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今回のテストは、すべて個人的な「感じ」でやっています。ポンド秤もデジタルスケールも使っていません。(すいません。持っていません。)経験則と自分の身体が秤代わりです。 |
それがいいか悪いかは後回しにして、確かに秤1個があれば2つの異なるモデルの「強さ」としてのフルドローにおける「アクチャルウエイト」(実質ポンド)を完璧に合わすことはできます。しかしそれが新しい弓の最高の性能あるいはメーカーが意図する性能を発揮するリム位置(角度)とは限りません。また、あなたのドローレングスに対するベストポジションとも限りません。単に狙っている時のベストウエイト(強さ)であるというだけのことです。 |
強さは「性能」ではありません。「長さ」同様、単なるサイズであり仕様です。性能とは、その弓が持つ特徴としての「硬さ」「きつさ」「なめらかさ」「スムーズさ」などの感覚です。これは発射までの感じで、発射後の感じはまた別にあります。「鋭さ」「速さ」「安定感」「バタツキ」「音」などの感覚でしょうか。 |
しかしこれらの感覚(評価)は、たくさんの授業料を払ったり、長くやっていたから分かるというものではありません。申し訳ないのですが、これらの経験則を身に付けるには努力だけではない、持って生まれた「才能」が必要になります。名選手=名テストシューターにあらず、です。 |
では、才能の有無は置いておいて、授業料を払ったアーチャーが「強さ」から受ける、あるいは評価するであろう性能は何でしょう。最も一般的なものが「矢速」です。なぜなら才能がなくとも分かった気にさせてくれる、客観的評価らしき「サイト位置」が目の前に見えるからです。 |
しかし注意しなければなりません。多くのアーチャーは、「サイト位置が上がる」ことで「矢速がアップ」したと思い、「性能が良い」と個人的に感じます。ところがサイト位置の上下などは、同じリムでも日々起こることであり、リムを変えたならノッキングポイントやティラーハイトが0.5ミリ動けば的面で数センチは矢を動かしてくれるからです。もしサイト位置で矢速を評価するなら、位置ではなく間隔です。30mで3ミリサイトが上がったといっても、50も70も90mも3ミリ上がっていたのでは同じことです。大事なことは30mと90mのサイト位置間隔がどれだけ狭まったか、広がったかです。1距離でのサイト移動など意味がありません。 |
そしてもうひとつ。目の前に見える結果としての的面での「的中」があります。確かにこれこそが求める性能の最終最大目標です。強かろうが弱かろうが、弓は当たればいいのです。そのための性能です。しかしこの段階で評価してはいけません。 |
サイト位置同様に、リムを代えたのですから飛んでいく場所が変わって当然です。今回のように、ストリングハイトもノッキングポイントもセンターショットも同じでいける方が稀の稀です。普通はノッキングポイント、ティラーハイト、ストリングハイト、プランジャーの位置と硬さ、そして矢のスパイン、射ち方等など、すべてを調整して、射ち込んでから判断を下すべきです。確かに経験則から分かる感覚はあります。しかし素人はもう少し慎重になるべきです。特に10点に入ることより、無数の矢の作り出すグルーピングの大きさの変化です。10点に行くか行かないかはサイトを動かせばいいことであり、大事なことはグルーピングが小さくなるかどうかです。 |
そこで今回の「HEX5H」ですが、最終的にサイト位置はすべて上がり、30mと70mの間隔は4ミリほど縮まりました。凄く速い感じはありませんが、安定した飛びで悪くない感じです。 |
ただ最初から、そして今も少し気に入らないことがあります。性能というよりこのリムの特徴であり、すべての最近のリムに共通するとは思いませんが、今風の「硬さ」が個人的に馴染めません。 |
セットアップからドローイングをはじめる時の「硬さ」というか、「きつさ」。それとフルドローでクリッカーを鳴らす所での「硬さ」というか、「柔らかさ」です。経験則が少なく、最初にこの弓を与えられれば何ら気にならない範囲で、普通の感じなのでしょうが、、、 |
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「奥が硬い」という表現をよく耳にします。どちらかといえば悪い評価の言葉です。では、奥が硬いとはどんな感じのことでしょうか。リムには引っ張り長さに対する強さを表す「f-x曲線」があります。これこそがそのリムの性能のひとつでもあります。そしてそこには「スタッキングポイント」なる位置が存在します。曲線はこのスタッキングポイントを過ぎると一気に立ち上がります。そのため一般にはこのポイントを過ぎると急に弓が強くなるため、それを「硬く」と表現するわけです。しかし実際にはポイント手前の「なめらかさ」によっても硬さの感じ方が異なってきます。(手前で曲線が寝ていれば、それだけ立ち上がりが「極端」に感じられます)ともかくは、スタッキングポイント付近からそれを過ぎた所を評しての言葉です。 |
では「奥」とはどこか。自分のフルドロー位置、そこから少しオーバードロー気味に引いてみての評価でしょう。ところが先に弓の長さはドローレングスから選択すると言いましたが、長い弓ほどスタッキングポイントは後ろに来ます。となれば、長目の弓を使えば自分の射つ範囲ではスタッキングポイントは存在しません。オーバードローで引いても、スタッキングポイントの手前です。だから「奥が柔らかく」て「薬指もしっかり掛かって」いい弓でしょう。というセールストークです。この柔らかさを性能と考えれば、それはそうなのでしょうがスタッキングポイントの手前は曲線が寝ているため、結果的には弓の持つエネルギーが支えている強さに対して小さいものになってしまいます。効率が悪く、矢速も落ちます。だからこそスタッキングポイント付近を自分のフルドロー位置にするために、ドローレングスに対して推奨されるボウレングスがあるのです。身長より高い弓は効率が悪く、性能が発揮できないというのはそのためです。 |
それとこれはあくまで個人的な感じと経験則ですが、スタッキングポイントを過ぎたところでのフルドローは良くないかというと、決してそうとは思いません。スタッキングポイントを過ぎて、曲線が立ち上がった付近でクリッカーが鳴る方が、ストリングの出が鋭く射ちやすく、リリースもしやすいのです。それだけでなく、エイミングとクリッカーを鳴らす過程においても、スタッキングポイント手前のふわふわした感じより緊張感があり大いに好きです。結果的に、曲線が取り込むエネルギー量は最大になり、もっとも効率よく性能を発揮します。 |
という訳で、このリムの「奥の柔らかさ」(スタッキングポイントの深さとそこに至る曲線のなだらかさ)はあまり好きでないのですが、もうひとつ好きでないのが最初の曲線の立ち上がり感です。 |
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そんなことを思っていたら、このf-x曲線の図を見つけました。「HEX4」の宣伝ですが、もしこれを信用するなら、個人的な感じと一致します。 |
最近の弓らしく(射ちやすく)奥(スタッキングポイント)を深く、同時に矢速を上げるために、最初の曲線の立ち上げをきつくしています。他社の同じアクチャルウエイトのリムに比べればf-x曲線内の面積からも分かるように、より大きなエネルギーを有しながら、なおかつ奥がスムーズということです。これがこのリムの特徴であり、性能なのでしょう。 |
しかし昔からのアーチャーの個人的な感じでは、セットアップからの引き出しが「きつく」、奥が「たよりない」のも事実です。表示ポンド以上に実質ポンドは大事ですが、フルドローの強さだけでなくドローイング全体の強さや硬さが自分に合っていなければ、1日射つにはきついものがあります。 |
弓には秤やデータだけでは計りきれない、表せない、もっと大事な個人的な「感じ」があるものです。それと値段に関係なく、どうしようもなく硬い弓もこの世の中にはあります。 (続く) |