サービングの巻き方

 サービング糸を巻く「強さ」は結構、気になるものです。最近は高密度ポリエチレン素材の原糸が使われるようになり「切れる」ことがほとんどなくなったために、昔のケブラー繊維の頃ほどに気にならなくはなったものの、それでもやはり自分でストリングを作る場合は神経質になってしまいます。
 あまり強く(硬く)巻きすぎると、カンカン音が高くなってしまうし、切れ易くなることもあります。逆に緩く巻くと、使っている途中でサービングが緩んできてノッキングポイントの位置が動いてきたり、ループ部分では原糸が直接リムのチップに触れることもあります。

 サービングの巻く強さは「サーバー」と呼ばれる糸巻き器のネジの強さで決まりますが、その硬さは経験で決めるしかありません。しかし、この硬さもサービング糸の素材にも関係し、「モノフィラメント」と呼ばれるちょうど釣りのテグスのような表面のツルツルの素材では、ある程度強く巻かないと緩みやすくなってしまいます。( モノフィラメントは水を吸わず、摩擦係数も小さいというメリットはあるのですが、繊維を撚ったり編んだ糸とくらべてサービング糸が切れる前兆として「毛羽立ち」が起こらず、突然切れるという欠点もあります。)
 そこで、サーバーの硬さとは別に、サービングを巻く時は弓を立てて(最後の糸の始末を考えれば、上のリムを下にした方が良いでしょう。)必ず下から上へ巻いていくようにします。こうすれば、サービングの糸同士の間が締まり、緩み難くきれいに巻くことができます。

 ところで、今でこそストリングが切れなくなり、サービングを巻きかえれば1本のストリングを1年以上使えるようになりましたが、昔のケブラーストリング(700射から1000射で切れた)の時代を経験したアーチャーなら、太いストリングの方が早く切れてしまったという経験をもっていませんか? 実際にはストリングは太い方が切れ難いのは当然で、同じ弓で使うなら18本弦の方が16本弦より耐久性があるのは当たり前のことです。
 ところが、不思議なことに16本弦より18本や20本弦が先に切れるということは良く起こりました。その理由は、弦を太く作る時に本数が多い(太い)方がそれぞれの原糸を均等に束ねることが難しく、結果的に数本の糸に負担が掛かる作り方になってしまうためです。これは今のポリエチレン製のストリングにおいてほとんどがそうであるように、ワックスが最初から付いている原糸において起こり易いことです。もし、自分でストリングを作る場合は、特に最初の束ねる段階(サービングを巻く前)で、うまくそれぞれの糸をほぐし束ねるようにしましょう。( 以前のヤマハストリングだけはすべて機械で作っていましたが、他のストリングは人間の手で作られるために、状況としては同じです。)
 しかし、どんな作り方であってもある程度耐久性を向上させる方法があります。
 それは、できあがったストリングに捩りを多く掛けることです。これは極端に言えばストリング全体がゴムのように伸縮性をもつためです。この方法は大昔のダクロン(ナイロン)系のストリングの時代では、伸び率がより大きくなり反発力の低下とストリングハイトの変化を起こしマイナス要素が多かったのですが、現在ではほとんど無視できるようになりました。それほどに現在のストリングは伸びることなく軽くなったのです。そのため、ある程度多く捩りを掛ける方が、弓の音も静かにおとなしくなり、アンカー時の顔に感じる感覚も良いでしょう。
 仮にループ部分がひっくり返るほどストリングを捩っても問題はありません。こうすれば一部の糸に極端にテンションが掛かるような下手なストリングの作り方であっても、見た目と耐久性をカバーしてくれます。

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