教えられる立場ではなく、教える立場でのレベルアップを考えてみましょう。目先の結果や得点に惑わされることなく、いかにアーチェリーの面白さ素晴らしさを伝え、より長くアーチェリーを楽しんでもらうか・・・・。
 それには絶えず教えられる立場に立った、親切で適切な指導が必要です。自分が今は分かっている当たり前のことでも、初心者にとってはすべてが初体験なのです。そして教えることは、同時に自分も学ぶことです。
 
 
  Lesson 1
 ターゲットに直角に立つ「壁」のイメージで、3本の線が真っ直ぐゴールドに。
 スタンスはすべてのシューティング動作を支える「基礎」となる部分であり、最初の一歩でもあります。ストレート、オープン、といくつかのスタイルはありますが、初心者には基本の基本としての「ストレートスタンス」から入りましょう。これができればオープンでもクローズでも簡単にマスターできます。
 基本のストレートスタンスはイコール「正十字」です。両足を肩幅か、それより心持ち狭く、つま先は軽く開きヒザをしっかり伸ばして真っ直ぐに立つ。この時、つま先を結んだ線が真っ直ぐにゴールドに向かなければなりません。多くの場合、このようにつま先の位置だけでスタンスを語るのですが、実はあと2つのチェックポイントがあります。
 「つま先を結んだ線」に加えて、「腰骨を結んだ線」と「肩を結んだ線」の延長にゴールドがなければなりません。これらの3本の線が平行になって、はじめて平面的で理想的なフルドローが完成します。
 この時、アーチャーの感覚として非常に大切なのが「壁」のイメージです。シューティングラインに対して直角に大きく、どっしりとした壁が立つのです。アーチェリーの動作は、すべてこの壁の中で処理されます。リリースの瞬間押し手が中に入ったり、左に流れたりせず、引き手は膨らまず、ヒジの先がはみ出さず、上半身も下半身もよじれたり動いたりはしません。一般に言われる「矢筋の通った」状態(グリップとアンカーと引き手のヒジが一直線になった)もすべてこの「平面」(壁)の中で、フルドローからリリース、フォロースルーへと移行していきます。アーチャーはどっしりとした、安定感のある「壁」になって、ゴールドをエイミングするのです。
 アーチェリーの動作は、基本的にはフルドローで作られた平面の中で完結しなければなりません。そのためにはアーチャー自身が壁になることが必要であり、その中に身体のすべての部分を置きます。そのために初心者には「壁」になるような感覚をイメージさせます。しかしそれは最初から薄い平面である必要はありません。まずは分厚い安定感のある壁から入っていきましょう。

 

  Lesson 2
 ハンドルのグリップを手のひらでやさしく包む。押し手に求められるのは安定と固定。
 弓のグリップは非常に繊細で敏感な部分です。そこでグリップは「ニワトリの玉子」と考えるといいでしょう。押し手は「玉子」を持つように、やさしく手のひらで包み込んでやることが必要です。決して強く握り締めたり、振り回すことがあってはいけません。
 グリップは弓と弓の力を支える(受ける)重要な部分です。この接点が不安定だと、弓は毎回違った動きをすることになり、矢に対して正しい「方向」と「力」を与えられなくなります。押し手のグリップやヒジに求められるのは「安定」であり、理想的には「固定」です。この部分でクリッカーを鳴らしているアーチャーを見かけますが、これでは固定はおろか安定さえも見失ってしまいます。押し手が動くとすれば、それは肩がリリースからフォロースルーにかけて、真っ直ぐに押し出す動きに限定されるべきです。
 「グリップ」はハンドルに取り付けられたグリップ部を手のひら全体で包むように合わせ、意識だけは一番深い点(ピボットポイント)に向かって滑り込ませるような感じで支えてやります。そのために指導者は、初心者が手首を動かさないように注意しなければなりません。そしてヒジ、手首、ピボットポイントが一直線上にあるかどうかを毎回チェックします。さらにリリースからフォロースルーにかけて、受けていた力とグリップ部がそのまま真っ直ぐにターゲットに向かって解放されているか。その時グリップはリラックスして自然な動きを得ているか。弓の動きを邪魔していないかなどを見なければなりません。
 トップ押しでもベタ押しでも、重要なのは取り付けられたグリップの形状に優しく手を合わせてやることです。ピボットポイントだけを点で支えるのでもなく、握り締めるのでもありません。そしてリリースでは玉子が前方へと自然に放物線を描いて落下していきます。

