抜けないポイントのための接着剤

 到着しました、Amazonから。税込み「¥889」。近くのホームセンターにはなかったので、ポチッと買いました。
 それにしても世の中、いろんなものやいいものができてくるもんです。東京の工藤さんから教えてもらいました。
 
 その前に、古い畳はいいんですが、試合などで新しい畳だとポイントが取られること(あるいは少し抜けること)はありませんか?
 矢の作り方や状況にもよるのですが、比較的よく抜けてしまうのが「オールカーボンシャフト」の場合です。多分多くの方は「アルミコア」のカーボンシャフトを使っているかもしれませんが、その違いは接着面です。アルミコアの場合、シャフト(アルミ)とポイント(ステンレス)を付ける面が金属同士なのに対して、オールカーボンでは樹脂(シャフト)と金属(ポイント)が接着されなければなりません。まったく異なるもの同士の接着です。
 とは言え今の世の中、接着するものを特定するならほとんど完璧に接着することもできるため、「それ用」の接着剤を選べばいいのです。が、説明書には「接着面をきれいに」とか「接着面を脱脂して」などと書かれています。例えばハネを貼る場合は「フレッチタイト」とアーチェリーの世界では呼ぶ、それ用の接着剤を使うのが一般的です。昔で言うセメダインの類でプラモデルなどの接着剤に似ています。これなどは接着面を「アルコール」(シンナーなどの有機溶剤は決して使ってはいけません。)でよく脱脂すれば、接着力は格段に向上します。脱脂面はシャフト側だけでなく、ソフトベイン側の接着面も行います。
 ちょっと昔話ですが、カーボンシャフトの前のアルミシャフトの時代も、同様の接着剤とハネ(ソフトベイン)を貼り合わせていました。しかしこの時はアルマイト加工のシャフトが出てきたため、脱脂をしても表面に光沢がありすぎて接着力が落ちることがありました。表面がツルツルすぎると接着剤が食いつきにくくなります。そのため、シャフト(アルミ)表面を細かいサンドペーパーなどで荒らして(傷をつけて)接着することが一般的でした。
 今のカーボンシャフトはほとんどが最終工程で表面を研磨しているので、荒す必要はほとんどありませんが(VICTORYの「ICE加工」などは、研磨の後で表面にナノセラミック加工で被膜を作っているので荒らす必要があります。)、EASTONのACEなどは逆に手が真っ黒になることからも分かるように、研磨後の粉が残った状態です。そのため表面は荒れていますが、脱脂と併せて表面のゴミ(樹脂の粉)をアルコールでキレイに取り除く必要があります。
 では、ポイントの接着です。ポイントの場合は「ホットメルト」と呼ぶ「マツヤニ系」の接着剤で固定するのが一般的です。フレッチタイトは接着剤の中に入っている溶剤が飛ぶ(気化する)ことで固まりますが、このマツヤニ系の接着剤は加熱して溶かした状態で接着します。冷えれば固まるわけです。もちろん接着面をキレイにしたり、荒らす方が接着力は増すのですが、フレッチタイトほどに気を使わなくても結構引っ付きます。
 ところがです。アルミコアシャフト(あるいはアルミシャフト)のように、金属同士の場合はまだいいのですが、カーボン樹脂面との接着では事情が違ってきます。異なる素材同士の接着だからというだけではありません。
 それはオールカーボンシャフトの作り方に由来します。オールカーボンシャフトのほとんどが、「シートワインディング」あるいは「シートローリング」と呼ばれる製法で作られます。これは「ちくわ」を作るのと同じような作り方です。マンドレルと呼ぶ鉄の棒(ちくわなら竹)に柔らかいカーボン樹脂(プリプレグと呼ぶ半硬化状態の樹脂)を巻きつけた後、温度を上げて硬化させます。固まってから、ちくわ同様に棒(芯)を抜くのです。
 アルミコアのシャフトはこのマンドレルの代わりに、最初からアルミのチューブ(芯)に巻き付けてチューブを抜かないで製品にしたものです。
 ということで、固まったカーボンシャフトから後で芯を抜くために、プリプレグを巻き付ける前の芯には「離形材」と呼ばれるものが塗ってあります。玉子焼きやたこ焼きが鉄板に引っ付かないように油を塗るのと同じです。焦げ付かず、フライパンからお皿に滑り落ちるためです。この離形材(油)は簡単にいえば「シリコン」です。特に細いシャフトほどうまく芯を抜くために、多くのシリコンを軸に塗布します。
 そのため、できあがったカーボンシャフトの内側には「シリコン」が残っているのが普通です。それ自体は何ら害にはならず、手間も掛かるのでメーカーもわざわざ洗浄することはありません。そのため、この残ったシリコンの幕がホットメルトの食い付きを阻害します。
 そこで、親切で良心的で常識的なプロショップでは、アルミシャフトあるいはアルミコアカーボンシャフトであってもポイントとの接着面にあたるシャフト内部をキレイに洗浄(あるいは軽く研磨)を行います。家庭用洗剤で洗うのも方法です。しかし細いシャフト内部です。洗うのも落とすのも簡単ではありません。
 その洗浄(研磨)方法はともかくとして、ここからが「接着剤」の話です。
 
