レストアップ

 一般に 「レストアップ」 と呼ばれる現象があります。リリースの瞬間に、シャフトがレストのツメから浮き上がった状態で矢が発射されることをいいますが、ここではリリースの前にすでに矢がプランジャーチップの上に乗ってしまっている場合は除いて話しを進めます。
 昔アルミアローの頃、初心者によくある現象で中級者以上ではあまり問題にはならないトラブルでした。ところが近年、カーボンアローの出現とともに上級者をも含めたすべてのアーチャーを対象としたトラブルに発展し、その発生は初心者でない者にとっては的中にそのまま影響をおよぼすだけに深刻な問題となっています。
 このトラブルが多発しだした最大の原因は矢が軽くなったことにより、矢を持ち上げ易くなったことです。しかし、このトラブルに悩まされ続けるアーチャーに限って問題を複雑に考え過ぎています。超能力でも持ちあわせていない限り、矢が浮き上がる原因はたったひとつしかありません。
 いくらグリップや押し手、あるいはシャフトに念力を集中しても決して矢がレストから浮き上がることはあり得ないのです。矢を持ち上げる力は引き手の人差し指と中指の働き以外では考えられない現象です。にもかかわらず、多くのアーチャーは原因を他に求めようとするあまりに泥沼へとはまり込んで行きます。しかし、原因をこの2本の指に限定した時には、解決策は簡単に見つかるはずです。
 そしてもっとも問題になるのは中指です。なぜなら、人差し指は中指と一緒になってノックを挟みこんだ場合には矢を持ち上げる手助けをしますが、もし人差し指だけがノックに触れている場合は逆にシャフトをレストのツメに押さえつける働きをし、レストアップを解消する有効な手段となり得るからです。この意味からも引き手の人差し指はしっかりとストリングに掛けて引く必要があります。この前提に立って中指がノックを押し上げないような状況を作ってやれば問題は解決です。

 もっとも短絡的に思い付く対策が、「カントピンチ」と呼ばれる道具をタブに装着することでしょう。昔はゴム製の物が一般的でしたが、最近は「キャバリア社」(USA製)のタブが普及したことで、カントピンチ自体も金属製が使われることが多くなりました。しかし、ここにも問題があります。市販されている金属製のカントピンチの多くがその間隔(厚み)が広く、手にきつく(硬く)当たるため、中指と人差し指の間隔が不自然になり逆に手(指先)に力が入り一層ノックを押し上げてしまう結果を招いてしまう場合があります。もしこの種のカントピンチを使用する場合は中指と人差し指の開きは最小限にとどめ、指に痛さなどを感じないように必ずサンドペーパーなどで角を面取り(丸く滑らかに)し、使い易い形状にしてください。

 しかし、カントピンチを使用することはレストアップ解消のひとつの方法ではあっても、最良の方法ではないかもしれません。現に世界のトップ選手を見ても、すべての選手がこの道具を使っている訳ではなく、逆に使っていない選手の方が多いはずです。このことは指先のリラックスが確保できるならカントピンチは必要なく、逆にカントピンチがあることで不自然な形や力を指先や手首に作り出してしまう原因にもなりかねないことを示しています。
 そこで、試してみたいのは「ノッキングポイント 1個」で射つ方法(対策)です。それがどうした、と言われそうですが一般にノッキングポイントを1個で射つ時はノックの上側1個でするのが普通です。しかし、ここで提案するのはノックの下側だけにノッキングポイントを取り付けて射つ方法です。一般に上側に取り付ける理由はノックをストリングにノッキングした時にノックが滑り上がってずれてしまわないためです。これを逆に活用するのです。ノッキングポイントが下側にあるとアーチャーはストリングに指をフックする時に、ノックがノッキングポイントからずれないように上側(人差し指)からノックを下に押さえつけてセットアップするので、自然とノックと中指の間に毎回同じゆとりが生まれます。そして、人差し指は必ずレストアップを抑えるべくノックを押さえてくれます。
 この方法だと、フックのたびにいちいち指の位置を気にして、不自然に指の間隔を意識することもありません。

 その時にもし、中指とノックの間にタブの裏皮があるなら(多くのタブが親切のつもりでここに不必要な緩衝材を付けています)、必ずこの部分を切り取って使用しましょう。本来はノックの上下共にこの種の緩衝材はなく、指で直接ノックの感触をアーチャーが意識できる方が良いのです。

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