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弓の性能を語る時、仮にドローレングスが28インチだとして、「40ポンド」表示の弓を使うとします。この時「64インチ」「66インチ」「68インチ」の3種類の長さの弓(リム)を用意したとします。「64”-40#」「66”-40#」「68”-40#」です。これらのリムを同じ28インチドローで射てば、どれも70mは十分に飛んで的にも当たります。だからどれでも同じで、68インチが一番フルドロー時のストリングが作る角度が大きいので、指の掛けが楽で安定する、、、から「68インチ」という発想が今です。確かに性能を無視して、素人に弓を薦めるには安易で簡単で納得させ易い方法です。 |
ではなぜもっとしっかり指が掛かる「70インチ」を薦めないのか。在庫がないからかもしれません。しかし、70インチでは70mを飛ばすには目に見えて(素人にも分かるくらい)矢に勢いがなく、サイト位置が低くなりすぎるからかもしれません。それを考えれば、ストリングの角度以外に、68インチと66、あるいは64インチでは違いがあることが分かるはずです。それが性能なのです。例えばリムの短い弓の方がよく(速く遠くに)矢は飛びます。同じホールディングウエイトで矢が速く飛べば、滞空時間も短く弾道も低くなります。同じ条件で、風の影響を受け難くなるわけです。これは大きなアドバンテージであり、弓の性能から得られたメリットに他なりません。このメリットを指の角度と相殺してそちらを選んだのならそれはそうなのですが、気をつけなければならないことは弓の長さは単なる「外観」であり性能ではないということです。もしこの外観が性能に影響を及ぼすとするなら、それはドローレングス以外にはありません。ドローレングスにより弓の長さは決まるものであり、よほどの身体的、精神的アドバンテージを有しない限り指の角度でドローレングスを選択するのはインドア競技だけです。 |
そんな「性能」(リムの特徴)を決定付けるものは何かといえば、素材であり組み合わせであり、形状です。それらこそがメーカーの持つノウハウであり、技術力であり、弓への考え方なのです。 |
ところが、ここに来て近年、大きな問題が起こりました。メーカーが決して開いてはならない「パンドラの箱」を、自らの手で開いてしまったのです。最初はヤマハ追撃の切り札だったのですが、それを逆手に韓国メーカーが参入してからは、自業自得では済まない大問題です。 |
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すべてのアーチャーにその弓が持つ性能を平等に分け与えるには、性能を決定付ける条件が守られなければなりません。その最大の絶対条件は、ハンドルに対するリムの取り付け角度です。ハンドルとリムが昔のワンピースボウのように同じ位置で固定されていて、初めてその弓の性能が担保されます。(性能を担保する条件には「ストリングハイト」も含まれるのですが、こちらは動かす範囲が限られるため影響が少ないというか、逆に微調整のために使うことになります。)ところが今のハンドルはそこが可動式になっているばかりか、「ユニバーサル方式」や「ILFタイプ」の名の下、同じメーカーのリムとハンドルが必ずセットされる保証すらもなくなったのです。また、同じメーカーのハンドルとリムであったとしても、メーカーはその適正な位置(デフォルト位置)を説明していません。それに加えて、ほとんどのメーカーは「10%のポンド調整可能」とも自慢します。当然、表示ポンドやモデルによって異なりますが、表示40ポンドのリムでは「4ポンド」強さを変えられると言っているのです。非常に大雑把な言い方をすれば、ポンド調整ネジ(リムボルト)「4回転」相当と考えればいいでしょう。大体「1回転=1ポンド」です。移動幅でいえば「1回転=約1ミリ」とすれば、根元で4ミリ角度が変わることになります。 |
これに調子付いたメーカーは、「2ポンド」もの強さの幅をリムにも与えました。4ポンド調整可能なハンドルなら、どのメーカーのリムでも2ポンドくらいは楽に調整できるという訳です。これで在庫は半分になり、歩留まりは一気に向上です。 |
どのハンドルとどのリムを組み合わせても、ハンドルの可動範囲内でリムに表示されたポンドが得られれば、それでOKというわけです。クレームでも、表示間違いでもありません。ただしこうなれば、すべての状況で本来の性能を担保することはまったく不可能です。メーカーは責任とプライドを放棄したも同然です。4回転のポンド調整は、弓を引くまでもなく、ストリングを張った状態を見ただけで全体のカーブが「何か変」と見える範囲です。 |
そこで話を戻します。最初これまで「NX-X」用にセッティングしていたリム角度そのままで「HEX5H」をセットしたのです。するととんでもなく強く(ポンドが高く)、自分が使える範囲ではありませんでした。経験則でいえば44ポンド近い表示リムと同じくらいです。ここでも先の「CXB」の長さ間違い同様に、ポンド間違いかと考えたのですが、、、、 |
4回転の可動範囲と2ポンド幅のリム、そして統一されていない基準角度の中では、もう何を話しても見えてこないのですが、仮に「40ポンド」のリム(表示ではありません。40ポンド表示のリムは「2ポンド幅」がありますが、38.1~40.0の場合もあれば、40.0~41.9あるいは39.1~41.0の場合もあるのです。これはメーカーやモデルで異なります。しかしそれは公表されていません。そして基準角度も分かりません。。。)があったとして、そのポンドに性能が担保される位置があるとした時、それが締め込んだ位置(リムを起こした)か緩めた位置(リムを寝かせた)かは、メーカーやモデルによって異なります。この前提を理解したうえで。。。 |
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この「HEX5H」は「強い」(ポンドが高い)だけでなく、やけに「硬い」のです。経験則と個人的感じです。そこでひょっとしてと思って、ポンドを合わせるのもあるのですが、思いっきりネジを緩めてみたのです。最終的には「NX-X」のセッティングより「4回転」近く寝かせてみました。すると、使える範囲の強さになったこともありますが、それに加えて硬さが消えてきました。 |
想像ですが、少なくともこのリムに関していえばある程度リムを寝かせた位置が表示ポンドを表す位置であると同時に、メーカーが発揮したい性能がそこにあるのではないでしょうか。メーカーに聞いたわけではありませんが、リムが起きているとリカーブがきついためリカーブそのものが伸びる(性能を発揮する)までには至らないようです。 |
逆にこの締め込んだハンドルに再度「NX-X」リムをそのまま装備すれば、表示ポンドより4ポンド近く低くなるばかりか、リムが寝すぎて本来の性能はまったく発揮されません。初心者用の練習弓です。 (続く) |