有弓休暇(43)

 と、そこはアメリカ人。翌日、展示会初日の開場8時半には600のブースと70の実射レーン、そして商談スペースが見事にオープンです。そして外はマイナス20度の寒さにもかかわらず、とんでもない数の業界関係者がひっきりなしに到着です。
 ところでいつも言うことですが、我われ日本のアーチャーには説明しないと分からない現実があります。それは例えば「アーチェリー」と聞くと、我われは今でこそコンパウンドもありですが、基本的にはリカーブの弓で、それも紙に書いた丸い的を射つアーチェリーを想像します。しかしそれは世界においては非常に限られたスポーツであることを理解しなければなりません。
 そこで今回ちょうどおもしろいデータを見つけました。このATAが2012年に調査(ARCHERY PARTICIPATION AMONG ADULT UNITED STATES RESIDENTS IN 2012)した、非常に信頼性の高い数字です。
 これによると、アメリカ人の人口2億3500万人の中で18歳以上でアーチェリーをしたことがあるか、あるいは弓によるハンティングを経験したことがある人口は全体の約「8%」、「1890万人」に上るというのです。そしてその1/3が女性です。
 ただし、その中でコンパウンドボウは、全体の75%を占め1400万人、クロスボウが29%、550万人。リカーブボウが260万人、14%です。これらは重複する部分もありますが、61%1150万人がコンパウンドボウだけを使うというのです。
 ところでボウハンティングやハンティングアーチェリーの逆の言葉がターゲットアーチェリーになるのですが、このターゲットアーチェリーという言葉には生きた獲物を射るのではないすべてのアーチェリーが含まれます。たとえば3Dやアニマルターゲットを射つことも、裏庭でコーラの缶を射つことも、バーチャルでスクリーンの獲物を射つことも含まれます。それは我われのように1つのルールに沿って、決められた距離から的に書かれた同じ大きさの輪を同じ本数射つ「競技」と考えると大きな間違いです。
 ちなみに日本の人口は約1億2000万人。アーチェリーの競技人口=18歳以下も含めた全ア連登録人口と考えて、多く見積もっても「1万2000人」です。アメリカの「0.001%」であり、ほぼ100%が紙に書いた丸い輪だけを射っています。アメリカでは日本の1000倍以上のアーチェリー人口があり、彼らの多くが滑車の付いた弓で、裏庭や私有地で年に数日あるいは1ヶ月近く、友人や家族とシューティングを楽しんでいるというのです。
 彼らはX10もACEも買いません。彼らが使うのは、先に剃刀の刃が付いた、最近はノックがLEDで光る矢です。彼らがそんな矢を1年に1ダース買うマーケットを想像してください。このATA Showとアメリカでのアーチェリーの意味が分かるはずです。
 我々が知っている「競技で使うリカーブボウ」をこの展示会で出展していたのはHoytとPSEだけでしょうか。Hoytが6本ほど、PSEが2本ブースの隅に並べていたでしょうか。それ以外に韓国のメーカーらしいブースが3店ほどありましたが、こんな我われの知る世界など世界最大の展示会では誰も見向きもしません。われわれの知るアーチェリーは世界の中のスキマ産業なのです。
 ところでデータ上もリカーブボウの倍以上の人口を持つ「クロスボウ」ですが、確かに今回やけに目を引きました。すでに庭でリスを射つアーチャーより凄い勢いで、もっと楽して熊を射とうというハンターが増えているのです。
 すでにクロスボウに滑車が付いているのは当たり前で、ライフルの照準器やコンパウンドで最新といわれるストリングストッパーやダンパー、割れないためのアルミノックなど、リカーブやコンパウンドより進んだ弓が出てきています。
 楽して弓を引こうとコンパウンドを発明したアメリカ人が、次にはもっと楽して獲物を仕留めようと虎視眈々と狙っているのです。
 ということで、新しい友達のことはまたの機会に書きますが、、、現地2日、極寒のインディアナポリスからデトロイトを経ての帰国。飛行機の氷を落とすのに2時間以上掛かって、お陰で成田の最終乗り継ぎに間に合わず。土曜日成田1泊のおかげで日曜日のインドアの試合に出られませんでした。くそっ。

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