特 許

 近年、コンピュータソフトやデザイン、音楽、小説などの分野で「知的所有権」ということがよく言われるようになりました。これは人間の幅広い知的創造活動について、その創作者に権利保護を与えるもので、その中にはアーチェリーの弓具発明などに関係する「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」も含み、これらを称して「工業所有権」と呼びます。
 
特許権
 特許法で保護されます。
  ・具体例: 物または方法の技術面のアイデアのうち高度なもの実用新案と比べて長ライフサイクルのもの(ハードと結びついたコンピュータプログラム、植物、動物、微生物なども含む)
  ・保護期間: 出願の日から20年
(医薬品と農薬については5年を限度として延長可能)
 
実用新案権
 実用新案法で保護されます。
  ・具体例: 物品の形状、構造などの技術面のアイデアで早期実施、短ライフサイクルのもの特許に比べて技術が高度でなくても良い方法のアイデアは対象外
  ・保護期間: 出願の日から6年
 
意匠権
 意匠法で保護されます。
  ・具体例: 物品(物品の部分を含む)の形状、模様、色彩などの物の外観としてのデザイン単なる絵や図柄は対象外
  ・保護期間: 設定の登録の日から15年
 
商標権
 商標法で保護されます。
  ・具体例: 商品やサービスについて自他の識別力を有する文字、図形、記号、立体的形状、(色彩)
  ・保護期間: 設定の登録の日から10年(継続使用による更新が可能)
 
 これらの法律によって創作者の権利が次のような行為から保護されます。

特許法 第百一条(侵害とみなす行為)
 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ使用す
る物を生産し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をす
る行為
二 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その発明の実施にのみ使用
する物を生産し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をす
る行為

 
特許庁で登録される知的財産権








種 別 権 利 期 間 所 管
特許権 出願から20年 経済産業省
特許庁
実用新案権 出願から6年
意匠権 登録から15年
商標権 登録から10年
(更新登録可能)
  半導体回路配置利用権 登録から10年 経済産業省
不正競争の防止  
著作権 著作者の死亡から50年 文部科学省・文化庁
植物新品種の保護 登録から20年
樹木は25年
農林水産省
 
 概略はこういうことですが、「特許庁ホームページ」に詳しく、分り易く書かれています。そこで、このページを参考に話を進めていきます。ホームページ左側の「INDEX」をご覧ください。
 

 中ほどに、「特許電子図書館(IPDL)」とありますが、近年このサービスが始まり、我々も簡単に工業所有権の中身を見ることができるようになりました。(メンテナス実施により休止の時があります。つながらない時は、「特許庁ホームページ」で確認してください。)
 そこでここの一番上の「特許・実用検索へ」のドロップダウンメニューの一番上、「特許・実用新案広報DB」をOKしてください。
 そして、
・ 文献種別 の1. のところに [ A ] を、
・ その文献番号のところに [ H10-26496 ] と入力して、
・ 左下の [ 文献番号照会 ] ボタンをクリックしてみてください。
・ 文献番号リスト [ 特開平10-026496 ] が表示されますから、
・ 後はその番号をクリックして見てください。
 これが平成8(1996)年7月9日、ヤマハ(株)が出願して認められた「鍛造ハンドル フォージド」の製造方法に関する特許です。特許の権利期間は出願から20年ですから、2016年までこのハンドルの製法は保護されます。また、同時に海外への出願もなされているので、外国においてもその法律によって保護されます。
 
 次は「意匠検索へ」の「意匠広報DB」をOKしてください。
・ 1. のところの文献種別に[ S ]、そして 文献番号に[ 977389 ] と入力して、
・ 左下の [ 文献番号照会 ] をクリックしてください。
・ 後は特許検索と同様に指示に従ってください。
 これは平成7(1995)年に管理人が出願し、平成9(1997)年1月10日に登録された「パラボリック スタビライザー」と呼ばれる、複数ロッドを束ね合わせかつ中央部分が膨らんだ形状の安定装置に関する意匠登録です。意匠権は設定の登録により発生するため、手続きの更新によって2012年までこの権利は日本国内においては保護されます。
 
