弓の長さの決め方

日本の弓の尊崇性(長弓存続の理由)
 世界の諸民族が持っている弓は、たいてい91cm-1.21m(3〜4尺)やや長めのものも1.51-1.82m(5〜6尺)である。民族学者マックス・エーンスのいうように、現在世界のあらゆる民族が使用しているものの中でも、おそらく日本のように長い弓は、どこにもないのである。現在でも未開の民の中にはまだ弓を生活用具として使用しているものもあるが欧米の文化国ではスポーツ用として、自己の身長またはそれ以下の長さのものを用いている。ひとり日本人ばかりは、体躯が短いのに弓は現在も長いものを使用している。
 これは前にも述べたように、取り扱いの上には不便であり、使用にも決して有利だとは思えないのに、特にこの長弓を使用しつづけ、その握りを半分から下にさげてまで、これを改めなかったのは、かれ等に弓箭に対する異常な崇拝観念があったからであることがわかるのである。
 上代には弓箭を「天表」として、これをもって神聖なものの象徴としていたほどだから、これを単なる武器または利器として、利便のみを主要な条件とするものではなかった。また弓の使用についても、はじめ多少の不便はあっても、使い慣れてしまえばかえってそれが長所となり、使用上にも有利なことに転換することさえ、しばしばあるのである。
弓道教本第一巻(改訂増補版)射法編 

 弓の長さ(ボウレングス)は設計思想や基本設計に依存しますが、どの長さの弓を使うかは矢の長さ(ドローレングス)によって決定付けられます。 f-x 曲線とアーチャーの感覚が重要な要素なのです。
 そのためこの選択はアーチャーにとって非常に重要な問題なのですが、最近のカタログにはそれらの基準が示されているものがほとんどありません。また、アーチャー自身もあまりそれについて語ることもありません。その理由は、近年カーボンアローが使用されるようになってから、弓の性能が昔ほどに云々されなくなったことにあります。弓の性能で矢を飛ばすというより、矢それ自体が飛んでしまうのです。
 では実際にアーチャーはどの長さの弓を使えばいいのか。26インチまでなら64インチ。27インチから28インチは66インチ。28インチからは68インチ・・・というようなことでしょうが、問題はその境目での選択です。ここでも試行錯誤は必要なのですが、例えばインドア用のチューニングに代表されるように、アーチャーが何を求めるかで決めるしかありません。長距離を重視し矢速を求めるなら、短い方の弓になるでしょうし、リム自体が高ポンドで指のフックや全体の安定を考えるなら、長い方の弓になるでしょう。
 しかしこのような境目の選択は、弓の組み合わせによって2インチ刻みではなくその中間の長さも得られるように選択肢としては与えられています。問題は女子に代表される小柄な矢の短いアーチャーの場合です。この場合、矢が長い大柄のアーチャーに比べ表示ポンドも実質ポンドも低いという条件が重なってきます。となれば、リムのたわみを求めて、本来はより短い弓が必要になってきます。しかし多くの外国人が長い弓を必要とするのに対し、極端に短い弓を必要とするのは日本ぐらいであり、需要と供給から考えても25インチに満たない矢で競技用の弓を求めるのは困難な状況なのです。よって結果的に、自分の身長より長い(高い)弓の使用が一般化します。
 そこで矢の長さからではなく、弓の長さを決める目安はというと。これは非常にアバウトで絶対的な基準ではありません。手の長さも違えば弓の長さも違います。単なる目安です。それはストリングを張った弓を地面に付けて並んで立ちます。
 まずは、身長より長い弓は長すぎるでしょう。ただし先に述べたように、選択肢がなければ仕方がないのですが、もし背より高い弓を使うならそれは長すぎる弓という前提に立って、その後のチューニングを行わなければなりません。
 では身長よりどの程度短い弓を選ぶのか。口から目の間にチップがくる程度の弓の長さを使いましょう。写真は68インチの弓です。ちょうど目の高さまできます。66インチは短いのですが、66インチなら鼻と口の間くらいにきます。
 このくらいを目安にして、自分に合った弓の長さを選びましょう。
 
 
 
 

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