ハンドルの重さ

 コンピュータ制御による旋盤でアルミニューム素材を削り出して作る「NCハンドル」が当たり前になった今の時代では、ハンドルの重さ(重量)をなぜか云々しなくなってしまいました。オカシイといえばおかしいし、仕方ないといえばそれまでなのですが・・・・・。

 現在では当たり前の「テイクダウン」(Take Down) ボウがアーチェリーの世界に登場したのは1960年代の終わりです。しかし当時はまだ木製のワンピースボウを分解可能にしたものや、金属製のハンドルであってもアルミニュームの鋳造や実際の使用時には分解できないものもありました。それが現在のような機能や形になって一般に使われるようになったのは1970年代も中頃になってからでした。この頃から「マグネシューム素材」を使用した鋳造(型に流し込んで固める)ハンドルが主流となったのです。
   しかし、当時このテイクダウンボウが一般化するまでに10年近くを要したのは、メーカーの努力が不足していただけでなく、最大の理由は「重さ」でした。マグネシュームが使われるまでのアルミニューム素材では比重が大きく、ともかくは木に比べてハンドルの重量が重過ぎたのです。
   木製ワンピースボウが当たり前であったアーチャーには1kgを超える弓はダンベルを持つに等しい重さでした。そこで金属素材のハンドルを作るメーカーは極力形状を細くしようとしたのですが、それは折損との戦いでした。まだノウハウがない当時では、軽さと強度は反比例したのです。
 また、1982年にヤマハがそれまでの「YtslU」に替わって「EX」というT-Bone/L-Boneという断面形状を持つハンドルを発表するまで、どのメーカーの弓も木製ワンピースボウ当時の形状から脱却することができなかったのです。分かり易く言えば、木の弓の形をそのまま金属に置きかえるだけのテイクダウンボウがすべてだったのです。しかしこれでは金属本来が持つ特性を生かしきることができず、軽量化ができないばかりか強度面での強化が図れなかったのは当然です。現に YtslU も折損に悩まされました。

 多分、アーチェリーのハンドルとして金属を使用するなら、それは「マグネシューム」の「鋳造」(金型)が重さ、重量、耐久すべての点において最良の方法でしょう。問題があるとすれば「コスト(値段)」かもしれませんが、最初の金型には数100万円から1000万円を超える初期投資が必要となりますが、しかし鋳造自体は「量産」の場合のコスト軽減を目的とする製法でもあり、高品質・均一でたくさんのハンドルを作るにはこれ以外の方法は考えられないでしょう。NC製法はコンパウンドから始まった、流行りにしかすぎません。
 少し話が逸れてしまいましたが、ここでは今市販されているハンドルがどのくらいの重さがあるのかを調べてみましょう。ただし測定には写真のような秤を使用したため、誤差のあることはご理解ください。比較として参考にしていただければ幸いです。
 
Hoyt   Avalon Plus   25"   1300g   NC・アルミカップ
    Elan   25"   1150g   NC・一体
    Radian   25"   1170g   NC・一体
    Radian   23"   1130g   NC・一体
                 
PSE   Zone   25"   1280g   NC・アルミカップ
    Intrepid   25"   1270g   NC・一体
                 
Sky   Conquest   24"   1170g   NC・一体
                 
W & W   Winact   25"   1200g   鍛造(金型)・NC・一体
                 
Nishizawa   Formula 2000   H46   1160g   鋳造(砂型)
                 
YAMAHA   Forged   24"   1150g   鍛造(金型)・NC・一体
    Eolla   26"   1100g   鋳造(金型)
    Eolla   24"   1050g   鋳造(金型)
 
 この重さはグリップの付いた市販の状態での重量ですが、ちなみに Hoyt の同じグリップでも「木製=50g」「樹脂製=65g」、あるいは一般的なサイト(エクステンテョンを含む)の重さは「210g」程度です。これらの重も参考にしてみればいいでしょう。
 ここでもわかるように「NC」は素材がアルミニュームのため重くなります。また、「アルミカップ」とあるのは、リムの取り付け部分にアルミでできたカップ状の部品を別付けするもので、必然的に重量が重くなり精度や耐久(取り付けの)などが問題になります。(この方法自体はコンパウンドボウの技術を転用したものです。)その意味で「一体」のようにハンドルに接合部分を直接削り込む方が軽く、確実なのですが精度を求めるための技術とコストが要求されます。
 「鍛造(たんぞう)」は仕上げ段階でNC加工を施しはしますが、素材段階でアルミニューム自体に圧力(本来は叩き出し)を掛けてあります。そのため強度は単なるNCに比べて向上します。ただし設備投資等のコストが掛かることは避けられません。
 「鋳造(ちゅぞう)」は型に溶けた素材を流し込んで固めるやり方です。素材にはマグネシューム合金が使われるため、アルミに比べても軽く作ることができます。普通は「金型」と呼ばれる金属の型を作るのですが、それ以外に「砂型」と呼ばれる、職人技で一回一回砂で型を作ってそこに素材を流し込む方法もあります。この方法の場合、型を作るコストは安いのですが大量生産には向かず、安定した品質を確保するのが難しくなります。また、型から出した段階で表面が粗い(砂のため)ので、金型に比べて後加工によりコストが掛かります。
 ともかくは、この程度の知識は持ったうえで現物を見て、色やデザイン、そして値段だけでなく性能と品質、コストパフォーマンスを考えて自分の使う弓を選びましょう。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery