どうしてなのかな、10インチのサイドロッド。

 ちょっと本屋さんで立ち読みしていたのですが、、、、「グラフィックサイエンスマガジン Newton 2007年12月号」。この雑誌の表2のところには、「NGK Science Site」という、広告なんですが高校の理科の授業でやるようなおもしろい実験(?)が毎号載っています。で、今回は「慣性モーメント」でした。面白いので、ちょっと紹介します。
 
 
 同じ大きさの円盤に、同じ数のクリップを、片方は回転軸の近くに、もう一方は外周に取りつけて坂道におくと、一方は速く、もう一方はゆっくりと回転して坂道をころがります。大きさも重さも同じなのに、ちょっと不思議ですね。
 
 クルクルと目がまわりそうに回転するフィギュアスケートのスピン。両手をちぢめると回転が速くなり、広げると遅くなりますね。これは両手の位置によって慣性モーメントが小さくなったり、大きくなったりしているためです。慣性モーメントは回転する物体から回転軸までの距離を2乗して、それに物体の質量をかけた量であらわされますから、両手をちぢめると回転軸からの距離が短くなって小さくなり、広げれば大きくなるのです。回転する物体は角運動量(=角速度〈回転速度〉×慣性モーメント)を保存しようとするので、慣性モーメントが小さくなると回転速度が大きくなるのです。慣性モーメントは「回転のしにくさ」をあらわしていて、慣性モーメントの大きいものほど、回転させたり、回転をとめたりするのに大きな力が必要になります。クリップを外周に取りつけた円盤は、慣性モーメントが大きいためにゆっくり回転しますが、いったん回転をしはじめるととまりにくく、上り坂をもう一方の円盤よりも遠くまで上るのです。

 

□ レールの端にクリップの位置の違う円盤(A)と(B)を置き、同時に手をはなします。

□ (A)のほうが(B)より速く回転しますが、上り坂は(B)のほうが(A)よりも遠くまで上ります。

 ということで、アーチェリーの話です。ここのスタビライザーのページだけでなく、いろいろなところに書いているのですが、、、、、スタビライザーの「コントロール性」の問題です。
 この実験でも分かるように、慣性モーメントは重さ×長さの2乗で効いてきます。野球のバットでも、持つ側を変えるだけで、肩に掛かる負担(負荷)は大きく違います。肩はきつくてもバットのグリップを握る方がバットは動かし難い(回転し難い)のは分かります。プロはいいのでしょうが、凡人は振り遅れるし、パワーが乗りません。素人が振り抜きたければ、タイミングを合わせたければ、短く持つなり軽いバットを使います。どうやって当てるか、使いこなすかというコントロール性の問題です。ボールに当たらなければ、打つもなにもありません。
 そこで詳細は他のページに任すとして、、、、ネコも杓子も、女も子供も、ヘタクソも初心者も「10インチ」のサイドロッドです。いつからこんなとんでもない状況になったのでしょう、してしまったのでしょう。責任の半分以上はメーカーであり、ショップです。ネコも杓子も、女も子供も、ヘタクソも「10インチ」を薦めればいいのです。在庫もいらないし、簡単な話です。野球もテニスも、ゴルフもボードも、みんな同じ長さと重さの道具を使うようなものです。それもプロと同じ道具を、素人や初心者に使わすのです。
 多分、1990年代以降でしょう、こんなとんでもない状況を作ってしまったのは。その間にどれだけ日本人や少年少女の体格や運動能力が向上したというのですか。アルミアローで比較はできないにしても、全長28インチのセンタースタビライザーと8インチのサイドロッドで今の1350点ぐらいは楽に越えていたのです。女性なら全長26インチでサイドは7インチもあれば、十分でした。
 今、道具もルールも変わりました。しかし、サイトピンを完璧に10点に止められるアーチャーは一握りです。ほとんど多くのアーチャーは、緊張の中でゴールドからはみ出る震えるサイトピンを10点に戻そうとしているのです。それも肩に掛かる大きな疲労のなかでです。それに試合は無風とは限りません。
 シューティングマシンのような体力と技術を持つのでないのなら、自分に合った長さや重さの道具を使うべきです。道具は使うもので、道具に使われていては当たりません。道具が当ててくれるのでは決してありません。それは長さや重さだけではなく、値段もそうです。高いものやチャンピオンが使っている物が、自分に良い結果を与えてくれると思うのは、初心者だけでなく中級者においてもの錯覚です。
 いいかげんチャンピオンでないなら、「10インチ」のサイドロッドはやめませんか?! できれば全長で30インチを超えるセンタースタビライザーも止めてください。お願いします。はるかにピンをゴールドに置き易いし、当たるようになりますよ。風や雨や、そして試合においても、オールラウンドに当たります。

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