プランジャーの位置
理想的なクッションプランジャーの取り付け位置はどこでしょう。実はクッションプランジャーとピボットポイント(グリップの一番底にあたる点)の2点はリムの基本性能と同じくらいに弓全体の的中性能を左右する非常に重要な部分です。
まずピボットポイントありき、なのですがピボットポイントは弓の中心線上に位置しなければなりません。本来は3次元的に考えなければならないのですが、ここではグリップの話ではないので写真の位置関係で説明します。
クッションプランジャーの位置は、押し手の力の支点となるピボットポイント(
←
印)を基点にして、上下左右2方向で考える必要があります。この場合、左右方向においてはひとつの理想的な位置が存在します。それは弓の中心線と呼ばれるピボットポイントの真上に向かう線上に位置するポイントです。現にほとんどすべての弓のクッションプランジャーの取り付け位置はこの弓の中心線上に設定されています。理由は弓のトルク(発射時の弓の動きや不良振動)をもっとも矢に伝え難い位置だからです。昔はこの線上にサイトのエクステンションベース取り付けネジ位置も設定されていましたが、最近はハンドル形状と強度的問題からこれは無視される傾向にあります。
では、どうして最近のアメリカ製の弓においてこの左右の位置関係の理想を無視して、ターゲット方向に移動可能な機能(穴が余分に開いているだけのことですが)が付加されているのか。これは理論的にはあまり意味がないでしょう。なぜならカーボンアローやポリエチレンストリングの使用で瞬時に矢はレスト部分を通過するため、ターゲット方向に移動したクッションプランジャーが好結果を与える根拠はあまりありません。どちらかといえば、理想の位置である弓の中心線上の方が当然説得力があります。
では、なぜメーカーはあえてこの機能にこだわるのか。最大の理由は物珍しさです。ただし、ひとつだけ的中性能に関して考えられることがあります。それはカーボンアローになって矢のたわみ(アーチャーズパラドックス)のストロークが短くなり、矢がレストに当たってしまうトラブルが増加していることへの対応(対策)です。レストが前方にあるということは、矢がノッキングポイントを離れてからレストまでの距離が長くなります。もし、レストでのトラブルがあるアーチャーはこれによってこのトラブルを回避できる可能性が高くなるということです。しかし、これも弓のトルク反映と相殺して考える必要はあります。
上下の位置関係はどうでしょう。多くのアーチャーはピボットポイントが弓の真ん中(ハンドル長さ方向に対しの中央)にあると考えがちですが、ほとんどがそうではありません。ピボットポイントとクッションプランジャーの2点の位置関係こそが各メーカーの特徴であり、的中性能に影響をおよぼす重要な部分なのです。
実際には不可能であってもこの位置関係には理想が存在します。それはハンドルの中心にピボットポイントとプランジャー位置が重なって同じ点に存在することです。これこそが弓のエネルギーを無駄なく矢に伝え、誤差を排除できる究極の理想であるにもかかわらず、押し手の中から矢を発射することはできません。
昔、Hoyt社はクッションプランジャーの位置を、アーチャー自らが上下に移動させることが可能な機能を取り付けました。しかし、一般には受け入れられず、次期モデルでは同様のアイデアを使用することをやめてしまいました。
これには当然の理由があります。クッションプランジャーの位置をピボットポイントから離せば離すほど矢の発射時のショックは大きくなり、そのズレによって的中精度は低下します。本来アーチャーは可能な限りクッションプランジャーをピボットポイントに近づけたいのです。この可能な限りとは、ハネがウインドウ下部に当たらない所までということです。しかし、安易にアーチャー自身がこれらの位置関係を動かすことは、弓の基本性能自体を変える結果となるのです。
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