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弓の弦音を変えようと思えばスタビライザーでなくとも、ストリングの素材や太さを変えることで変化はあります。あるいはサービングの巻く硬さだけでも変わります。射った時のリムのバタツキを消したいなら、一個のカウンターバランスで消せます。狙っている時の微振動を吸収したければダンパーを使用するべきです。 |
しかしこれらはどちらかといえばアーチャーの感性に働きかけるもので、重要な問題ではあってもニ次的な要素です。それに対して上記の2つの要素は、「狙っている時の弓の安定」=「エイミング感覚」と「射った時の弓の飛び出し」=「シューティング感覚」はアーチャーの感性に働きかけるだけでなく、弓の安定を求めるスタビライザーの効果としては不可欠な重要なポイントとなります。 |
John Williams
は狙っている時の前方に突っ込んで行く感覚と射った時の大きく弓が的方向に回転して倒れる感覚が好きなのです。Darrell
Pace
は何よりも狙っている時の安定感を重視し、射った時にはグリップを含めた押し手全体で自ら弓を前に押し込みます。Rick
Mckinny
は安定より弓のコントロール性を重視し、的への押し易さと射った時の弓の飛び出しをもっとも重要と考えています。これらはアーチャーの弓に対する考え方であると同時に個性でもあります。ということは、10人のアーチャーには10通りの考え方があり、10のスタビライザーのセッティングが存在するのです。その意味において、スタビライザーには万人に共通した満足や結果を与える形や長さや重さは存在しないのです。重要なことはそれぞれのアーチャーが自分の個性に合わせて、スタビライザーに何を求めるかということです。 |
「狙っている時の安定感」がほしいアーチャーは、おのずとBの形体に近づくでしょう。しかし実際にはAやCにカウンターバランスを取り付けても同様の感覚は得られます。あるいはAの下部を重くしたり、Cの左右を重くしたり、角度を水平より下げることでも可能です。 |
また、「射った時の弓の飛び出し感」がほしいアーチャーはCやAの形体になるでしょうが、実際にはBの手前を軽くして前方を重くすることでも満足は得られるはずです。あるいはVバーを水平位置近くにセットしてもいいかもしれません。 |
このようにスタビライザーの形状やセッティングはアーチャーが何を求めるかで変化し決まるのです。もし自分は「狙っているときの安定感」も「射った時の弓の飛び出し感」も両方ほしいというのであれば、3つの基本形の中だけでもその角度や重量配分を変えれば得ることは簡単にできるはずです。要はアーチャーの感性と知識と努力と、そして個性の問題なのです。 |