「VAP」と「ACE」

■VAPのポイントをホットメルトで固定する方法
 
 VAPのポイントの接着には「粘度のある瞬間接着剤」を薦めています。その理由は、簡単、確実に固定ができるからです。逆に従来の「ホットメルト」(松ヤニ系の接着剤)では、接着力が弱いということがあるのですが、、、瞬間接着剤だと完璧に固定されるために、ポイントの重量確認などによる交換のための取り外しが難しいという問題があります。
 そこでこのことについて、VAPを使用する多くの皆さんから情報をいただいています。それはVAPであっても、「ホットメルト」でしっかりと固定でき、何ら問題なく使用しているというのです。
 まずVAPがホットメルトではポイントをしっかり固定できないという理由ですが、これはVAPに限らず、EASTON社のFatboyやCarbonOneも同じ状況です。なぜなら、これらのシャフトが「オールカーボンシャフト」と呼ばれる構造だからです。それに対してホットメルトが使えるのは、アルミシャフトやアルミコアシャフトと呼ばれる、ポイントの接する部分がアルミニュームのシャフトです。
 オールカーボンシャフトはその名前のとおりすべてがカーボン(CFRP)でできています。そのためポイントが接する部分がカーボンになります。そして製造の過程において、シャフトを金型から取り出す時のために「離型剤」を金型とシャフトの間に塗布しなければなりません。これがシャフト内部に残るために、ホットメルトの接着強度が落ちることが原因なのです。
 そこでこれらのオールカーボンシャフトでもホットメルトを使われている方の共通点は、少し手間ではあってもアロー製作時にカーボンシャフト内部(ポイントの軸が接する部分)の洗浄をしっかり行っていることです。これによってシャフト内部に残っている離型剤を取り除くことで、ホットメルトの接着強度が担保されるわけです。
 では、どのように洗浄するのか。例えばVX-23やV-Force、Fatboyなどの大口径シャフトやVAPのように細くないシャフトサイズにおいては、このような「プレップツール」などと呼ばれる洗浄棒が市販されています。とはいえ、洗浄といってもこの先端はちょうど金ダワシのような金属でできていて、洗浄より研磨や荒しといった方が近いかもしれません。あまり擦りすぎると研磨剤だけでなく、カーボン表面を傷めかねないので注意してください。ただしこのツールの説明書には、サイズ0.242インチ以上の穴の大きさとあるので、VAPやCarbonOneなどの細いシャフトには使えません。
 そこで皆さんは、例えば綿棒などを少しほぐして、先端にアルコール(決してシンナーなどの有機溶剤は使用しないでください)や中性洗剤を付けて、丁寧にシャフト内部を擦るとのことです。洗剤の場合は、それをきれいに洗い流すことも忘れないようにしてください。
 ともかくは、このように離型剤を落とすことで、オールカーボンシャフトであっても、ホットメルトの使用が可能なようです。また、アルミコアシャフトであっても、同様に洗浄した方がホットメルトの接着力は向上します。
 
■VAPにBeiterインノックを使う時の注意
 
 「VAP」とEASTON「ACE」はシャフトの寸法がほぼ同じのため、カタログ上でもどちらのノックも(例えばVAPに付属のBohning「Fノック」とACEに使われるEASTON「Gノック」やBeiter「インノック」)互換性があり、それぞれに共通に使用できることになっています。
 そこでFノックをACEに使ったり、GノックをVAPに使用することはまったく問題はないのですが、BeiterノックをVAPに取り付ける際に少しキツイ(ノックの軸に対してVAPの穴が小さいのではないか)という指摘をいただきます。
 穴の大きさについては後で詳しく述べますが、FノックもGノックも素材的に少し柔らかいのに対して、Beiterノックは硬い素材(樹脂)を使用しています。そして軸の形状がFノックやGノックが小さい出っ張りを持たせ、挿入時にこれを潰すことによって固定されるのに対し、Beiterノックは軸全体での固定を考えています。そのため、Beiterノックの軸は挿入時に逃げの部分がないため、キツイ状態が生まれるようです。
 もし、装着時にキツさを感じたなら無理をせず、お手数ですがノックの軸部分を「サンドペーパー」で少し擦って(細くして)使用するよう、事前に調整してください。
 
■ACEのポイントがVAPに使えない理由
 
 「VAP」と「ACE」はシャフトの寸法(外径と内径)がほぼ同じと書きました。実際にはスパイン(矢の硬さ)によって、特に外径は微妙に異なりますが、この「ほぼ」が曲者です。
 例えばノックを共通に使えるなら、ポイントやノックピンも互換性があるはずです。しかしノックが樹脂製なのに対してポイントはステンレスで、ノックピンはアルミニュームとどちらも金属製です。そのため樹脂のように変形して逃げてはくれません。それだけではありません。製造時の「公差」と「精度」の問題も大きく影響します。
 ポイントに互換性があるかどうかは、まずポイントの軸部分がシャフトの穴(内径)に入るか入らないかが重要です。入ってもゴソゴソやキチキチであっては困るのですが、それはさて置きまずは入らなければ話は始まりません。
 VAPとACEのシャフトの穴はほぼ同じですが、ほんの少しVAPの方が小さく(ACEの方が大きく)なっています。ここでいう「ほんの」は「0.01ミリから0.02ミリ」の範囲で、この100分の1ミリから100分の2ミリというのは、これらの製品にとっては誤差や公差のバラツキ範囲内ともいえる数値です。
 そこで仮に(正確な数値を示したくないので。これは例えばの話です。)。VAPのポイントは金属加工技術では世界に誇れる、新潟県燕市の専門の工場で作っています。そしてこの軸部分は外径「4.20ミリ」を狙って製造し、公差もプラスに出ないようにして、検査の結果「4.21ミリ」以下を製品としています。この寸法ならVAPにもACEにも問題なく共通に挿入して使うことができます。
 ここで注意して欲しいのは、4.20ミリの穴に対して4.20ミリの軸を作るとピッタリではあるのですが、これではシャフトと軸の間に接着剤が入る余地がありません。接着剤が効かないということです。また、温度変化による膨張や収縮の問題も考慮する必要があります。そのため実際には、ここに少しの空間を取る必要があります。VAPポイントではそれに加えて、「グルーポケット」と称する接着剤溜りの形状も設けて、接着剤でしっかりと固定できるように配慮しています。
 ではその逆はというと。ここにランダムに入手したACE-100グレイン純正ポイントが1パック(12本)あります。これを測定してみたところ、
軸部分の外径が、
     ・ 4.23〜4.24ミリ  9本
     ・ 4.24〜4.25ミリ  3本
 という結果になりました。そしてこれをVAPのシャフトに挿入しようとすると、入りませんでした。
 4.22ミリより太い軸は、VAPには使用できません。ところが他のACEのパックではVAPに挿入できるポイントもあるのです。しかしそれらすべてはACEには挿入でき、普通に使用することができます。
 この現実を精度の悪さというのか、品質のバラツキというのか、アメリカ製だからというのか、こんなもんでしょうというのか、EASTONはVAPとの互換なんか考えていない、というのかはそれぞれですが、VAPポイントはVAPとACEのシャフトに共通して使用できますが、ACEのポイントをVAPのシャフトには使用することはできません。ご了承ください。

追記 :

 オールカーボンシャフトの内部洗浄に「綿棒をほぐして」と記したところ、「赤ちゃん用の綿棒」があるとのアドバイスをいただきました。
確かにこれならそのままシャフトの穴に入れることができて、最適です。よろしければ、どうぞ!

 ありがとうございました。

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