有弓休暇(10)

 昔ヤマハにいた時、まわりにはアーチェリー以外のスキーやテニスの連中が当然のようにいました。そんな彼らとの会話の中で「シェア」(使用率)の話がありました。これは選手対策でも営業でも同じことなのですが、スキーもテニスも同じことを言うのです。同じ組織、それがひとつのサークルでもクラブでも、あるいは連盟や協会でもいいのですが、そんな中で例えばヤマハのスキー板やラケットを使う選手が「60%を超えればそれは100%と一緒だぜ!」。もうそこまでいけばそれ以上の売り込みの必要もなければ、してもそんなに効果は期待できないという経験則でありノウハウでした。
 ちょうどそのころヤマハのアーチェリーも世界選手権ではシェアが60%前後まで達していたのですが、どのスポーツの世界(スポーツには限らないのですが)でも10人いれば1人や2人は人と同じものを使うのはイヤという奴や、珍しいものを使いたい奴、あいつが使っているからイヤという変わった奴がいるものです。しかし、考えてみればこれこそが普通の世界であり、至極正常であり、健全なあり方なのです。逆に100%である方が異常であり、不健全であり、何かを疑わなければならない状況なのです。
 それはともかくとして、あなたは車を運転しますか? 特にドライブが好きなわけでもないのですが、練習場の関係で車は必需品です。年間25,000キロは乗ります。そこで、、、車の話です。アーチェリーショップを経営する前は、全国でもトップクラスの車のセールスマンがいました。彼が昔よく言っていたのは、車を売る時にはまず免許を取って最初に車を買おうという人には「カローラ」を売る。そして数年したら「マークU」に買い替えてもらう。そして最後に「クラウン」を薦めるというのです。ここに有能なセールスマンの極意と商売の基本があるわけです。ところが残念なことに今の彼は、免許取立ての初心者に「クラウン」も飛び越して「セルシオ」を売りつけているのです。それも最高のオプションを付けてです。技術や用途、目的、そして分相応などといった言葉や良識はないのです。
 この最新の極意の理由を彼は、今の大学生は最初の一台を買えばそれがカローラでもクラウンでも買ってしまえば最後もう買い替えないから、最初にいいものを買うのが良い、金のない学生はローンで買ってもその方が徳だからと言います。そしていくら丁寧に説明や指導をしても、結局は安い所で買うと嘆きながら、個人の能力や技能、そして事情はまったく無視して、教習所通いの学生にセルシオをとっとと手配するのです。早い者勝ち、売った者勝ちの理論。結果、まわりは同じ高級車だらけです。最近は彼に限ったことではないのですが、そんな有能なセールスマンたちが語るセールストークはというと、実績、性能、ブランドくらいでしょうか。燃費やコストパフォーマンス、デザインや品質の話はなく、ましてや技術的なことを聞くと嫌われたりもします。確かに高級車は儲けが大きいだけでなく、ぶつけても壊れても、走らなかったとしても商品は悪くないのです。すべてドライバーの責任であり、運転技術の責任なのです。
 しかし本当にそうなのでしょうか。車を買うのは、スピードを競う連中ばかりではありません。のんびりドライブを楽しみたい人や足代わりの人、趣味の人、と目的や用途はいろいろあるはずです。近所のスーパーやコンビニに行くには、セルシオは大きすぎます。初心者や女性には小回りが利く燃費のいい車が使い易いだけでなく、運転技術を身に付けたり向上させるには効果的で経済的です。もしそれでもF1レースに出るというなら、フェラーリにはかないません。しかし普通免許のドライバーにとっては、フェラーリ以上に正確に速く走れる車があるはずです。その前にフェラーリを扱うこと自体できません。サイズを求める人、燃費が大事な人、値段を考える人、デザインで選ぶ人・・・等など、突然のF1出場はないのです。そう考えれば、普通免許の優良ドライバーにとっては「使い勝手」こそが性能であり、上達のための道具です。それに価格相応の車でない高級車もあるのです。

 もうひとり、別の有能なセールスマンがいます。彼が公言してはばからない言葉に「安いと売れないんだよ」、という台詞です。彼のセールストークは「高級車=高い車」=「安い車=良くない車」の図式です。ところがそんな彼の売る高級車がよく故障するのです。交換しても交換しても使えないという状況に陥る高級(額)車なのです。先日もリコールしたにもかかわらず、まだ壊れるのです。三菱ではありません。
 また、それとは別に今日も東の方でレース中に突然クラッシュです。先日も大事な試合で途中棄権がありましたが、同じ車が我がクラブでは昨年から3台潰れています。カタチあるものいつかは壊れます。しかしこの涼しい時期にオーバーヒートや焼付きは、もっと根本的なところに原因があります。メーカーは認めませんが。どんな高性能も、耐久性と品質の上に成り立たなければ意味がないことを理解するべきです。使えてこその性能と思うのですが。。。。

 ところでそろそろマイカーも買い替えの時期なのですが、最近本当に解らないことがあります。アメ車なら多少思い入れがある車種もあるのですが、

 「あなたは韓国製の乗用車を買いますか??!」 。

 
 余談ですが。車は趣味なので贅沢品と言われてもいいのですが、アーチェリーの「矢」は間違いなく絶対「消耗品」です。
 消耗品と消耗品でないモノを値段で区別する人もいるでしょう。高価だから消耗品でないと考えがちですが、少なくとも矢はタイヤやオイルと同じように消耗品です。使えば傷むし、劣化もするし、最初のままではないということ、ある程度使ったら新しいのに交換するべきモノです。高価な曲がった、剥離した、真っ直ぐ飛ばない矢を混ぜて使うより、安くても均一な矢を使う方が良いに決まっているのです。車と違ってある頻度で買い替えができないようでは、考えものです。ところがここでも、早い者勝ち、売った者勝ちの理論の結果、猫も杓子も初心者までもが世界チャンピオンと同じ矢です。それも車並みの値段で。
 地面を射っても気にせず、気軽にのびのび練習しませんか、たまのお休み。。。。 タイヤの減りを気にして運転は上手にならないでしょう。オイルが汚れていては、車も走らないでしょう。。。。

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