近年、特にカーボンアローが一般化してからのアーチェリーを見ていると、「なぜ、あれで当たるの??!」と首をかしげたくなるような選手をよく見かけます。しかし、よく考えてみると、実はこれとは反対に「なぜ、あの選手(あの射ち方)が当たらないの?」という可哀相なアーチャーもそれ以上の数で存在しているのも事実です。たしかに、そこにはそれ相当の理由や納得があるのかもしれません。しかし、世界選手権の予選通過点が1290点になってくると、「あれで当たるんだから、凄い!!」といったところで、日本チャンピオンでも予選落ちが現状です。そう考えると、「当たりゃいい!!」といっても、それではすまないのが今の日本のアーチェリーです。 |
一般にカーボンアローが高得点に寄与しているように思われていますが、実は「本来もっと当たらなくてはならない選手が、道具のせいで当たらない」としたらどうでしょう。逆にいえば、当たっている選手は偶然か意識的にか、努力の結果かは別にして、道具の選択(ここではカーボンアローの種類とサイズの選択とそれに対する弓を含めたチューニング)が非常にうまくいった結果、多少フォームや射ち方が悪くても、他のほとんどの選手が道具のせいで外してくれるので勝ってしまうのです。それが証拠に、今日本のトップと呼ばれる押し手を落したり、リリースを振り回す貧弱か肥満の選手諸君に出せる点数の限界は1330点止まりであり、実際には1300点台がやっとです。この点数は20年前のアルミアロー当時のレベルと意識より遥かに低い点数です。だからこそ日本のアーチェリーが勝てなくなり、世界で通用しなくなってしまったのです。 |
そこで、シューティング技術やフォームのことはここではさて置き、このような高価な道具を使って逆に点数の低下を招いている原因は何でしょうか。答えは、カーボンアローの特性に起因しています。まずひとつは、カーボンアロー自体(特にアルミコアにカーボン繊維を巻き付けるタイプ)がアルミアローに比べて「許容できるエネルギーが小さい」ことが挙げられます。そのため、「矢のサイズの選択が難しく」「自分にとってのベストサイズでなければ矢本来のパフォーマンスが発揮できない」という状況が生まれます。その結果、「シューティングミスや技術的バラツキが大きく的面に反映」されるが、アーチャーは「矢速に惑わされて、正しい状況認識ができない」ということになります。 |
そしてもうひとつの大きい原因は、カーボンアロー(シャフト)がアルミシャフトに比べて、アーチャーズパラドックスの際のたわみ幅と復元のストークが小さいことがあります。簡単にいえば、ただでさえミスを拾い易いカーボンアローがレスト付近で、例えグッドシューティングであってもレストのツメやプランジャーチップぎりぎりに通過していくという問題です。その結果、アルミシャフトでは問題にならなかったアーチャーのミスもレスト部分でのトラブルによって、大きく的中に悪影響を及ぼすわけです。 |
そう考えると、アーチェリーの道具はこの種の問題(トラブル)に対して1980年中頃のカーボンアロー登場以来、何ら対応していないことが解ります。近代アーチェリーにおける最大の「革命」ともいえるカーボンアローに対して、弓やその他の道具は10年以上何ら改革も改善もなされていないのです。(この後述べるリムの形状にしても現在のプレスに使う型は基本的には10年以上なにも変更されていません) 今、我々が使っているカーボン繊維やNCといった最新の素材や技術は、その基本部分ではロビンフッドの時代と何ら変化していないのです。「カーボンアロー対応」と声高らかに叫べる技術やアイデアは皆無です。あえて挙げるなら、PSEのハンドルに採用されているレスト部分の回避形状と、AVARONやSKYのハンドルに見られる2個のプランジャー取り付け穴程度のもので、結局は現在の最新といわれるリムやハンドルにしても基本設計にはまったく手が加えられない、旧態然とした「昔ながらの弓」にすぎないのです。 |
|