有弓休暇(31)

 今年も「つま恋カップ」行ってきました。もうずぅーっと何10年も出ているのですが、今年もいろんな人に会えて楽しい時間を過ごしました。試合結果はともかくですが、、、試合前日のレセプションでも、最年長参加者の話題で楽しく盛り上がりました。
 で、翌日ランキングラウンド70m72射終了。2/59名というか、実際にはそれ以上の確率で狙ったんじゃないかと言うくらいに、弓は当たらないのに「ドーピング検査」の対象に当たってしまいました。
 抽出方法は「RANDOM」(ランダム)なんですが、2/59以上というのは事前事後を含めどういう対象、選び方をするかは公表しないからです。この時は男2名、女2名の中に当たったわけで、カードで無作為に選んだ番号が当たったようですが、方法もその都度違うようです。
 そこで今回は、当たらないであろうと思っていても当たってしまうこともある、アーチェリー同様のドーピング検査。もしもの時の「アンチ・ドーピング」プチ情報です。まずは、こちらをご覧ください。被験者となったのは初めてでしたが、まったく知識がなかったわけではなく、知っているスタッフの方もいました。そこで、啓発を兼ねて、ホームページに載せることを前提に写真も撮らせていただき、雑談含めいろいろと教えてもらいながらの検査となりました。
 
