Black Douglas その2

 BowMoreさんのハンドルから3週間遅れて、名前入りのマイボウが到着しました。先の写真を見て、これと決めた色です。「Heritage Midnight」というモデル(木?)名です。ちなみにBowMoreさんのハンドルは、「Shedua」にこのHeritage Midnightがサンドイッチされているモデルになります。
 そこで余談ですが、このハンドルが届いてまだ引いてもいないのに、家で弓バカとビールを飲みながら1時間以上話していたのですが、不思議なことにずっとハンドルを触ったままで話ができるのです。どっちがバカか分かりませんが・・・。金属のハンドルならそれがいくら変わったハンドルであっても、ずっと持ったままでは続かないでしょう。やはり木のぬくもりというか、あたたかさというか、うまく説明はできませんが、触っていて違和感がないのです。触って遊べるんです。昔のワンピースボウもそうだったのでしょうが、何10年ぶりかに懐かしい想いを感じました。正直、これだけでも買った値打ちがあったと思ってます。
 
 では、ストリングを張って射つ準備をしなければならないのですが、、、今の弓とはまったく素材の違う、そして機械が勝手に削りだしてくれる無機質なハンドルとは異なる、世界に1本の自分だけの同じ色や模様はないハンドルです。手作りとも職人技ともいえるハンドルです。木のぬくもり同様に測定データなどの客観的事実は無関係な、主観的自己満足の世界です。触っていて嬉しかったり、木の色や木目の繊細さが美しければ、それだけでエクスタシーの境地です。おとなのオモチャです。
 が、それを理解したうえで、多少の比較も必要です。まずは重さ。現在の一般的なアルミハンドルでも軽いもので、約1300グラム。それに対して、当たり前といえば当たり前ですが、この天然木のハンドルは約1000グラムです。木の種類によって多少の重い軽いはありますが、本来使われるべきアルミではなくマグネシュームの軽さを考えれば、この300グラムの軽さは大きな特徴であると同時に大きなアドバンテージともいえるでしょう。
 
 それでは、まずは今使っている弓のリムとストリングをそのまま取り付けることからはじめます。
 今使っているのが「X-Appeal25」と「HEX6W-BB2」68インチ40ポンド表示です。このリムをそのまま差し込んで、普段使っているストリングを長さを変えないでそのまま張ってみました。
 ストリングハイトが8 3/8インチだったのが8 1/4インチになり、ティラーハイト差が4ミリだったのが1ミリになりました。この変化を大きいとみるのか、アルミハンドルの同モデル間であってもこれくらいの差は出ると感じるのかは皆さんの判断に任せますが、個人的には金属と木の違いを考えればまったく同じ位置関係(ハンドルの長さとリムの差込位置)のハンドルと理解します。個人的には結構凄いことと思いますが、まずは満足です。そこで先に言っておきますが、これはあくまでマイハンドルの話です。金属のハンドルとは異なり、精度的な個体差があるかどうかは確認していません。ランダムに得られたこの1本での報告です。これ以上やこれ以下があるのか、あるいはこれがすべてに適用できるのかは、皆さんの報告と感想を待つしかありません。
 縦の位置関係は問題ありませんでした。次は横の位置関係、ねじれやセンター通りです。この写真を見てください。そのままセンタースタビライザーを取り付けて写したものです。まったく触っていません。
 これは凄いです。なんの調整もせずにこのまま射てる状態です。完璧にほぼセンターが通っています。これはハンドルの位置関係が図面どおりは当然ですが、リムの精度も要求されることです。例えば、1本のハンドルに対して同じ状態で使えるスペアリムを持っているアーチャーは少ないでしょうが、同じハンドルでリムを新しくした時を考えてください。ハンドルのセッティング(センター調整)をまったく変えずに、新しいリムでも前のリム同様にセンターが通っていることは少ないでしょう。この時多くのアーチャーは金属でできたハンドルは曲がっていないという前提(思い込み)に立った上で、リムに合わせてハンドルを曲げます(調整します)。もうこの段階でハンドルもリムも基準を失います。組み合わせごとの調整を求めるしかありません。その先はハンドルが曲がっているのか、リムが曲がっているのかは無関係であり、無関心です。
 それを考えれば、リムに対して調整されていたハンドルを変えてもセンターが通ることは凄いことなのですが、、、ここではリムのことも少し話しておきます。今回ハンドルは金属から木に変えましたが、この木のハンドルもリムもBorder社製です。相性がいいからと思われるかもしれませんが、それ自体は当然同じメーカーなので否定はしませんが、Borderのリムもなぜか凄いのです。これまで他のレポートもしていますが、同じハンドルに対して異なるBorderのリムを付け替えても不思議とセンターが通っているのです。他のメーカーのリムでこれほど真っ直ぐな(精度の高い)リムは見たことがありません。その理由は最初に書いた職人による手作りという、メーカーのポリシーとノウハウに起因するのだと思います。なので、他社のリムをこのハンドルに取り付けた時に同様にセンターが通るかは分かりませんが、木のハンドルだからという理由でその精度を疑ったり、不安を持ちながら使う必要はこのハンドルにはなさそうです。
 それでは実射のためのパーツ取り付けと微調整ですが、、、、
 その前にこうしていて気づいたのですが、たぶん皆さんは今使ってられる「アルミニューム」ハンドルが当たり前のように思って使われているでしょうが、それは違います。本来、弓の性能を考える時、重さや減衰率を考えれば「マグネシューム」ハンドルがアルミ以上の理想的な素材です。ところが加工にはダイキャストが必要になり、金型や設備に大きなコストが掛かり、小回りが利かないという問題があります。そこで出てきたのがNC旋盤であり、NC加工によるアルミハンドルです。これほど弓のメーカーにとって好都合な製法はなかったのです。そのため本来の性能やアーチャーの意向はまったく無視された形で、世の中はアルミ全盛となっています。(コンポジットハンドルについては、またの機会に話します。)
 そんなことを思うと、ハンドルがアルミである必要も、金属である必然もないはずです。ハンドルが木でなぜ悪い?! ということなのですが、最初に書いたように重さについても当たり前のことですが、強度と耐久性がクリアされるなら軽いことは大きなアドバンテージです。そしてもうひとつ発見したのですが、、、
 こんなにピボットポイント(押す位置)とプランジャーチップ(矢を発射する位置)が近い弓をはじめて見ました。これはもちろん全体の位置関係やメーカーのポリシーの問題なのですが、理想をいえば(a)はゼロが望ましいのですが、実際手の中から矢を発射することができないために、ここに差が生まれます。この木製ハンドルで「39ミリ」、X-Appealで「42ミリ」です。この3ミリは大きい寸法です。理想に近づく分だけ、ハネがハンドルのレスト部分にヒットする可能性が出てきます。うまくクリアさせればまったく問題はないのですが、昔の木製ハンドルでこれほど近かったハンドルは皆無と同時に金属のハンドルでもまずないでしょう。

 そして、もうひとつ。これも意外でしたが、ウインドウ部分(b)が金属ハンドルより広く作ってあるのです。

 おもしろいと思いませんか? 天然木は入手が困難であったり、高価であったり、ばらつきがあったりと問題はあるでしょうが、弓のハンドルがアルミである必要やそれが最良である理由はそんなに多くは見つかりません。リムのコアが発泡材か天然木かの議論同様、いろいろ試して、考えてみるのもいい時期なのかもしれません。

 では、いよいよパーツを取り付けてみます。。。

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