 このように工業所有権は法律によって保護されているわけですが、これらの権利を取得するのにはいくらくらいかかるのか。こちらご覧ください。これに弁理士への費用を含めると決して安い金額ではありません。まして大企業でもなければ、アーチェリーで金儲けをしようというのは大きな間違いでしょう。
 例えば弁理士にお願いする場合、上記の出願番号を単純に検索依頼するだけで調査手数料¥10000 + 調査実費¥5000 + 消費税¥750 が請求されます。
 
 次はこちらを見てください。「特許電子図書館」の二番目、「提供サービス一覧」です。そして一番上の「初心者向け簡易検索(特許・実用新案)」をクリックしてください。
・ ワード検索 に [ 洋弓 ] と入力して、
・ そのまま下の [ 検索実行 ] をクリックしてください。
  (ADSLでもちょっと時間がかかります。ご辛抱を。)
・ 検索結果 出ますから [ 一覧表示 ] を見てください。
 
 先ほどの[ 特開平10-026496(洋弓用ハンドルの製法) ]も上の方にあります。その下の[ 特開平10-026495(洋弓) ]も見てください。αEXから採用されたポンド調整機構のためのハンドル側の特許です。そこから6つ下の[ 特開平07-294192(洋弓) ]はパワーリカーブです。
 商品の値段に反映されると言ってしまえばそれまでですが、権利を守るのか一攫千金なのかは自己満足なのかは別にして、特許をとるのは大変なことです。
 次は ・ ワード検索 に [ アーチェリー ] と入力してみてください。取らなくてもいいようなものもありますが、いろいろあるもんでしょう。どう思いますか。
 
 とは言っても、方法はいろいろあるものです。例えば、先の「パラボリック スタビライザー」は特許でも実用新案でも、そして意匠登録でも取得は可能なのです。しかしあえて「意匠登録」としたのには理由があります。特許では費用が掛かり過ぎるのと、その内容が限定されます。また、実用新案では、権利が保護される期間が出願から6年と短くなります。それに対して、意匠で登録すれば比較的安い費用で15年間権利が保護されるのと同時に、形状で保護されているため、素材がカーボンでもアルミニュームでも、無垢でもチューブでも、本数が何本であっても、ともかくは中央部分が膨らんだスタビライザーにはこの権利を行使できるのです。バイター製のスタビライザーはこれより後に登場したのですが、もし中央部分が膨らんだものにマイナーチェンジされれば、日本国内への輸入・販売・展示 等一切が禁止されるわけです。

 アーチェリーに関してのアイデアを考えてみませんか? 儲けるためではなく、もっと楽してアーチェリーを当てるために。そして世界で勝つためにです。そう言えば、もう実用新案は切れましたが、ヤマハの弓のセンタースタビライザーが3°下方に向いているのは、長距離でのエイミングの妨げにならないための配慮であり、西沢の弓がこれを真似た時はヤマハが権利を行使したということがありました。それ以来、海外の弓のスタビライザーは水平であり、エイミングし難いといえばそうなのです。
 
 では最後。「提供サービス一覧」の上から二番の「初心者向け簡易検索(商標)」をクリックしてください。
・ ワード検索に[ YAMAHA ] と入力して、[ 検索実行 ] をクリックしてください。そして[ 一覧表示 ]。
 どうですか? では、同じように[ YAHAMA ] (ヤハマ)と検索してみてください。なんだと思いますか。すでに権利は抹消されていますが、ヤマハが取ったものです。今のコピー商品同様に、一見それと見間違う製品を出してきた時に対抗するため、このようなものすべてを登録しているのです。しかしアーチェリーしかりで、先進国以外には通用しないのですが。。。。 (-_-;)
 コンパウンドボウの世界が特にそうですが、基本特許が切れたからといっても周辺特許がほとんど押さえられてます。弁理士アーチャーでなくてもかまいませんから、情報やアイデア等があれば Kam’sボード にでもお書きください!! 個人で作って、個人で楽しむには何ら問題はありませんから。

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