1/250秒

 先日、練習中に写真を写させてほしいとのことで、断ることではないので了承したところ、大きく引き伸ばした写真をいただきました。ありがとうございます。
 そのうちの一枚が1/250のシャッタースピードで写されたこの写真です。
 1980年代に入って、例えばコンピュータチップの生産工程でのエラーを確認したりするために新しいハイスピードカメラが開発されました。それまで8ミリや16ミリといったフィルムを高速で送ってスローモーション撮影を行っていたのが、現像の必要がなく通常のビデオフィルムに1/10000秒を超えるハイスピードでの録画が可能になりました。当然これはスポーツの分野でも大活躍することとなり、アーチェリーでも使われているのはご存知のとおりです。
 よくフォロースロー(残身)は矢が飛び出した後だから必要ない、と言うアーチャーがいます。確かにこの写真を見ても、リリースが開始される以前にストリングは指先を弾いて出て行き、手がアゴの下にある間に矢はレスト部分を通過しているのです。もうここまでくれば、よほどの超能力か念力がない限り弾道を変えることはできません。その意味からはフォロースローは不要なのかも・・・・と言うより、それ以上に射つ瞬間が重要なのです。
 最新の弓具を使って26インチのドローレングスから矢を発射した場合、ストリングがストリングハイト位置まで復元するのに要する時間は約0.013秒です。しかし、だからといってこの射つ瞬間だけを訓練することはできません。
 もしフォロースローをとらずにシューティングを繰り返すなら、アーチャーの身体はその意思とは別にクリッカーの音と同時に筋肉の弛緩という運動プログラムを神経系に形成していきます。クリッカーの音=リリース ではなく、クリッカーの音=筋肉の弛緩 を無意識に実行させる結果となるのです。
 そしてもうひとつ、注意しなければならないことがあります。それは射つ瞬間が大切だからといって、その「点」だけをうまくコントロールしようとして、そこだけに意識を集中することです。例えばコンパクトな小さい動きのリリースがそうなのですが、これはよほどのトップアーチャーでもなければ実際に目に見えない「点」をうまく処理することはできません。大きく、思い切って、伸びて射つリリースをすることこそが「点」を弾いたり、ずらしたりすることなく安定したストリングの解除を繰り返してくれます。
 だからこそアーチャーは、まず理想とする形でフォロースローを残すことを訓練しなければなりません。そして次に意識もそこに残すことです。人間の意識でコントロールできない1/100秒を超える世界だからこそ、シューティングを点ではなく線で捕らえるのです。それができれば、「点」は線の中で流れていきます。

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