アーチェリーの世界というのは、本当に小さいものです。選手のこと、試合のこと、役員のこと、連盟のこと、製品のこと、業界のこと、、、何もしなくても、なぜか聞こえてくるくらいに小さな世界です。
 そんな小さな世界に一昨年来、とんでもない不幸がいくつも起こってきました。本来であれば、その都度コメントするべきだったのでしょうが、それができないほどの不幸であったがために、ついつい時期を逃してしまいました。
 しかし今回起こった不幸は、それにかかわったひとりとして少なくとも事実だけは伝えておかなければとキーボードを叩きました。この経緯のなかで、それ以前に起こった不幸へのコメントも述べたつもりです。なぜか世の中、いつもそうですが事件が起こるとその加害者を人権や個人情報といった言葉で擁護したり、隠したい人がいるようですが、それ以前に必要なことは情報公開です。被害者のためだけでなく、その世界に住むすべての人のために、まずは事実が伝えられることです。そうでなければ、同じ過ちや不幸がまた繰り返されることになります。現に今回起こったいくつもの不幸は、どれも1回目のことではないのです。最初に毅然とした態度がとられていれば、2度目は防げたかもしれません。

 例えば。包丁を持ってコンビニに押し入れば、これは強盗であり「事件」です。では、同じ包丁を持ち家で料理をしていて手を切ってしまえば、これは「怪我」であり「事故」です。車を運転して歩行者天国に人を轢きに突っ込んでいけば「事件」であり、細心の注意をして運転していても、不幸にしてバイクと接触してしまったなら「事故」です。
 言葉を変えれば、前者は「故意」であり、後者は「過失」です。法律の解釈はともかくとして、「わざと」か「不注意」の違いがあります。これらはまったく異なるものです。
 今回の事件は、下記からもわかるように公の場で議論され、報告されているものです。これ以外の事実や報告もあります。しかし、ここではこれにかかわったひとりとして、概略と流れだけはお伝えしておきます。
 

平成22年2月24日 全日ア連総務第09-058号 (PDFファイル)

 
 40年間、ずっと選手です。40年間射ち続け、何100回と試合に出ています。そんな40年で同様の事件に立ち会ったのが今回で4回目です。4回の対応は背景や状況でそれぞれ異なりましたが、10年に1回の割合は多いでしょうか、少ないでしょうか? いえることは、普通のアーチャーがこのような事件に遭遇することは、多分コンビニ強盗の現場を見ることがないくらいに、ないでしょうし幸せなことです。
 逆に40年の中では、自分自身が犯した事故は皆無とは言いません。言い間違いや勘違いはありました。しかしそれらはその場で訂正される不注意です。ところが、今回の問題は明らかに事件であり、故意の結果であり、内容があまりに悪質であったのです。だからこそ、このような結論に達し、個人だけでなく組織に対しても反省と改善が求められています。
 

平成22年1月14日 12月6日当日の状況の確認 (理事会資料1)

 

平成21年12月10日 理事会召集について

 

平成21年12月16日 理事会召集についての再度のお願い

 

平成22年1月14日 理事会報告

 

平成22年1月23日 全日本アーチェリー連盟 第7回理事会 議事録 (PDFファイル)

 

平成22年3月16日 理事会報告

 
 弓を「狩猟の道具」と捕らえるなら、その原点にある絶対守らなければならない、何にも増して優先されなければならないものが「安全」です。では、それをスポーツとして「競技」として捕らえるなら、その原点にあるものはルールに則り正しく点数を報告するという「フェアプレイ精神」であり「ルールの遵守」です。アーチェリーは素晴らしいスポーツです。すべての競技者がルールを遵守するでろうことが前提に、誰もインチキをすることなど考えていないからこそ、今の性善説としてのルールがあります。今回の事件は、人に向けて射つことが道具としての原点を揺るがすように、競技としての原点を揺るがすあってはならない行為です。
 ちょうど先日、国会議員がとなりの席の投票ボタンを押すという、「魔がさした」程度のことで議員辞職しました。しかし、世間の認識は「議院内閣制根本から覆る」「民主主義を冒涜」といった論議になっています。
 今回の小さな世界の事件も、当事者だけでなくそこにいた全員が「魔がさした」程度の認識しかなかったことが問題なのです。そして今に至っても、まだその程度の認識で解決を目指そうとしている人もいます。何の説明も反省もない人もいます。

 いろいろな事件や不幸な出来事が続いています。しかし、事故と事件は明らかに違うのです。事件を事故と言っている限り、事件はなくなりません。コンビニ強盗に正しい包丁の使い方を教えても意味はありません。強盗する人間を作らないこと、強盗が起こる背景を正し、強盗に包丁を持たせない状況を作らなければならないのです。情報公開もそのひとつです。
 今回の事件の経過の中で、S県の役員の方が「われわれは当時、除名という結論を下した。しかし、それを全ア連への報告を含め毅然とした態度、対応を最後まで行わなかった事は反省している。」と語ってくれました。
利害や名誉といったちっぽけなものにしがみつく人は多くいます。しかし今回のことは、事故や事件をなくし、アーチェリーという素晴らしい競技を守り、発展させるために他山の石としてではなく、反面教師として同じシューティングラインをまたぐ者が共有しなければならない重大な問題なのです。

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