カーボンシャフトの作り方と日本のメーカーの意味(上)

 そろそろアウトドアシーズンなので、自分の矢を作ろうと突然思い立ちました。ところが、VAP「600」の「V1グレード」の手持ちがありません。あさってから学生との合宿で、帰ってきたらすぐに70mの試合です。ノックはもちろん、矢も消耗品と理解していますが、先々週までインドア用のアルミ矢を使っていて、今使っているカーボン矢はすでに1シーズン近く使いあまりにもぼろぼろです。突然焦りだしました。。。
 そこで仕方なく、「V6グレード」の矢を自分用に作ることにしました。ポイントも今シーズン少し重くしたかったので、テストを兼ねて突然作り出しました。突然作り出すと、突然思い立って、「CP204」はコンパウンド用のシャフトということにはなっていますが、これも試しに作って射ってみようかと・・・突然。
 作り方はここにあるとおりですが、今回はこんな接着剤を使ってポイントとCP204のノックピンを固定してみました。ほんと瞬間接着剤を使うと、あっという間に矢が完成します。とはいっても、ハネまで貼ると1日仕事ですが。
 シャフトをカットしてポイントを付けたところで、突然重さを計ってみようと思い立ちました。
 VAP「120グレインポイント」、CP204「100グレインポイント」、昔のX7-2014「9%ヘビーポイント」を付けたハネなしの重さです。長さは全部自分用。写真は「グラム」ですが、「グレイン」に直すと、「276.9」「294.9」「381.3」グレインです。カーボン同士は「18グレイン」の差ですが、アルミ矢は「86.4グレイン=5.6グラム」重いのですよ。よくこんな矢で当てていたもんです。カーボンがあたるのは当たり前の数値ですよね。すごい。
 それはさておき。ここまでは前フリのオマケです。ここからが本題です。
 実は先日、「CP204」をテストしていただいたコンパウンドのトップアーチャーの一人から、こんなメイルをいただきました。
 
お世話になります。

最初のテスト品について、報告しておきます。
結論としては、耐久性だけが気になります。

添付した写真の通り、ポイント側のカーボン繊維が結構ざらざらと削れてきた感じです。(見た目にも、触感的にも感じます)
コーティングの剥がれは、使用開始直後に感じました。1カ月ちょっとの使用で、私の少ない練習量でこれですから、1年間を通じての使用が出来るかどうか、不安です。
低価格と言う利点がきえてしまわない程度の耐久性が欲しい所です。

今まで使っていた X10も、だんだん細くはなってくるのですが、2ダース作ったら短くても2−3年は使っていましたので、同じ程度は長持ちして欲しいです。

この、最初のテスト品については、本数も減りましたし、この後は使わない矢になりますので、必要なら、確認のため返送します。
 
 この後にもやり取りはあるのですが、、、ここで言われている「耐久性」のこととは、↓CP204に限らず、VAPやV-Forceにも見られる、シャフト表面の「しま模様」のことでした。たしかにこのような模様は「ACE」や「X10」ではあまり見かけません。
 そこでここからが大事な話です。
 「Victory」は日本のメーカーです。「Aldila社」は日本の「三菱レイヨン」傘下の会社です。ここをよく読んでください。2002年の「ヤマハ」撤退以降、「Nプロダクツ」もなくなり、弓と矢のメーカーは日本にはありませんでした。だからなに? と言われるかもしれませんが、いつも言うようにオリンピックでも世界選手権でもメーカーは、自国の選手より先に他国の選手に最新や最上の道具を提供することはないのです。そして悲しいかな、自国のメーカーを持たない国は、他国の製品を調べるすべを持ちません。
 そこで今回、写真だけでは分からないので、ご指摘のシャフトを豊橋にある「開発部」で検査することにしました。
 
いつもお世話になります。
矢の送付に関しまして、ご協力ありがとうございました。
到着した矢を確認しましたので、コメントさせて頂きます。

まず、「CP204」のコーティングですが、先端部分は完全に剥がれています。
見た目でも確認出来ますし、外径を測定すると、中央部が6.646mmであるのに対し、先端部が6.635mmであることから、コーティングが剥がれていることが確認されました。
ただし、同時に送付されたEASTON X10も先端部分のコーティングは剥がれています。(EASTON X10は、先細構造のようなので外径測定だけでは分かりませんでしたが)断面を見れば、もう少し詳細に分析は出来ますが、見た目でもコーティングが剥がれているのは確認出来ます。

では、何が違うのかと申しますと、まずは見た目です。
CP204の基材(CFRP)は、見た目が少しグレーに見えるのですが、EASTON X10の基材は、黒味が強いためコーティングが剥がれても色目での判断がし難いものになっています。よって、EASTON X10も同レベルでコーティングが剥がれていた可能性があるのですが、見た目での判別が難しく、コーティング剥がれが分かり難かったのではないかと推測されます。

次に、表面平滑性です。
おそらく、CP204とEASTON X10で最も違う点だと思われます。
CP204は、見た目ですぐ分かりますが、らせん状の模様がシャフト全体にあります。これは、プリプレグ(シート状の材料)をマンドレルに巻き付けた後、空気を抜くためにシャフト全体に巻き付けたテープの跡です。シャフトは、この後の工程で外径を調整するために表面を研磨しますが、CP204では研磨量を少なくしているため、らせん模様が完全に消えていません。また、このらせんは、ミクロの単位で炭素繊維が蛇行し凹凸を形成しているために見える現象ですが、表面を研磨したときに、凹凸を埋めるような形で樹脂が存在しているため、通常は研磨後には触っても凹凸は分かりません。しかし、今回送付された矢の先端部分は、使用中にこの樹脂
も摩耗したため凹凸が触って分かるものになったと思われます。
これに対し、EASTON X10も同様の工程で作製されていると思いますが、研磨量が多いためこのらせん部分が研磨で除かれており、表面の凹凸が分からないようになっていると思われます。

結論としまして、CP204とEASTON X10の耐久性については、さほど大きな差は無いと思われます。

以上、長くなりましたが、不明な点がございましたらご連絡下さい。

よろしくお願い致します。
 
 結論的には、CP204もX10も磨耗に対する耐久性に大差はないということです。
 ところで、皆さんがありがたがって使っている、すっごく高価なシャフトの作り方を知っていますか? あるいは、ここにあるようにしま模様がない理由や新品のシャフトで手が黒くなる理由を知っていますか?
 せっかくなので、他国のいいことしか書かない広告には載っていないことを、日本のメーカーだから少し書いてみましょうか。。。 (続きます)

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