視力の衰えと補正−その12年後

 前回、この話を書いた1999年には、感覚的な違和感はあっても見えていました。昨年、2010年9月17日までは見えていました。ところが、翌日つま恋カップの予選から、ほんとに見えなくなりました。前日呑み過ぎたからでは決してないのですが、目医者に言わせれば、そんなことも含め何らかの刺激(きっかけ)によって視力が低下することはあるとのことでした。
 40数年、何不自由なく完璧にゴールドとサイトピンが見えていました。2000年頃から、手元の細かい字はメガネが必要になったものの、それでも90m先の12センチの輪は見えました。それが突然、狙えなくなったのです。それを実感したのが12月23日のインドアです。アウトドアなら何とかしのいでいたのですが、暗いともうだめです。ピンもゴールドもぼやけながらにその位置がわかるのならいいのですが、そうではなくゴールドに対してのピンの位置が見えないのです。ピンを探しても、探すピンが見つかりません。
 仕方なくいろいろサイトピンを見て周り、1月9日のインドアでは40年近く愛用してきた「CheckIt」のサイトピンを断念。少しピンの大きい、そして明るく見える「Beiter」に代えたのですが、少しはマシですがそれでもダメでした。歳を取るとは、そういうことなんでしょう。
 ちょっと余談です。多くのアーチャーは気付いていませんが、狙うことは当然重要ですが、あるレベル以上になるとサイトピンの大きさや色、そしてまったく無関係と思われるリングの大きさや厚さ、そして色が点数に影響を及ぼします。何がいいかは人それぞれです。授業料と経験則の世界ですが、これらはエイミングの精度にというよりエイミングの「集中力」に無意識の中で大きく作用します。その意味で好きではないサイトピンではありましたが、見えないよりマシということで交換しました。眼に腹は代えられません。ピンが見えないことは、集中力がないことと同じですから。
 
 そこで今度こそ、弓を射つため用のメガネを本気で考えることにしました。とはいっても、40年の中では、何度かサングラスでのシューティングにトライしたことはあります。しかしこれは個人的な射ち方(フォーム)の部分だとは思うのですが(なぜならメガネを掛けてシュートする多くのアーチャーを知っているからです)、どんなフレームのメガネを使ってもエイミング時の視線が鼻の横のフレームぎりぎりを通っていきます。疲れたり、射ち方が悪くなると、すぐにゴールドとフレームが重なって狙えなくなります。それに、近くを見るメガネを使うようになってからは、フレーム横(レンズの端)の対象物が歪んでいることも十分知っています。視線がレンズに斜めに入れば、なおさらのことです。
 そんなわけで、まずは目医者なのですが、それとは別にメガネは射撃用のシューティングフレームと決めていました。普通のメガネでは射てません。もちろんコンタクトレンズという方法はあるのですが、なぜか自分の中にコンタクトの選択肢はまったくありません。
 12年前に買ったフレームは使わず他人に譲っていたので、まずはフレーム探しです。とはいえ、インターネットならともかく、国内で調達するには10数年前とそんなに状況は変わっていません。前回は東京に足を運びましたが、今回は地元京都で購入です。それでも在庫が限られていることもあり、今度はスイス製の「Champion」にしました。レンズを入れるリング部分の直径や使い勝手もあるのですが(実際、10年前にはなかった「アーチェリー用兼ライフル射撃の立射用」のモデルがあることも知りましたが)、ともかくは使ってみて次を考える(レンズの度数も)ということで、「Olympic」というモデルの「32ミリ径リング」にしました。税込み「¥27200」です。あとで調べたのですが、なぜか海外通販でもこの種の商品はあまり安くはなく、日本の価格の方が安いくらいでした。ともかくは早く欲しかったので、不満はありません。
 そこでこのフレームに入れるレンズです。今回は9月の不調時にすぐに目医者に行き、メガネの処方箋ももらっていました。ところがフレーム購入までの数ヶ月に、信じられないくらい右目が見えなくなってきたのです。処方箋では左右同じ視力が与えられていますが、実際には左目なら不自由がないのに、普段の生活でも右目が見え難いのです。病気ではないようなので、右目が歳相応なのか40数年右目を酷使してきたツケが回ってきたのか、、、
 ともかくは、レンズを入れてみることにしました。処方箋もあるので量販店でもよかったのですが、ちょうど近くに量販店ではないメガネ屋があったので、そこに行きました。処方箋がある場合は、メガネ屋での測定もなく処方箋優先なので、レンズの種類(値段)を選べばいいだけです。値段はピンキリですが、まずはレンズの素材を決めます。「ガラス」か「プラスチック」かです。長所短所はいろいろ言うようですが、正直最近はガラスのレンズを加工できるメガネ屋(職人)は少ないようです。値段も安く、加工中に割ったりするリスクも小さいので、軽くて傷が付き難いと宣伝するプラスチック製が主流のようです。ただしプラスチックとポリカーボは違うようで、ポリカーボ製のレンズなら機械を含め、これを加工できるメガネ屋は限られるようで、ここではできないとのことでした。
 今回はとりあえず狙えるかを確認したかったので、特に特別な加工をしていない「¥15000」のレンズを選びました。傷の付き難い加工をしたものなどを選択するならいくらでも高いのがありそうでしたが、レンズは片目分1枚だけなので半分の「¥7500」ですみます。在庫もあり翌日には完成です。
 ところで今回の見えない状態は、基本的には「老視」(老眼ではなく老視です!)が進んでいるものです。遠く(的)は見えても、近く(ピン)に焦点が合わせられないのですが(的も少しぼやけつつありますが)、このシューティングフレーム自体は遠視、近視にかかわらずメガネが必要な場合には、エイミングの精度を考えればもちろん非常に有効です。そこでコンパウンドアーチャーなら気づかれていると思いますが、今回作るレンズは「+0.5」です。これはコンパウンドのスコープに使う一般的な度数の範囲と同じです。ということは、老視や遠視であれば、市販のコンパウンドのスコープ用レンズを使えば、より高精度(?)なメガネを安くで作れるということです。今回は残念のことに、手持ちのスコープのレンズは「30ミリ」で、フレームのリングが「32ミリ」でした。レンズの方が小さくてこのアイデアは断念しました。ただし一応聞いてみたところ、持ち込みのレンズ加工賃は¥1000ももらえばとのことでしたので、もし作られる時はスコープ用のレンズの値段次第ですが、要検討です。
 ということで早速2月1日の練習から使い出して、6日の東京インドアで本番デビューです。一応、エイミング時の視線がレンズ面に真っ直ぐ通るようにと、できるだけレンズの中心を通るようにはセッティングしたのですが、インドアでの使用はぶっつけ本番でした。結果は270点台でしたが、結論から言えば大満足です。エイミングが少し長くなっても、的もピンも見えた状態で集中できます。フレームも視線にかぶってきません。これはいいです。
 そして今日、アウトドアで50mを射ちました。明るい中でも今まで以上にはっきりピンが見えます。違和感もありません。まだ少しピンが2重に見えているのも事実です。押し手の先25センチに焦点を合わせるには+0.75を試す必要があるかもしれませんが・・・。とりあえずは、
 ところで精度を考えれば、射撃競技では当たり前のこのフレーム。アーチェリー競技で使わない方がおかしいくらいです。ということで、試合場で見かけても、変な目で見ないでください。よろしくお願いします。

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