 この栄誉(?)ある対象者に選ばれると、まず最後の矢を射ち終わってシューティングラインから戻ってくると、そこにはすでに「DCO」(ドーピングコントロールオフィサー)と呼ばれる、「JADA」(社団法人 日本アンチ・ドーピング機構)のスタッフがお待ちかねです。ちゃんとネクタイをして、IDカードを示して自己紹介。そして選手としての権利と義務も説明してくれます。ほんとに礼儀正しく丁寧で、なんの心配もいりません。ちょうどスピード違反で捕まった時のおまわりさんと同じように、それはそれは笑顔で優しく対応してくれます。とはいっても、おまわりさんが国家権力であるように、JADAの方は絶対的な権限をお持ちですので、笑顔とは裏腹にこの時点でお断りすると、クリーンの裏返しとしての「陽性」同様の結果が待っています。ともかく主旨を理解して、同意の署名をするしかありません。選手として検査を受けるのは義務であり、拒否する権利などまったくありません。くれぐれもお間違えのないように。ただし、先にも書きましたが、選ばれたことは無作為です。この日は予選でしたが、翌日の試合では対象が上位入賞者になるのか、それ以外なのか、男か女か何人かは不明です。翌日それは決定され、そのうえで無作為に抽出されます。結果、翌日も4名のようでした。
 ということで、「ドーピングコントロールフォーム」という書類に同意の署名をすると「通告時刻15:36」と記され、始まりです。メダルならまだしも、首に「ドーピングコントロール・パス」を掛けてもらい、コントロールステーション(検査会場)に向います。その間、弓具の片付け等すべてDCOの監視下ということです。でも、ケース持ちましょうか、とかほんと親切です。
 「到着時刻15:50」。試合会場横の用意された部屋に行きます。ともかく目的はオシッコを取るということなので(血液検査もある場合があるようですが、通常は尿検査です。)、部屋には無料の飲み物だけはいっぱい置いてあります。コーヒーを飲めば、離尿作用があるのですぐにと思ったのですが、カフェインは現在禁止薬物ではありませんが、提供しているのは水とスポーツドリンクのみとのことでした。
 まずは、オシッコを取るための容器の選択から始まります。ともかくはフェアに、ともかくはインチキがないようにシステム化されています。ここで少し余談ですが、、、
 例えばオリンピックでも世界選手権でも同じですが、いくら仲の良い選手同士であったとしても、練習会場、試合会場、宿舎どこであっても他国の選手から出された飲食物については、一切口を付けないことは「アスリートの常識」です。これは冷戦終了後の今の世界においても変わっていません。そこで今回DCOの方も言っていましたが、特に海外においてはインチキは選手側だけの問題ではないということです。DCO側が不正を働く可能性は全く排除できない、というのも現実だそうです。そしてもうひとつ余談ですが、他のページで「自分の矢は自分で抜こうよ!」と言っています。(←ひとり勝手キャンペーン) なぜそれを言うかといえば、もし海外で日本でやるように他の選手の矢に触ると、嫌がられる前に注意され拒絶されます。「アーチャーの常識」です。平和な日本では分からなくなっているのでしょうが、ハネが少しはがれたりシャフトが傷んでいれば、それだけで10点を外します。ドーピングと同じように、すべてにおいて相手を疑うのではなく、自分を守る姿勢を身に付けたいし、相手に迷惑を掛けたくないと思うからなのです。後でお互いイヤな思いや疑いを持つことはしたくありません。
 そこで、まずは密封され袋に入れられた複数のオシッコを入れるプラスチック容器から、好きな1個を選びます。手を触れるのは選手だけです。DCOがすべて指示をしてくれますが、容器の口や中には手を触れず、すべて選手の責任で行います。
 では、これを持ってトイレへ向かいます。もちろんずっとDCOが付きっ切りです。後は、ちょうど便所で隣のオッサンにジロジロ覗かれるような感じです。(すいません、ジロジロは見ません。チラっ、チラっと見るくらいです。)ともかく、もちろんオシッコを取るところを見られます。仕方ないですね。そしてまた席に戻ります。
 次は検査にまわすためのガラス製容器を複数個の中から選びます。ビンは2個あり、1個(赤い方)は検査用で、もう1個はもしもの時の予備として保管されます。これらはすべて共通の番号とバーコードが付けられていて、取り違いのないように何度も確認します。
 ここで重要なのが、オシッコの量と色(?比重)です。まず量は、ミニマムで「90t」が必要です。これだけ出ないと、どうなるか。大変です。出るまで返してもらえません。継ぎ足しもありですが、ともかくは水を飲んででも出すしかありません。競技によっては、夜遅くに終わって汗をかく種目では朝方まで掛かることがあるそうです。「検体採取時刻15:58」。
 もうひとつ、提出する前に比重を調べます。「1.005以上」ということは、色が付いていればまず問題ないようですが、競技によっては水のようなオシッコもあり、薄すぎると検査ができません。今回は楽勝でクリアです。
 オシッコに問題がなければ、次は2個のガラス容器に取り分けます。ここでもうひとつ大事なことを教えてもらいました。絶対にオシッコから目を離さないことです。席の後ろを振り返らなければならない場面があったのですが、その時も容器に入ったオシッコをわざわざ片手に持って、オシッコともども後ろを向きました。そういうことなんですよ、先に書いた身を守るということは。日本だからいいかもしれませんが、外国なら・・・。
 取り分けたオシッコは、ロックが掛かる蓋をして容器に異常がないか逆さにして確認し、最後に発泡スチロールのケースに入れて封印をします。その間にもいろいろ説明を受けて、最近飲んだ薬や治療があればそれらも書類に書かれます。
 そして最後に確認の署名をして終わりです。検査は国内の機関で行われますが、オシッコと一緒に送られる書類には番号とバーコードだけで本人が特定できないようになっています。結果が出るまで約10日、問題があれば30日以内に通知されるようです。「検査終了時刻16:24」。
 どうですか。素敵でしょう。オシッコがすんなり出れば1時間のことですが、この日は友人との夕食の約束が6時にあったので、温泉に入れませんでした。とほほ。
 そこでこちらもご覧ください。実はこれらの一連の検査とは別に、アーチェリー競技として追加されている検査(禁止薬物)があります。それが「アルコール」です。そのため、最後のところで「呼気」の検査があります。これまたスピード違反と同じで検査器具に息を吹きかけるだけで終わりです。基準値は飲酒運転より高いのですが、ここから先は百薬の長としてのアルコール、善意の話として聞いてください。
 アルコール検査が競技前(例えば試合の朝)に行われることはありません。あるなら今回と同じ試合終了後です。ということは、実際問題としてここで呼気のアルコール濃度が基準値を超えるような場面があるとするなら、酒を呑みながら試合をするか、射てないくらいの二日酔いで試合を終えるかのどちらかです。(これはDCOが言ったのではありませんよ。)それを思えば、試合前日の飲酒に過度に神経質になる必要もなければ、無理に試合前日だからといって控えることもないでしょう。試合で大事なことはリラックスであり、普段と同じ生活リズムを守ることです。ドーピング検査のために、平常心やリズムを崩すことはお互い本意ではありません。特にアルコールに関してはそうです。使い方次第なのです。
 というわけで、前日もこの日もアーチェリー仲間と楽しくいっぱい飲んだ、呼気濃度0.00の最年長参加者でした。
 
(追記)
2年前の右肩は完治せず付き合っていますが、実はこの夏頃から押手の腕に痛みがあって、、、今回もよほど医者に行こうかと思いながらの参加でした。
 で、2年前は略式の「TUE」(治療目的使用に係わる除外措置- Abbreviated Therapeutic Use Exemption)というのを大会前に申請したのですが、今年1月にこの「略式」が廃止されています。これでも分かるように、禁止薬物の種類も含めアンチ・ドーピングのルールの変更が結構頻繁にあります。ぜひこちらのホームページも参考にされることを、おススメします。
 良かったといえば良かったのですが、甘く見るとダメですよ。笑っていても、スピード違反を見逃してくれるおまわりさんは、いませんから。。。

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