レストの基本

 レストとは矢の発射台です。それだけに安定性と正確性が求められるのはいうまでもありません。しかし、単に安定と正確さだけなら極端な話、クギが1本ウインドウに打ち付けてあっても十分に役目は果たします。現に昔は歯ブラシの先を切って取り付けたりした時代もあったくらいで、矢が毎回同じ位置にしっかりと乗っていれば問題はないはずです。
 ところが、それだけではすまなくなったのには、昔はハネが鳥羽根であったものがプラスチック製のハードベインに進化したことが最大の原因でした。ハネがレスト部分を通過する際にレストやウインドウに当たりトラブルが起こり、矢飛びや方向性に悪影響を及ぼすようになったのです。そして近年、いくらソフトベインやフィルムベインが使われたとしてもカーボンアローの使用はこのレストでのトラブルを増加させ、的中性への影響を致命的なものにしました。トラブル増加の原因はカーボンアローの特性として、アーチャーズパラドックスからの復元の際のストロークの短さと幅の狭さがあります。矢(ハネも含めた)がレストのギリギリのところを通過していくようになったのです。何よりも問題は、矢の軽さです。カーボンアローになってからは、引き手のフックのほんの少しの力でもシャフトは発射前に浮き上がってしまいます。また発射された後でもレスト部分でプランジャーチップや障害物にほんの少し接触するだけで、その方向を変えてしまいます。

 いくらウインドウ部分の形状を工夫し、レストを遠ざけても、プランジャーチップとレストのツメはなくすことは現状ではできません。となれば、チップはともかくとして、レストのツメにおいてはそこに何らかの性能を求めざるを得ないでしょう。
 まず、「上下の動きがない」ことが重要なポイントです。ツメの先を上下に軽く動かしてガタツキの小さいものを選ばなければなりません。次に、これがもっとも重要な性能ですが、左右のテンションが極力小さくなければなりません。ツメが折りたたまれる方向に何の抵抗もなく移動することが不可欠です。そして、できる限り形状的に出っ張りの少ないものが理想です。また、機構的に構造がシンプルで壊れ難く長持ちすることも大切です。例え性能的に優れていても、調整が複雑であったり、雨や気温の変化によって性能が変化するようでは困ります。
 そして、コンパウンドのようにリリーサーを使用するのであればほとんどアーチャーズパラドックスは発生しないため、単にシャフトが上に乗るだけの構造でよいのですが、フィンガーリリースの場合はサイド面(右射ちなら右側)へのプレッシャーが発生するため、プランジャーチップと併せた検討が必要です。

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