 先にも書きましたが、「ハネにはフレッチタイト」「ポイントにはホットメルト」と条件反射的に思い込んでいますが、例えばソフトベインをテープで貼る方法もあります。同じようにアルミシャフトなら「ゴム系接着剤」でのポイントの取り付けもお勧めします。
 そして日本人がポイントはホットメルトと勝手に思い込んでいるだけで、アメリカ人は結構日本で言う「瞬間接着剤」でポイントを固定します。ただし一旦固定すると取り外しができませんが、抜けないために強力なこの接着剤を使うわけです。ハンティングに使うブロードヘッドは抜けては困るのです。
 そのため、これは自分の矢の長さが決まり、ポイントの重さが決まっていて、もうポイントを交換(テストやチューニング)することがない状態の時のことです。ここに書いたように、もしそうであるなら「粘度のある瞬間接着剤」の使用をぜひお勧めします。絶対抜けません。安心して試合にも使えます。ただし、交換(抜くこと)はできません。
 個人的には抜けない安心感が第一なのですが、それに加えて瞬間に作れるので矢作りに時間を取られない便利さがありました。しかし唯一不満があります。それは瞬時に押し込んで、瞬時に固まることから、ポイントを回転させて調整する時間がないことです。これはホットメルトを使うようになったカーボンアローの時代からなので、20年以上良心的なプロショップでもすることがなくなった技です。別にしなければ、それだけのことではあるのですが。。。
 今回紹介するセメダイン社の「メタルロック」。
 これはすごいです。説明を見る限り、カーボンアローのポイント接着のためにあるような接着剤だと思いませんか。
 そしてめずらしいことに、エポキシ系接着剤のような「2液混合タイプ」なのです。それもエポキシのように粘り気があるのでなく、適度にトロ〜ンとしているのです。そのため、接着面全体に自然に行きわたってくれます。
 そして何がいいといって、ポイントを奥まで挿入してもすぐには固まらず、それでいて5分くらいで動かせなくなります。その間に手の上でシャフトを回して、ぶれる場合は微調整(差込位置の調整)ができます。ポイントの精度が高く先端が完璧にセンターに来ていれば意味がないのですが、それでも接着剤を付けずに試すと分かりますが、ポイントの位置によって振れが少し収まる時もあります。アルミ矢のポイントを、ゴム系接着剤で固定するのと同じメリットです。
 気休めも含め、そんなことも知っていて損はありません。はみ出した接着剤は簡単に拭き取れます。
 となれば、矢に限らず例えばスタビライザーのブッシング抜けやハンドルのブッシングの固定にも最適ということです。それに色も最初から黒です。エポキシの場合は接着する場所によっては、黒くするのにタングステンパウダーを混ぜたりしていました。それは接着強度を上げる意味もありますが。
 ともかくこれまで金属やカーボンの接着には「エポキシ系接着剤」と思い込んでいたのが、これからは「アクリル樹脂系接着剤」の時代なのかもしれません。
 「一家必携」、一家にひとつ接着剤に追加しなければなりません。これは凄い接着剤です。お試しください。

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