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このようなトラブルが発生することを、予想していなかったわけではありません。 |
「パワーロッド80」を世に出す過程においても、「いくらスタビライザーが高剛性であっても、根元のエクステンションロッドが弱ければ意味がないので、エクステンションロッドも同様に開発された耐久性に優れ超高剛性のものが欲しい。」とも最初に書いています。 |
そしてここには同様の素材革命であった「ケブラーストリングの逸話」も書きました。 |
そのうえで、これまでアーチェリー界が経験してきたカーボンリムやケブラーストリング、そしてカーボンアロー登場の時と同じような素材革命とそれに伴う得点の向上を目指したのです。あえて新たな性能を求め、「パワーロッド80」を作り出しました。 |
もし今回のプロジェクトがなかったら、皆さんは「ギガパスカル」も「800」も「240」もカーボン繊維に違いがあることも知らなかったはずです。ましてや、お使いのカーボン繊維の「グレード」を確認することなどなかったはずです。 |
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今回のトラブルが起こる前、このエクステンションロッドが「パワーロッド80」よりも太い外径を有し、日本製であることから一応の剛性を持つであろうと判断していました。しかしこのトラブルは取り付けネジの折損ではなく、ロッド本体の剛性以前の強度から起こった問題と考えられます。(しかし、それが個体差の問題か劣化から来たものかは判明していません。) 製造メーカーからの回答では、このロッドには300ギガパスカルグレードのカーボン繊維が使用されているとのことで、また折損部位はカーボ繊維部分自体ではなくアルミ金属部分とのことです。 |
そこでまず確認しておきますが、エクステンションロッドに限ったものではありませんが、ロッドの「剛性」と「強度」は異なるものです。確かに強度が強ければ剛性も高いということではありますが、ここでいう強度とは折れる折れないといった、そのものが使用に耐えるかということです。折れなければ良い、と言われればそれまでですが、例えば弓のハンドルにしても女子や初心者が使う低ポンドのリムなら問題ないが、45ポンドを越えるリムならハンドルが折れるという問題は以前から発生しています。これをクレームとするかの問題はあるのですが、少なくとも低ポンドでの使用においては、まったく問題のないハンドルなのでしょう。まずは折れない、使用に耐えることが大前提であり、そこから次に性能なり性質が問題になるということです。 |
では折れないという大前提のもとで、それが硬いか柔らかいかは非常に重要な問題です。エクステンションロッドでいうなら、折れなかったとしても柔らかいロッドを根元に使用すると、先端の「パワーロッド80」本来の高剛性や高弾性、振動減衰特性などは発揮できない状況に置かれてしまいます。逆に、これまでのセンタースタビライザーをお使いの方が根元に「パワーロッド80」をお使いになれば、いかに今までのセンターロッドが柔らかかったかが実感できるはずです。あるいは、根元の硬さの重要性を再確認されるはずです。 |
例えばエクステンションロッドに、昔はアルミニュームが使われていました。アルミでもカーボンでも、多少の重量の違いはあってもどちらも強度に問題はありませんでした。しかし同じ太さ(肉厚も関係しますが)のロッドであれば、カーボンの方がはるかに剛性は高くなります。振動減衰率も高いでしょう。 |
では、カーボンならすべて同じか、というのが今回の「800ギガパスカル」の出発点だったわけです。すでに使用する繊維のグレードだけの問題ではなく、カーボン繊維を使用する場合は、その繊維のグレード、量や方向、製造工程、品質管理、それに加えてロッドの場合は肉厚や外径が重要な要素であることはご存知のはずです。 |