有弓休暇(35)

 春の志摩半島「合歓の郷」に夏の白馬「木戸花荘」は、何十年も休むことなく続いているお決まりの合宿です。そんな春の合宿に今年も行ってきました。あったかい晴天と雨が交互に来る、それこそこの時期お決まりの天候でしたが、一応スケジュールは消化して、学生にとっては実りのある1週間だったでしょう。
 が、個人的には合宿の数日前から押し手の肘にとんでもなく痛みが走り、当然弓を持っての参加でしたが、まったく射つことなく帰ってきました。
弓は引けるし射てるのですが、リリースの後肘が痛くて押し手が残せないのです。押すも引くも問題ないのに、上からの力を支えられません。こんな痛みは、初めての経験です。普段も確かに押し手の肘は指で押さえると痛い箇所はあったのですが、今回はそこを中心に激痛が走ります。合宿の1週間弓もトレーニングもせずに休ませてみたのですが、全然良くなりません。
 1週間改善がみられないと、ちょっと不安にもなり帰京後さっそく整形外科に直行しました。「まだ選手やってますのぉー。」「5年ぶりでっせぇー。もドーピングの書類いややし。」とあの時のセンセ。夏の白馬での右肩腱の部分断裂からもうそんなに経つのです。それはなんとか騙し騙しで、まったく問題なく過ごし射ってきたのですが、久しぶりの怪我です。あの時は試合直前のこともあって、ステロイドを注射するので、スポーツ外来ではないセンセに書類作成やらなんやらで無理を頼んだ経緯がありました。
 「書類書くんやったら、注射しいひんでぇ。」。
 と、ともかくは診てもらったところ、診断結果は即「上腕骨外側上顆炎」(じょうわんこつがいそくじょうかえん)と決まり。若くないということなんですが、主に短橈側手根伸筋の起始部が肘外側で障害され肘の腱が傷んで起こるようです。加齢による筋や腱の衰えと、過負荷や使いすぎが原因です。確かに今回、試合がないことや合宿ではあまり射てないと思い、ウエイトトレーニングで負荷を上げて無理をしていたのは事実です。特に押し手側を引き手と同じ重さのダンベルで鍛えたのが良くなかったようです。何事もほどほどにでしょうか。
 センセ曰く、痛みは使い過ぎの警告やし、ちょっと休み。とのことでしたが、試合はないので注射お願いします。と、抗炎症剤でもあるステロイドを肘に射ってもらい、消炎鎮痛の塗り薬を貰ってとっとと退散です。次は3週間後にとのことですが、原因が分かって一安心です。
 ところで、この「上腕骨外側上顆炎」ですが、知ってる人は知ってるでしょうが、もう少し分かりやすくいうと世に言う「テニス肘」というやつです。テニスもしないのに、アーチェリーでテニス肘。正直、アーチェリーでテニス肘になるなど思ってもいなかったのですが、、、親切にこんなパンフレットを貰ってきたので、ご参考まで。
 セットアップで構える時に痛みが走り、ドローイングからフルドローは平気で、リリースの瞬間から弓が支えられず、フォロースルーが痛くて取れず、それで雑巾が絞れなければ、間違いなく立派なアーチェリー肘です。
 今回、加齢は認めます。若い頃はずっとこれ以上の練習をしていても平気でした。そして今思うと、肘の違和感はここ数年あったような気がするのと、ここまでなる前に数ヶ月前から肘先端の少し横(短橈側手根伸筋の肘の付け根)が押さえると痛みを覚えだすなど、多少の前兆はありました。ともかく、使い過ぎと過負荷が原因です。それも、曲げる引き手でなくて、伸ばした押し手でです。年齢に関係なく、スポーツなんですからストレッチや適切なトレーニングは不可欠ということでしょう。50ポンドの弓が引けるのに、テッシュの箱ひとつ腕を伸ばして支えられなくなります。ほんとハンパな痛さじゃありません。2週間以上も弓を射たないなんて、40何年でないことです。そして40何年の疲れです。
 ということで、この障害は同じ動作を繰り返し行うことで発症する「オーバーユース症候群」らしいので、とりあえずは初めての無弓休暇に突入です。休暇中は、年末にトレーニングルームに買った腹筋台と5キロのダンベルで、腹筋とリハビリに専念します。。。

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