プランジャーの基本

 クッションプランジャーは1960年代中頃、当時 White Knight の異名を持ちプロアーチェリー界に君臨した Vic Berger が発明し、当初は 「バーガー ボタン」と呼ばれた道具です。アマチュアの世界には70年代に入って導入され、1973年の世界選手権以降はエクステンションサイト同様に一般的で不可欠の道具となりました。

 バーガーボタンが作られた頃は、ちょうど弓にスタビライザー(ウエイト)が取り付けられるようになりだした時期です。アーチャーはより以上の的中精度を求める手段としてスタビライザーを弓に装着し、矢の発射時の弓の動きを止めることでその目的を達しようと考えました。しかしこの方法はアーチャーズパラドックス同様に相反する効果が生まれます。弓の動きを止めれば止めるほど、矢飛びが悪くなったのです。矢(アローシャフト)は適度なしなり(アーチャーズパラドックス)を持ちながらレスト部分を通過するのですが、それまでは弓の方が動きを持っていたために矢が不要にレストやウインドウ部分に当たったりすることはなく、矢はうまく飛び出していました。ところが、弓側の動きを止めることで、矢のたわみ(スパイン)がよほどうまく起こらないと矢がうまくここを通過しなくなったのです。しかし当時のアルミシャフトは精度も今ほどではなく、サイズや種類も限られたものでした。そのため弓本体は止まっていても、矢の力を受ける部分を移動可能にすることでこの問題を解消しようとクッションプランジャーの原形が考案されたのです。

 注意しなければならないのは、クションプランジャーが生まれる前でも、矢はすべてうまく きれいに飛ばなかったのではない事実です。正しい技術とスパインの合った矢が選択されていれば何の問題もありませんでした。現にクションプランジャーなしの世界最高記録は1972年ミュンヘンオリンピックのジョン・ウイリアムスの1268点です。それにこの記録はダクロンストリングとアルミアローによるものです。
 ここで重要な点は、適切なスパインが選択されるなら、基本的にはクションプランジャーは不要だということです。しかし残念なことに、適切な最適とも呼べるスパインの選択がすべてのアーチャーに与えられていないのも事実です。そこで、そのようなアーチャーには、クションプランジャーによるスパインの「微」調整が必要なのです。そのため、これには限度があり、矢はあくまで最適ではないにしても、適切なスパイン選択が大前提です。
 逆にいえば最適な矢が与えられれば、クションプランジャーはガチガチの動かない状態であっても矢はきれいに飛ぶはずです。そして、適切な矢を持っているならクションプランジャーの調節(チューニング)は極端に硬いところからはじめ、徐々に柔らかくしていくべきでしょう。その結果、もし指でチップを押さえて簡単に動くような極端に柔らかいセッティングになったのであれば、リリースの時のほんの小さなバラツキでも簡単に的面に反映してしまうでしょう。そんな場合は、矢のスパイン(サイズ)自体の変更を考えた方が良いでしょう。

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