ノウハウ(2) ストリング

 ノッキングポイントですが、何で作っていますか。糸を巻いてなんでしょうが。昔はみんな木綿糸で巻いていたものですが、最近は個人的には「デンタルフロス」が気に入ってます。歯の間をキレイにするあれです。その「ノンワックス」(ワックスが付いていない)タイプがいいです。ケース入りで糸切りも付いて持ち運びにいいのですが、ともかく切れない強い細い白い糸だというのが一番です。ワックスが付いた製品が多いのですが、接着に「瞬間接着剤」(アロンアルフアなど)を使うなら、ワックスがない方がしっかり接着剤が浸み込んでくれます。
 数ヶ月前からノッキングポイントの下側にだけ、「ノックセット」と呼ぶコンパウンドなどでは普通に使う金属のリング(専用のプライヤーで締めてストリングを挟むリングです)を使っています。一番小さい「スカイブルー」色の製品を使っていますが、これでも大きいことは大きいです。
 理由はノッキングポイントを作るのがヘタクソなんでしょう。1週間ほど射っているとノッキングポイントが動いてくるのです。普通でもどちらかに押し当てた状態でノッキングポイントはあるのですが、作り方がヘタなのに加えて最近のサービング糸が良くなったのもあります。瞬間接着剤を最後に垂らしますが、デンタルフロスは吸ってくれるのですがサービング側が接着剤を吸いにくく、よく滑る素材なので動いてくるのです。
 ノックセットのいいところは、付ける時に思う位置にいっぺんに確実に固定できることと、ずれてこないことではあるのですが、欠点はタブの皮の表面を傷つけます。一長一短、動かないように作れるなら、普通の糸と普通の接着剤で十分です。
 ストリングは「原糸」が本来であって、「サービング」はサービング糸という別の糸を原糸に巻き付けることで原糸を保護する補助的な部分です。しかし引き手側で唯一アーチャーと接する部分でもあります。
 サービング糸も最近はいい素材ができて、切れないのはもちろん太さもいろいろあります。ストリング自体を自作するのであれば、先のノッキングポイントの硬さもそうですが、原糸の太さ+サービングの太さ=自分の使うノックにちょうど良いノッキングポイントの硬さ、になるように「デニール」と呼ばれる糸の太さを選んで作ったりもします。あるいはサービングの巻く強さで調整したり、ノッキングポイント部分のサービングの下にサービング糸を原糸と重ねて入れたりして太さを調整したりもします。
 原糸が切れない、傷めないためにサービングを巻くわけですが、サービングが切れても困ります。最近減りましたが、昔「モノフィラメント」と呼ぶ、ちょうど釣りのテグスのようなナイロンの1本モノの糸をよく使いました。編んでいないので雨でも水を含まず、表面がツルツルだからリリースがスムーズなわけです。ところがこれもいいところばかりではありません。この種の素材は最近の袋編みにしたサービング糸も同じですが、切れる時に予兆なくいっぺんに切れてしまいます。例えばまともにアームガードに当たったりした時です。
 それに比べて、良くないことのように思われがちですが、毛羽立ってくる素材はサービング糸、原糸に限らずそれが傷んできた前兆であり、交換なり補修の目安になってくれます。
 40数年、同じサーバー(サービングを巻く道具)を使っています。巻く硬さは慣れと経験則です。最近はストリングを自作するアーチャーが少なくなりました。原糸が切れなくなったので、自作して安くで作らなくても高い市販品のストリングでも1年以上持つからでしょうか。それでも、センターサービングの太さを調整したり、毛羽立ってきたのを巻き直すくらいはしてもいいでしょう。
 市販品にもいろいろありますが、センターサービングはどこからどこまで巻けばいいのか。センターサービングは上から下へと巻いて行きますが、出発点は使っている「Tゲージ」の掛かっている部分と思えばいいでしょう。ゲージの金属クリップが直接原糸に当たると原糸が傷みます。またそれだとゲージの取り付けが傾くことになります。金属クリップの少し上が起点です。それ以上長い必要はなく、それ以上だとサービングが唇に掛かって違和感ができます。アンカー時にちょうどいい位置がここです。
 では下の終点はどこまでか。これは上の位置をゲージを当てて起点に印を付けます。そこでセンターサービングが巻かれていないストリングを一旦弓から外します。そしてそのストリングを半分に折ってループとループを合わせます。これがストリングの長さに対する真ん中です。あとは起点から真ん中までの長さを真ん中から下まで合わせて印を付けます。それが終点です。ストリングの真ん中から上下同じ長さにセンターサービングは巻くのがいいでしょう。
 Tゲージも1971年かに水野さんがバイメタルを立ち上げた時の最初の商品で、もらったのをまだ使っています。今はまずありませんが、金属クリップ部分が「リベット」ではなく「ネジ式」で取り外しができるのです。唯一壊れるのがここですが、広がったりしても直せます。こちらも40年以上の愛用の一品です。

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