 

  Lesson 3
 フックは単に「鉤(かぎ)」と考える。中指を中心に3本の指をしっかり掛ける。
 引き手のイメージは「ロープ」が結び付けてある「鉤」を考えるといいでしょう。そのロープはヒジを通って背中につながっています。そしてフックは実際には人差し指、中指、薬指の3本ですが、ロープが結び付けてあるのは真中の中指です。
 このようにフックを鉤と考えれば、そこに要求されるのはグリップ同様に「安定」であり「固定」であることは容易に理解できるでしょう。少なくともリリースが開始されるまで(クリッカーが鳴るまで)は、鉤の形は変化するべきではありません。.エイミング中にフックが緩んできたり、逆に力が入ってくると手首に力が生まれスムーズなリリースはもちろん、シューティングフォーム全体の基本が獲得できなくなってしまいます。
 「鉤」を安定させるためには、初心者には多少深く掛けることからスタートさせるべきです。中指でいえば第1関節と第2関節の中間くらいが良いでしょう。ただしロープが結んであるのはこの中指ですが、それ以外の上下2本の指はドローイングの途中でストリングに角度がついてくるため、多少変化(フルドロー時にはセットアップで掛けた位置よりは浅くなります)するのは仕方がないでしょう。初心者は特に、フルドロー時で上下2本の指は第1関節より浅くならないようにしてください。鉤のようにしっかりと変化しないように教えることが、フックの基本であり、もっとも大切なポイントです。
 ロープは中指に結ばれているのですが、特にヒジを極端に高く構えると薬指がしっかりと掛けられなくなり、手首にも不自然な力が生まれます。フックのひとつの目安はシューティングライン上から見て、3本の指の爪全部が見えないようなフックを作ることです。

 

  Lesson 4
 ドローイングで決してロープを緩めない。そのために、ヒジは必ず手首より高く構える。
 アーチェリーはフック(指や手首)で引くものではなく、手首につながったロープで引くものです。その時、ロープが伝っているヒジの先端部分で引っ張るか、ロープの付け根を絞り上げるかはアーチャーそれぞれの感覚です。しかしどんな場合であっても「ロープを引く感覚」はシューティング全体を通して非常に重要な意識であり、どのアーチャーも必ず持たなければならない感覚です。
 多くのアーチャーはセットアップの時点で、すでにロープを緩めてしまっています。手首よりヒジの先端を低くすることは、ロープを緩めたことと同じです。このことはアンカーリングやフルドロー時にもいえることです。もし一瞬でもロープが緩むと、引く力は手首に集中し満足なドローイングができないばかりか、ととえその後にフルドローを作ってもリラックスの保たれたスムーズなリリースはできません。
 鉤をしっかりストリングに掛けたら、後はロープを緩ませず(ヒジを下げず)にフルドローまで真っ直ぐに矢と逆の方向にロープで引きます。この時、特に初心者(実際にはすべてのアーチャーなのですが)は少し高めにロープを張り続けるように注意しましょう。指導者は、矢の延長線が必ず引き手のヒジの下にあるように教えます。
 この時併せて「流れ」も意識(イメージ)させることが大切です。ドローイング時のロープの感覚と流れは、単独で存在するものではありません。これらはフルドローを作り出す手段ではなく、すべてはその先にあるリリース、そしてフォロースルーに向かって存在するものであることを教えなければなりません。
 セットアップからドローイング、アンカーリング、フルドローにかけて、引き手のロープは決して緩めてはいけません。高すぎることも良くはありませんが、矢の延長線より低くなることは絶対に避けなければなりません。そしてフルドローでは延長線がヒジの下側あたりを通過するのが理想です。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery