コンパウンドボウの場合、多少の前後はあるのですが基本的にはバレー付近でフルドロー(エイミング)が保たれることが理想であり不可欠なことは簡単に理解できます。そのため、コンパウンドアーチャーはそのように自分の弓をチューニングします。それに対してリカーブボウの場合は、コンパウンドのバレー同様にスタッキングポイント付近がひとつのドローレングスの目安となりますが、滑車やカムでの調整ができない弓においては最初に適切な弓を選択することが非常に重要な意味を持ってきます。その基準となるのが弓の長さ(ボウレングス)です。 |
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弓のメーカーはこのモデルのこの長さの弓なら、これだけ引かれた時に最良のパフォーマンスを発揮するであろうというデータを種々のテストや設計のノウハウから得て製造しています。その「最良」という部分にはある程度の幅(許容範囲)があるのですが、それを越えて極端に短いドローレングスや極端に長いドローレングスでは意図する性能が得られないのです。そこでメーカーも今でこそカタログにはあまり載せませんが、[
26〜28インチは66インチ ][ 27
1/2〜29インチは68インチ ]
のように一応使用に適切と考えられる許容範囲を示していますが、これもメーカーやモデルによって多少ではあっても異なります。また、その境目にあるアーチャーにとってはどちらの長さを使うかは悩むところです。 |
このように弓の長さはアーチャーのドローレングス(引く長さ)によって決められるものです。しかし、実際にはその長さを引くことによって「どれだけリム(弓)がたわむか」がもっとも重要なポイントであり、現在の主流である「デフレックス構造(形状)」の弓では「リカーブ」と呼ばれるリム先端付近の逆に反り返った部分がしっかりと伸びるかどうかが非常に重要なのです。 |
このリカーブがなぜあるのかというと、オモチャの弓を考えてください。竹に糸を張った弓では、引けば引くほどリムの根元ばかりが曲がってきます。そして最後には弓を握っている付近で竹は折れてしまうでしょう。このようにリカーブ形状がない弓では応力がリムの根元に集中して強度的にも、そして安定面でも問題が生じるのです。ところが、リムの先端を本来の弓形とは逆に反らすことで、リムはその形状全体からエネルギーを生みだすのです。 |
もうひとつリカーブには重要な目的があります。野球のピッチャーが手首でスナップを効かすように、リカーブは発射時の矢に「押さえ」を効かせ飛翔時の安定も生み出す効果があるのです。 |
そのため、あまり長すぎる弓(例えば25インチ程度のドローレングスしかない女性アーチャーが68インチや70インチの弓を使うような場合)を使うと、リムはスタッキングポイント位置まで引かれないために弓の持つエネルギーは極端に小さく(a + b の面積)なり「飛ばない弓」となってしまいます。そして当然リカーブが伸びていないので飛翔時の安定も欠ける結果となります。では、逆に66インチの弓を29インチ以上の条件で使用するとどうでしょう。弓はフルドロー手前から極端に硬くなり、使い勝手と効率が悪くなり「奥の硬い弓」となります。そしてストリングに作られる角度が小さくなるので、人差し指や薬指のフックの負担が大きくなりフルドロー自体も不安定になります。 |
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