有弓休暇(22)

 京の町屋を改装した、ちょっと有名シェフのイタメシ屋にお祝い食事会に行ってきました。今回は6月に北海道であった、全日本フィールドのチャンピオン林 享美と二十歳のお誕生日会も兼ねてです。
 彼女とは高校の時から縁があったのですが、ちょうど先日は埼玉のインターハイを見に行ったり、最近いろいろな方とお話しする機会が多く思うことがいろいろあったりで、ゆっくり話したかったこともあり楽しい時間をもてました。
 林は高校2年の時、高校選抜で優勝しています。ところが、その後大学に入ってからはとんでもなく当たらない時期がこの春まで続くのです。その当たらなさは、彼女の実績とプライドからすればハンパではなかったはずです。そんな彼女をずっと見てきて、当然当たらない原因は中級者のそれとは違います。何かを直せば当たりだすという特効薬がある類のものではありません。スランプとも違います。これは本人が気付き、ひらめくしか方法はないのです。一歩外に立てば、それまでのささやかさやくだらなさは一目瞭然なのですが、中にいる時には何をやっても何を言われても効果はないのです。普通はそこでやめてしまう連中も多いのですが、よく彼女は辛抱したと思います。
 それにしてもいつも思うことですが、アーチェリーを当てようとする時それが全日本くらいなら何とかなるのですが、「世界」となるとそうはいきません。いろいろ必要不可欠なものがいるようになります。そこには縁や幸運といった簡単に説明のつかないものまで必要になる時があります。しかしそれはさて置き、彼女の時にも思ったのですが本当にうまくなる時にはまずは「素質」のようなものが必要になります。これは美しいフォームや正しい射ち方を習った先にあるもので、アテカン(当て感)も含めた持って生まれた才能です。精神的にも身体的にもアーチェリーに向いている何かが必要です。
 では、それがあって一生懸命正しい練習を積み重ねれば世界で勝てるかというと、そうはいきません。素質の次には「資質」のようなものが必要になります。視力やパワー、若さもそうですが、ここでは体格なり大きさでしょうか。アーチェリーは紛れもなくスポーツです。同じ技術、同じ精神を持つなら、パワーの勝るものが勝ちます。(勝たなければなりません。) 25インチより28インチの矢を引ける方がパワーで勝つのです。しかしこのことが普通の人には分かりづらい部分でもあります。
 例えば林の場合、「64インチ44ポンド」のリムを使っています。ところがこれを多くの普通の人は、「凄いよねー」「頑張るねー」という表現で評価します。人によっては「あんなに小柄なのに」「あんなに可愛いのに」といった形容まで付け加えます。ところが本当はなにも凄くないのです。15○センチの身長の彼女にとっての44ポンドは、16○センチの36ポンドとなんら変らないのです。大切なのはパワーであり、パワーは表示ではなく実質ポンドで表されるものです。ところが分かっていても勘違いをしてしまうのです。
 では、素質もあり努力もし、資質もありパワーもあれば、それで勝てるかというと、まだ足りません。アーチェリーが当たるには「性格も悪く」なければなりません。これはアーチェリーに限らずすべての競技にいえることでしょうが、他人と勝負して相手を打ち負かすのです。表現が難しいのですが、逆にいえば優しすぎては素質がありません。
 そう考えてくると、まわりを見渡せば全日本くらいならこれらの3拍子が揃わなくても、どれかが抜きんでていれば勝てるのです。ところが世界はそうはいきません。3拍子プラスアルファまでもが必要です。
 それにしても彼女は「いい子」すぎます。優しすぎるのです。もう少し性格悪くなろうぜ。教えてあげるから! そうすればこれからもっと上手くなるから。。。

                        (本人の了承を得て、写真使ってます。 (^_^)v )
 ところで世間は北京オリンピックですが、3拍子もアドバンテージもないからそんな結果ですが、、、、好きな映画のひとつに、1924年パリオリンピックを舞台にしたアカデミー賞作品「炎のランナー」(Chariots of Fire:1981年)があります。ふと思って、20数年ぶりにLD(レーザーディスク)出してきて、観ました。ヴァンゲリスの音楽も IVY の基本になる服装もいいし、貴族のスポーツもいいし、のどかで平和な歴然と存在した「アマチュア」の時代が懐かしいです。ぜひこの機会にDVD観てください。その中の台詞で、マサビーニがエーブラムスにコーチを依頼された時、「これという娘が現れて、結婚を申し込まれたら?」「花婿と同じで、申し込みはコーチがするものだ。」と言う場面があります。そう、いいですねぇ。選手がコーチを選ぶように、コーチにも選手を選ぶ権利はあるのですよ。勘違いのないように。。。
 そんなこんなで、楽しい食事会でした。また勝って、メシ行こうぜ!
 
   第37回全日本フィールドアーチェリー選手権大会 リカーブ 女子 個人
      日 時 : 2008年6月21−22日 
      場 所 : 北海道 芽室町 新嵐山スカイパーク特設射場 

  優 勝   林  享美  立命館大学 47 
  準優勝  平野 順子  京都府立大学 37 
  3 位   岩崎 香里  日本和装ホールディングス 45 


      1 山下 朋子  東海通信工(株)          146 155 301 
      2 榊原 明美  衣浦ポートサービス(株)      136 151 287 
      3 岩崎 香里  日本和装ホールディングス(株)  133 146 279 
      4 西川 祐未  同志社大学             139 137 276 
      5 林  享美  立命館大学              138 135 273 
      6 長田 眞珠  名張市役所             126 144 270 
      7 平野 順子  京都府立大学            131 138 269 
      8 伊藤 浩子  AJS(株)               134 129 263 
      9 廣木 かよ子 東京都アーチェリー協会      126 134 260 
     10 上野 百百子 京都府アーチェリー連盟      132 125 257 
     11 笠原 智穂  佐伯高等学校            128 127 255 
     12 澤田 純子  神奈川県アーチェリー協会     118 134 252 
     13 池澤 かおり (医)菜の花会            125 125 250 
     14 大西  純  鰍ゥんぽ生命保険          128 114 242 
     15 山口 美帆  東愛宕中学校講師         137 103 240 
     16 石津 晶美  佐伯高等学校            123 114 237 

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